» 『 シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々 』型破りなパリの有名書店の歴史。 だめでもいい、とそっと優しく肩を 叩いてくれるような物語。


ジェレミー・マーサー著 河出書房新社 ¥2,600(税別)/OMAR BOOKS

 

「その書店に行きついたのは、どんよりと曇った、冬の日曜日のことだった。」という書出しから始まる、パリに今もある伝説の書店の日々を綴った『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』を今週はご紹介します。

 

ヘミングウェイの短編『移動祝祭日』の中に出てくる元祖「シェイクスピア&カンパニー書店」ではなく、こちらはアメリカ人ジョージ・ホイットマンが営む二代目のS&Cの方で、今でも世界中から客が訪れる魅力的な場所。

 

華やかな文学史を持つのとは別に、この書店が特異なのは「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから」という店主・ジョージの信条から、店内ではお茶会が催され、暖かいスープを振る舞い、行き場のないものは寝泊まりを許されるなど、私たちの知る「本屋」の枠に収まらないことだ。

 

この本の著者もあるきっかけからこの書店に滞在することになり、そこで破天荒なジョージを筆頭に、どこか世間からはみ出した国籍も背景もばらばらな人々と交流を深めていく。元ジャーナリストの著者が描くだけあって、間にS&Cの歴史を織り込みつつ、書店に出入りする個性的な住人や客たちとの日々は臨場感があり読みやすく、読者はあっという間にその物語に引き込まれる。

 

そのカオスのような変わった日々を綴った本書から学ぶことは多い。理想と現実のギャップ。異質のものを互いに受け入れることの難しさ。かろうじてそこに希望を見出すとしたら、その書店はその難問を(ところどころ問題はあるにしても)自らその姿勢で解こうとしているところだろう。

 

時に必死になるときは必要だ。でもずっとそれだと息苦しく、周りもつらくなる。完璧でなくてもいい、だめでもいい、と読み終わってそっと肩を叩かれたような気がした。原題にある“TIME WAS SOFT THERE”を直訳するとしたら「時間はそこで柔らかかった」。この本を読んでいる時間もまた柔らかで、優しかった。

 

OMAR BOOKS 川端明美

 


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