『 虎屋ブランド物語 』500年もの歴史を持つ和菓子のブランド「虎屋」。その強さの秘密とは。


川島蓉子・著 東洋経済新報社 ¥1,600(税別)/OMAR BOOKS 

 

何かに煮詰まったとき、まったくジャンルの違う世界を伝えてくれる本に関心が向く。あるいは刺激がほしいときやしたいことがあっても躊躇しているとき。意欲をかきたててくれるようなものを自然と探してしまう。
ちょうどそんなとき、漱石(夏目)が羊羹好きだった、というので和菓子の本をいろいろ読んでいる内、この『虎屋ブランド物語』も手に取ることになった。

 

500年近い歴史を持つ『虎屋』という和菓子の老舗の強さについて書かれたこの本。甘い物好きなら知らないものはいないぐらい、『虎屋』の認知度は高い。名前からして強さが感じられる。そのブランド力とでもいおうか。
その秘密を知りたいと思い読み出したら、和菓子の世界の奥深さと、既存の枠に収まらない試みを常にしているところに驚かされる。

 

その歴史の古さからから受け継ぐゆらぎない地位。でもそれを今の時代にまで変わらず保ち続けるには並大抵のことではないことが、この本を読むとよく分かる。その根底には、「和菓子の深さと奥行き」と「和菓子を取り巻く文化」を広く遠くまで伝えたい、という様々な人の熱意に支えられている。

 

この「虎屋」を支える人々に綿密に取材を行いながら、そのブランドの核となっているブランディング力について著者は様々な角度から解き明かす。
出来た当初とても話題になった「トラヤカフェ」の立ち上げや、海外出店の裏側から、虎屋の元々持つ伝統とそれを現代に生かそうとする企画(虎屋文庫というとても魅力的なアーカイブも)など、時代に沿って丁寧にまとめられていて読みやすい。

 

この本の中で度々出てくる表現が、「不器用さ」。ひとつの店舗を作るとなったときに、その意味を突き詰めていく、という時間がかかることをビジネスというスピードも求められる中でも虎屋は決しておざなりにしない。
常に原点に戻り、その都度自分たちが何をやりたいのかを確認することでその強さが生まれていった、ということがよく分かる。

 

お菓子好き以外にも、サービス業について関心のある人やデザインの仕事に関わる人、あるいは「いい仕事がしたい」と思っている人にはぜひおすすめしたい一冊。

OMAR BOOKS 川端明美




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