『 本格小説 上・下 』ソファに身をうずめて読みたい、壮大な長編恋愛小説。


水村美苗・著 \820(上)、740(下) 新潮社/OMAR BOOKS

 

一月もすでに半ば。普段の日常を取り戻しつつある今日この頃。
最近ふと頭をよぎるのは、お店でのあるひとコマ。
年明けすぐに、新年の挨拶代わりに妹家族がお店へやってきた。
甥っ子の手には漫画『ワンピース』。
来ると同時にソファに身をうずめ、持参した「ワンピース」を帰るまで読みふけっていた。
恐るべき集中力。子どもの頃の自分を見ているような既視感を覚えた。

 

 

どっぷり物語の中に浸かる喜び。
それも全身でダイブするかのように。
それは子どもの特権だと思う。長編を読みながら、うたた寝までできたら、もう最高だ。
案の定、甥っ子はソファで眠り込んでいて、周りに言われてしぶしぶ起き上がった。
その幸せそうなこと。
大人になるとはこういう幸せな時間を持つことが難しくなる。

 

本を読んでいても、頭の片隅では「年賀状に返事ださないと」「洗剤買い忘れた」とか様々な声が行き交っている。
これじゃあ物語の世界に入っていくことはなかなか出来ない。
私もその一人。
でもどうにかその扉の入り口にでも足をかけるのに成功すれば、そこには子どもの頃と変わらず魅惑の世界が広がっている。

 

今回紹介する本もまた一度(ひとたび)その中に入ってしまえば、自分の現実とはかけ離れた自由な時間や場所に身を置くことが出来る。
上・下巻から成るこの『本格小説』水村美苗・著はまず分厚い。
わくわくしながらウィリアム・モリスのテキスタイルを用いた表紙をめくるとすぐに出てくるのは家系図。
これから壮大な「お話」が始まることを予感させる。

 

ストーリーは、米国での少女時代に出逢った伝説の男の過去を中心に、彼の恋愛をめぐる一族のまるで小説のような人生の物語。
始まりは軽井沢を舞台に、やがて国境を超えて編まれていく恋愛長編小説。
もし時間が許すならば、あるいは無理にでも本を読むことしかできない環境を作っても一気に読むといいかもしれない。
子どもの頃のように寝食忘れて読む幸せを味わえるはず。
家族の許可を得た方がいいかもしれないけれど。

 

ほどよく自分の身体に馴染んだソファに身をうずめて読みたい、大人のためのロマン小説。時間を忘れます。ぜひ。

OMAR BOOKS 川端明美




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