『紅茶スパイ 英国人プラントハンター中国をゆく』イギリスで紅茶が好まれるのは? ガーデニングが盛んなのは? 間口が広くて読みやすい冒険ノンフィクション小説。


サラ・ローズ 著 原書房 ¥2,520/OMAR BOOKS
 
― イングリッシュティーを飲みながら異国の旅を読む ―
  
今夏はロンドンオリンピックで盛り上がりそうだ。
そのせいあってテレビを始め何かとイギリスが注目を浴びている。
英国と言えば「ガーデニング」と「紅茶」、というのが私の勝手なイメージ。
その両方がたっぷり詰まった願ってもない本を見つけたので今回ご紹介します。
  
ロバート・フォーチュン、という人物を知っているでしょうか?
イギリスの歴史や園芸に関心のある人なら耳にしたことがあるはず。
彼はプラントハンター(植物採集家・植物探検家:異国の珍しい植物を自国に持ちかえる人)として知られている。
 
そもそもプラントハンターとあまり聞き慣れない言葉は、イギリスという国が発展していく時代においてなくてはならなかった存在で、フォーチュンはその中でも特に功績が大きくよく知られた人。
黄色いツルバラ(フォーチュンズ・ダブル・イエロー)やキンカン(Fortunella)には彼の名前が付いている。
この本はそのフォーチュンが、中国が未開の異国だった時代、隠された茶の木、種、苗とその栽培法、茶の製法を求めて遠く旅する冒険ノンフィクションだ。
  
歴史ものはちょっと・・・という人にもお薦めしたい。とても読みやすく間口が広い。
というのも、植物園、温室、薬草、園芸家、紅茶、ガーデニング、インド、アッサムティー、イギリスの階級制度、世界企業(株式会社の原型)、お茶の売買・ブローカーの仕組み、中国茶、老舗のトワイニングと少し上げただけのキーワードに引っかかった人で、好奇心さえあればきっと面白く読める。
 
どうしてイギリスではあんなに紅茶を愛飲するのか、ガーデニングが盛んなのか、植物園、温室が多いのかが読んでいく中ですんなり理解出来る。単純に歴史冒険物語として読んだっていい。
  
私たちが普段何気なく楽しんでいるお茶の世界。
今に至る遠い歴史とそれに情熱をかけた人々がいるということの事実。
その奥深さをしみじみ感じつつ、何杯も紅茶を飲みながら異国の旅を読み終えた。
午後のイングリッシュティーを味わいながら読むのも乙な一冊。

OMAR BOOKS 川端明美




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