『 料理の旅人 』仕事論、名言、華やかな舞台裏…アスリートのようにタフで熱い料理人たちのインタビュー集

料理の旅人
木村俊介・著 リトルモア ¥1,575/OMAR BOOKS
 
―経験の宝庫、良質なインタビュー集―
  
梅雨も明けもうすぐ本格的な夏がやってくる。
暑さには熱さを、ということで今回は熱い料理人の声を集めたインタビュー集をおすすめします。 
 
対談集やインタビュー集の面白いところはその人の「生の声」が聞けるところ。
でもその類の本が全て面白いというわけじゃない。
最近注目しているインタビュワー・木村俊介さん。
まだ若いのに相手の本音を引き出すことに長けていて、インタビューする対象は多岐の分野に渡っている。
その木村さんによる近作がこの本。
身ひとつで料理業界を渡ってきたレストラン界の重鎮たちの熱い声が詰まっている。
  
25人ものベテランシェフたちの料理の世界に足を踏み入れることになったきっかけから、未知の世界に飛び込んだ海外現地修業の様子、戻ってからの挫折と苦難、レストランをやっていく華やかさの裏の現実のシビアな面など、コンパクトな一冊の中に読みどころが沢山。
半端ない仕事量、続けることの大変さ、つぶしのきかない職種である料理人に敬意を覚えるようになった。
 
今では当然のように身近にあるフランス料理やイタリア料理。
それがまだ珍しい時代、どのように日本に定着していったか、その変遷史としても読みごたえがあった。
  
また必ずしも料理に興味がある人だけが読む本というのではなく、いろんな人が仕事論として読むのに十分値する良質な本作。
 
経験の重みをずっしりと感じさせてくれる。
打たれ強さとはもともと備わっているものではなく、何度も打たれ続けることで結果タフになっていく彼らの姿は読む人を勇気づける。
それにしても料理人て、前からアスリートのようだと思っていたらこの本を読んでますますその思いを強くした。
 
一方で名言集としての読み方も。
 
―わからないことは保留にしておく。へんに浅いまま消化してしまうよりも~省略~何度も思いかえす度に深まる(ワインの味について語った言葉)― 
 
といったような経験の言葉の宝庫。
 
誰かの経験を聴くことで自分の力に変える。それがインタビュー集を読む醍醐味。
これから何かを始める人に、あるいは自らを奮い立たせようという時に読むといい熱い一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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