『食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探求の書』くよくよするのも悪くない、泣き笑いと再生の物語

エリザベス・ギルバート著 ランダムハウス講談社 1890円/OMAR BOOKS
 
ここまで弱い自分をさらけ出せたらある意味気持ちいいだろうなあ、
と思わせてしまうのが、世界的ベストセラー(なんと41カ国で700万部!)
となったこちらの小説。
 
つい最近ジュリア・ロバーツ主演で公開された映画で知っている人も多いはず。
 
でも声を大にして言いたい。本の方が断然面白い!!
正直に言えば映画の方は見ていないのですが・・・
それというのも本で十分満足したから。
 
この本を例えて言うなら
 
「大人の女性の頭の中のおしゃべりを本にしたらこんな感じ」。
 
ストーリーは、作家としてある程度名も知られ、結婚もし、
傍から見れば幸福そうな30代前半の著者・エリザベスが
離婚と精神の危機(うつ、その他諸々)に瀕し、
自分を見つめ直すために1年という期限つきの旅に出るところから始まる。
 
彼女が行く先に選んだ場所はイタリア、インド、バリ。
 
本はその3部構成になっていて、
イタリアではハンサムな青年からイタリア語を学びながら
おいしいものをひたすら食べ
(本場のパスタ、ジェラートのおいしそうなこと!)、
生きる喜びを確認する旅。
インドではヨガのアシュラムに滞在し信仰について考え
(アシュラムでのトレーニングの様子がよく分かるので
ヨガやっている人は一読の価値あり)、
最後の地バリでは治療師のもとで自分の中のバランスを取り戻そうとする
(神々の島バリの内情も)。
 
そこには旅につきものの、いろんな人との出会いと別れがある(スパゲッティという名のイタリア男性、テキサスのリチャード、バリの治療師、ヒーラーの女性などなど)。
 
もちろん恋愛も!
 
それに加え、さすが作家の眼を持つ彼女ならではのそれぞれの国や人、
その歴史や文化への深い洞察力。
 
そして何といってもこの本の魅力はエリザベス(=著者)自身。
 
「赤ん坊を育てることに、巨大イカ探しのためにニュージーランドへ行くぐらいの喜びを感じられるようになるまでは、子どもはつくれない」
 
と、安定した結婚生活を壊してまでも、自分に正直であろうと旅に出た彼女。
 
身勝手だといえばそうかもしれない。
でも彼女には切実な問題だったのだ。
自分にとってベストなことを自問自答しては、
旅の最中も自分のしてきた事に対して悩み苦しむ。
 
でも物語は決して暗くはなく、
誰とでも友達になれる彼女の魅力が発揮されて、
赤裸々に綴る言葉にはすがすがしささえ感じられる。泣き笑いのあの感じ。
 
それにしても彼女がここまでくよくよするのももうなんか逆に素晴らしい!
と思ってしまう。
 
「底の底を打つ」という最悪な状況のことを言う言葉があるけれど、
あとはもう上がるしかないんだ、
読み進めるうちにこっちまで元気になってくる。
 
そして彼女はこの旅の途中、とにかく祈る。
「祈り」は目に見えないけれど誰にだって祈ることは出来る。
私たちが何かつらく悲しい状況にあるときに「祈り」は有効だとこの本は教えてくれる。
 
そうすることで自分の人生に光を見出していく再生の物語。



OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
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