大野八生・著 あすなろ書房 ¥1,400(税別)/OMAR BOOKS
「盆栽っていうのはね、自然の風景をこの小さな鉢の中で表現したものだよ。」ある日、孫の女の子に「盆栽ってなあに?」と聞かれ、おじいちゃんはそう答える。
今回ご紹介する本は、造園家、そしてイラストレーターとしても活躍されている大野八生さんが、盆栽の世界について分かりやすく教えてくれる絵本です。
主人公は女の子とおじいちゃんと、「盆栽」。おじいちゃんは盆栽を初めて作る孫に「好きな風景や思い出の場所をイメージして作るようにするといいよ」とアドバイスする。これは例えば、絵を描くことが苦手でも植物を材料にして絵を描くようなものだとすれば、イメージすることで自分の好きな景色を鉢の中に描くことができるということ。そう思うと「盆栽」がぐっと身近に思えてくるから不思議。
盆栽の種類から、樹形(それぞれの樹の形のこと)など、盆栽の世界で使われる言葉の説明や、花もの、実もの、草もの盆栽の紹介が色とりどりのイラストで。花期や実生期の記載に、土作り、肥料作り、などポイントもきちんと押さえてあり、盆栽の世界を少しのぞいてみたい、といった初心者にも手に取ってほしい。
読んでいると、和のものを洋のものに組み合わせたり、器や道具もアイディア次第で何でも使えそう。意外と自由なんだな、というのが素朴な印象。自然のものを自分のイメージで好きなように配置していく作業はなかなか楽しそう。自然の素材を活かすという意味で同じようなものに庭作りや、アクアリウム(水槽)もある。どの世界も時間をかけて知れば知るほど奥深く、実際に作る側と見る側、両方楽しめるのも魅力。
盆栽は自然の植物を、さらに小さな器という枠の限定された中に作りこむ世界。いろいろな形の器の中で、季節の植物を用いて自由に景色を描いてみる。これもまた自然との関わり方の一つ。まずはこの絵本と一緒に、何かお気に入りの植物を育てることから始めてみては。
大人にも子どもたちにもおすすめしたい、自然にふれる魅力を楽しく伝える絵本。同著者の『夏のクリスマスローズ』、『にわのともだち』も合わせてどうぞ。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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