『旅はゲストルーム 測って描いたホテルの部屋たち』写真じゃなく手描きなのがいい。平面図だけでなくホテルのサービス、文化、歴史まで網羅、旅のお供にもお役立ちの一冊。

旅はゲストルーム
浦一也・著 光文社(知恵の森文庫)¥857 (税抜)/OMAR BOOKS
 
―メジャー片手にホテル探検―
  
 「まるでスパイ。」この本の前書きで著者の浦さんは言っている。
今回ご紹介するのは、設計者である著者が世界のホテルを訪れた際、宿泊した部屋を実測して平面図におこしたスケッチをまとめた本。
 
何でもこの浦さん、ホテルにチェックインするとまずその部屋の細部を測ることから始めるらしい。きっとはたから見ると怪しい行動。
それが終わると部屋に備え付けのレターペーパーに水彩絵の具でスケッチを仕上げる。
その間約一時間から二時間。
 
仕事柄旅が多く、世界中のホテルを訪れるたび記録するようになったという。
趣味が高じてこういう本になったのだから面白い(また建築家、インテリアデザイナーとしてスケール感を磨くためという目的もあるそう)。
 
とにかく見ていて楽しい本だ。
写真じゃないところがポイント。著者が自身の目と頭と手を使って描かれたスケッチだからこそ、普通のガイドブックでは伝わらない良さがある。
 
窓の高さからベッドの幅、ランプの数、バスルームの広さ、アメニティの種類などなど絵のディテールの細かいこと。
ドライヤーがどこに置かれているかとか、ドアの開閉のしくみとか、タイルの模様などが詳細に記されている。
普段設計図を見慣れていない人こそ、この本を楽しめるんじゃないかと思う。
現に私もその一人。ページを何度捲っても見飽きることがない。いつのまにかその部屋にいるような錯覚を覚えた。
 
読んでもまた楽しい。
ホテルの庭の様子や周辺の通りの様子を綴ったコラムや著者自身のエピソードも旅先の雰囲気が味わえる。 
 
この一冊でホテルのサービスへの姿勢、そこから窺える文化や歴史が一通り分かるなど読む側にも実益が多い(ホテルの住所や立地の説明付き。どちらかというとコンパクトな文庫をおすすめします)。
 
「見知らぬ町で安心できる時間と空間を買い取ること。」
がホテルの一面だと著者は言っている。
そのホテルのエッセンスが一冊にぎゅっと詰まったこの本。
 
今このときも著者はどこかで、メジャー片手に部屋の隅から隅まで覗きこんでいるかもしれない。
読むあなたをホテル探検へいざなう魅力的な一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp