『 さよならのあとで 』大切な人との別れや、大きなものを失った悲しみに打ちひしがれる人に

さよならのあとで
ヘンリー・スコット・ホランド・著 夏葉社 ¥1,365/OMAR BOOKS
 
― 別れもまたさりげなくそこにあるもの ―
  
 先日、型押しの赤い小花で縁どられた表紙が目を引く素敵な詩集が届いたばかり。
以前注文を受けてその本の存在を知り、入れ直して再読した。
こういう本を必要としている人はきっとたくさんいるんじゃないか、
そう思えたので今回はこの詩集『さよならのあとで』をご紹介します。
 
一編の詩と絵からなるこの本。
夏葉社という小さな出版社から出ている。
長く読まれてほしい本一冊一冊を丁寧に世に送り出しているところだ。
 
中を開くと白いページに一行一行が読む人に静かに語りかけてくる。
そしてそれは特に大切な人との別れや、大きなものを失った悲しみに打ちひしがれる人の心にはより強く響く。
例えば身近な人の死。
それを特別なものとしてではなく、さりげなくそこにあるものとして42行の言葉たちが私たちを優しく包み込む。
 
著者のヘンリー・スコット・ホランドはイギリスの神学者・哲学者で、今でも世界中で多くの人に読まれているというこの詩。
ノートの端にさっとえんぴつで描いたような、心をちょっとくすぐる挿絵とともに、表紙カバーを取ると爽やかなペールグリーンが現れる。
本の最後には原詩(英詩)も収録という、夏葉社さんによって贅沢に生まれ変わった。
 
この詩を読んでいてロドリゴ・ガルシアという映画監督の『美しい人』という映画を思い出した。
ごく普通の人々の日常を描くことで彼らの心の陰影を浮び上らせることに長けた監督の作品で原題は『9lives 』。
ワンシーンワンカットの9話で出来た最終話には墓参りにやってきた年配の女性と幼い娘が登場する。
この二人のささやかなやりとりが鮮やかな緑の木々を背景に描かれる。
二人の間には大きな隔たりがある(それにはあるしかけがあるのだけど)。
そしてこの女性は人生のある時期に大きな悲しい別れを経験している。
 
この詩と映画の内容が重なるのは、別れは私たちの一部となり人生はその後もまた変わりなく続いていくということ。
では「さよならのあとで」私たちはどうふるまうのか。
涙に暮れ、悲嘆したままでいるのか。
詩の最後の一行がまた胸を打つ。
 
刻まれた言葉がただ淡々と紙の上を流れ、読む人を安らかな場所へ導いてくれるこの本。
繰り返し繰り返し自分の心に沁みこませるように読んでほしい一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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