『 HOPPER 』窓の向こうの内なるもの。想像力を刺激するホッパーの絵。


Rolf G. Renner 著 TASCHEN ¥2,100/OMAR BOOKS

 

「窓」が好きだ。
窓自体も好きだし、窓から見える風景も好きだし、飛行機に乗るときは迷わず窓際の席を選ぶし、窓の外を眺めている人を見るのも好きだ。

 

エドワード・ホッパーの絵は、そんな私に満足を与えてくれる。彼の絵にはよく窓辺に佇む人物が描かれているから。
そこには、海辺やホテル、オフィスやバーなどに佇む人々がふとしたときに見せる悲哀や孤独を一瞬にして切り取ったかのような、いろんな場面が登場する。

 

今回ご紹介するTACHEN(アートブックでよく知られているドイツの出版社)から出ているこの画集『 HOPPER 』は、薄くて手に取りやすい大きさ。
鞄にすんなりと入って、気軽にどこにでも持っていけるのがいい。

 

エドワード・ホッパーは、写実的な画風で知られるアメリカの20世紀を代表する画家。今現在も高い人気を誇っている。水彩で、都会人の孤独や郊外の何気ない日常を描いた作品が多い。
日本ではよく本の表紙に使われているので、目にしたことがある人は多いはず。
彼の絵にはドラマを連想させる雰囲気がある。だからきっと小説と相性がいい。

 

この画集の表紙に使われているのは『 Nighthawks 』というタイトルの作品。
ナイトホークスとは「夜更かしをするひとたち」のこと。ウィンドウ越しに見える、深夜のダイナーのカウンターに座る男女。圧倒的な静けさがこの夜の情景を支配している。この絵を観る人は、感情を抑制した表情の二人の関係を知らず知らずの内に想像してしまう。勝手にストーリーさえ作れそうだ。

 

また『 Morning Sun 』という作品では、朝陽を受けながらベッドの上で膝を抱えて窓の外へ視線を向ける、(おそらく)人生の後半に差し掛かった妙齢の女性が描かれている。哀しいのか、寂しいのか、あるいは満ち足りているのか、その眼差しはひと言では言い切れないほど深い。

 

ホッパーの絵の窓の外に目を向ける人はここにいながら、ここにいない。
外の風景を見ているようで、どこか遠くを旅している。
彼の絵はまた同時に、私たちが心の中に抱えている、普段は隠れて見えない内なるものへと誘うような魅力にも溢れている。

OMAR BOOKS 川端明美




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