『マイスウィートソウル』女子に国境はない!韓国の大ベストセラー、ついに日本上陸

「 OMAR BOOKS 」オーナーの川端明美さんによるブックレビューの連載が始まりました!(関連記事:OMAR BOOKS 本で人生は生きやすくなる)
本に対するその豊富な知識を活かし、お客さんが求めている本をピタリと処方してくれる本の薬剤師のような明美さん。
明美さんは普段どんな本を読み、心を動かされているのかしら? 彼女の「お勧めの1冊」を知りたい!という私たちの期待に答え、OMAR BOOKSの書棚から、毎週とっておきの1冊をカレンド読者に「処方」してくれます。


*************************************





『マイスウィートソウル』チョン・イヒョン・著 1,995円/OMAR BOOKS 


「かつての恋人が結婚する日、みんなは何をして過ごすのだろう。―だったら私は? 私は、出勤した。」
という冒頭からこの物語は始まる。


舞台は韓国、ソウル。
出版社に勤める女性、オ・ウンスは元恋人が結婚することを知っても、意外と冷静な自分に驚く。大盛りのジャージャー麺をしっかりたいらげ、スタバのカフェ・モカまで平然と飲めたりするのだ。
そして、重要なプレゼンの前に化粧が崩れないようにと涙を流さなかったという理由で、自分がようやく大人になれた、と実感する。


独身、31歳の彼女にさらに追い打ちをかけるのが、女友達の結婚報告!
やけになった彼女は出会ったばかりの年下男子と一夜を共にしてしまう―。


女子の本音満載の、なんだかずいぶん痛々しい話のようだけどこれはまだ序の口。
不器用な彼女は両親の不仲や仕事に右往左往しながら、そこへ見合いで出会った会社経営の年上、10年来の男友達に女友達2人が加わって物語は展開していく。


この小説を読むと、これってまさに私たちが直面している現実と同じじゃないの、と思ってしまう。
ソウルであれ、東京であれ、沖縄であれ変わらないということ。
日々選択を迫られている今どき女子にとって、幸せとは何かをついつい考えこんでしまうのだ。
他人の事だと正しい判断が出来るのに、自分の事となると駄目駄目な彼女たち。身につまされる人も多いのでは?


韓国の大手新聞に連載され大ベストセラーになったチョン・イヒョンの初の邦訳となる本作。
女性ならではの複雑な心理描写の巧さに驚かされる。
読んでいて、はは、という乾いた笑いが何度も出た。
おいしいものが出てきたり、転職、恋人との別れ、後半は意外にも少しミステリー風に転がり始め、、ここから先は読んでからのお楽しみ。
彼女が男性3人のうち誰を選ぶのか想像するのもまた楽しい。


離婚したばかりの友人を見かねて仕事をさぼって海に行く女3人のエピソードがまたいい。
ウンスは海辺で友達2人が言い争うの聞きながら思う。
「どっちにしろ、傷つかないでほしいんだけど。その自信、ある?」
こういう感じで彼女はよく心の中でつぶやいたりするのだけど、そこに知性が見え隠れして、この小説が下世話になりそうなテーマを扱っていながらも品が感じられる理由。


まるで新しい靴のサイズが合わずに靴擦れしその痛みに泣きたくなっても、何事もないかのようにヒールをカツカツ言わせ、懸命に前へ向かって足を踏み出す愛すべき主人公ウンス。
その彼女の後ろ姿に、私たちは皆自分自身の姿を重ねずにはいられない。
読み終えた後、すぐさま女友達にすすめたくなること間違いなしの一冊。



OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
blog:http://omar.exblog.jp/