『 本屋図鑑 』私と本屋さんの個人的な関係


得地直美 本屋図鑑編集部・著 夏葉社 ¥1,700(税別)/OMAR BOOKS

 

一番最初の本屋さんとの出会いは?と聞かれたら、きっと誰しもぼんやりとでも、そのときのことを記憶の奥から引っ張り出すことが出来るのではないだろうか。
今回ご紹介する本は届いたばかりの新刊『本屋図鑑』です。

 

本好きの人は、そのタイトルを聞いてピンと反応せずにはいられない本書。
内容は全国47都道府県、全ての件の本屋さんを足を使って丁寧に取材した記録を、優しい味わいのイラストとともに(写真じゃないのがまたいい)図鑑のようにまとめたもの。

 

ほんとうにバラエティに富んだ全国の本屋さんが、この一冊で一望できるようになっている。

 

北は国境の街、稚内から南は石垣島の歴史ある本屋さんまで。
この一冊を作るのは並みの愛情ではきっと出来ない。でも、本屋を巡る旅とはうらやましい限り。

 

ページを捲っていると、「ここ行ってみたいなあ。あ、ここも。へえ、こんな本屋があるんだ」と、行ったことのない本屋さんを脳内旅行しているようで楽しい。

 

一口に本屋とはいっても、小さな町の本屋から全国チェーンの本屋、カフェや美術館に併設されている本屋、個性的な本屋まで満遍なく網羅している。

 

読んでいると、本屋の個性はその土地と人が作るものなんだなあと思う。

 

中には、「病院にある本屋さん」という紹介があって、そういえば、と幼い頃通った本屋のことを思い出した。
私の一番最初の本屋さんとの出会いは、今はなき「文秀堂」という名前の町のよくある小さな書店。
小児ぜんそくがひどくて、病院通いばかりしていた小学生の頃。
かかりつけのS医院に行った帰り、近くにあったその本屋で好きな本を買ってもらうのが、そのときの私の唯一の楽しみだった。
今でもその本屋の棚の並びやカウンター周りの様子を思い出すことが出来る。
発作で身体はきつかったはずなのに、本屋に入ったとたんその辛さも忘れ、嬉々として本を選んでいた。その小さな私が今に繋がっている。

 

おそらく皆、だれにでもそんな自分だけの本屋さんとの思い出がある。

 

この本を作った夏葉社の島田さんははじめにこういう文章を載せている。

 

「本屋は友人であり、家族である」

 

気付くとそこにある。必要なとき手を差し伸べたり、励ましたり、楽しませてくれる。
そんな大切な場所がたくさん集められたこの本。

 

本にまつわるあれこれ(流通、歴史、本屋さん用語集など)も充実しているので、いろんな角度から楽しめる贅沢な一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
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