『 GREENHOUSE STUDIES 』イメージが膨らむ温室のラフスケッチ

green house
PHILIPPE WEISBECKER Nieves刊 ¥2,100 (ペーパーバック)
 
外でお茶をする時に、テーブルに置かれた紙ナプキンにさらさらっと絵を描いている人を見かけることがある。あたかも鼻歌を歌っているかのように自然に。
絵心のない身としてはそういうものを見ると一種の憧れのような気持ちを抱く。
だからラフスケッチのような作品を見ることで自分で書いたような気になって満足することがある。
 
今回ご紹介するのもそんな一冊。
フランス人アーティスト(イラストレーター)によるドローイング集。
GREENHOUSE(温室)ばかりを鉛筆の柔らかなタッチで描いた作品をまとめたもの。
 
一見無造作に描いたように見える、面白いフォルムの温室がそのモデルとなった古びた写真と一緒に並んでいる。
温室だから建物は採光のために総ガラス張り。でもその建築様式は様々。
それが線描によって無駄なものはそぎ落とされて、描かれた作品は温室でありながら宮殿のようであり、UFOのようだったり、サーカスのテントを連想させる。
あるいは華奢な鳥かごや羽を広げた孔雀のようでもあり、見ているうちにイメージがどんどん膨らんで楽しくなってくる。
 
green house
 
green house
 
また一つの温室を様々な角度から描いていたり、その構造を俯瞰や断面図で見せてくれる。その造形美もまた魅力のひとつ。
  
でもやはりページを捲っていて感じるのはワイズベッカーの、モチーフに対する描かずにいられない衝動。それがそこかしこに見え隠れする。きっと子供のように夢中で描いたんだろう。
 
温室の写真はモノクロで、線描画には色はついていないから、それがまた実際の温室の室内には光がどう降りそそいでいるのだろうと想像を掻き立ててくれる。
  
それにしても、温室といっても、球体、半ドーム型、立方体と様々な形のものがあるんだなあ。その建物自体がアート作品。
 
淡いうぐいす色の表紙も目に優しい素敵なアートブックです。

OMAR BOOKS 川端明美




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