『 バージェス家の出来事 』遠い、と感じる人々の話だからこそ。翻訳小説の楽しみ。


エリザベス・ストラウト著 早川書房 ¥2,500(税別)/OMAR BOOKS 

 

「ここ」から遠い場所の物語に触れたくて読み始めたのが、読み重ねていくうちに違和感よりも共感の方を多く抱いていることに気付いた。それが“翻訳小説”を読む楽しみの一つだ。違う国の、話す言葉の違う人々の、生活や夢や恋や家族などについて語られた小説はは決して理解することが出来ないものではない。むしろ私にとっては共感出来ることの方が多くて、それによって励まされることも。遠い、と感じる人々の話だからこそ、逆に彼らもまた同じ、起きて、ごはんを食べて、働いて、悩んで、笑って、泣いて、眠る、ようにして暮らす人なんだと思うとどこか安心し、勇気づけられる。

 

今回ご紹介するのは、以前紹介したことのある『オリーヴ・キタリッジの生活』でピューリッツァー賞を受賞した著者の、現在翻訳で読むことの出来る最新長編小説『バージェス家の出来事』。ニューヨークに暮らす、ジムとボブ。ボブの双子で故郷のメイン州に暮らすスーザン。ある事件をきっかけに離れて暮らす兄妹の生活に波紋が広がっていくという、家族の物語。

 

著者は登場人物たちのそれぞれの立場から、繊細に心の機微を描き出す。
もし兄妹がいる読者であれば、こういう場面あるよなあと頷くこともあるだろうし、もし兄妹がいなければ、いたらこういう感じなんだろうなと想像しながら読むことになるだろう。

 

読んでいて意外だったのは、なんとなく可笑しくて笑えることがあるところ。深刻な話をしている姿を滑稽に感じてしまう。兄妹は成長して皆いい大人なのに、子どもの頃と変わらず互いを比べてはくよくよ悩み、あるいはフォローし合って、家族の関係をどうにか維持しようとする。傍目にはうまくいっているように見えて、その実何がどうなっているかは外部の人にはよく分からないもの。誰もが皆、小さなものから大きなものまで様々な問題を抱えてもいる。言葉にしなくても共有出来るものがあるというのは家族の持つ強さでもある。

 

文化も歴史も違う、遠い場所に住む人々の話であっても、つくづく人って面白いなあと思わせてくれる小説だった。なかなか翻訳小説を手にしたことがない人にも読んでもらいたい一冊。おすすめです。

OMAR BOOKS 川端明美




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