『とかげ』5回以上読んでいるのに毎回再発見。花火の出てくる好きな場面が実は花火じゃなかったし……思い込みってすごい。

とかげ
吉本ばなな・著  新潮文庫  ¥380/OMAR BOOKS
 
― 決まって夏に読みたくなる ―
  
 夏らしい夏が来た。アスファルトの照り返しが眩しい。
こうなるとついつい冷房の聞いた室内に閉じこもりがちに。
ずっと窓を閉め切った同じ部屋の中にいて、そこから外に出てみるとさんさんと降り注ぐ光と騒がしい蝉や車の音が一斉に耳に飛び込んできて、あまりの熱気にうっとなる。
それがまた気持ちいい。一気に解放感に包まれる。
つまり換気ですね。
久しぶりに、今回紹介するこの本を読んでその感覚に近いものを感じた。
 
この『とかげ』はひらがなの「よしもとばなな」になる前の初期の作品。
6つの短編と少ないながら彼女の小宇宙が広がっている。
 
ある種の閉塞感みたいなものにとらわれている人たちが主人公。
読む人は彼らの中にどこかしら自分の姿を重ねる。
前にも後ろにも進めずがんじがらめになっている状況にある変化が訪れる瞬間を描いている。
 
最初に読んだのが夏だったので、夏の記憶とごちゃまぜになって体に染みついている。
だから決まって夏に読みたくなる。
少なくとも5回以上は読んでいるのに、あの頃分かっていたようで全然分かっていなかったんだなあと今回も発見することがあった。
 
自分の変化に気づくことは、同じ本を時間をおいて読む楽しみの一つだ。
あの頃の自分に再会できる喜びとでも言えばいいだろうか。
懐かしい!という気持ちとこんなエピソードあったっけ?と何度も立ち止まり、記憶を確かめながら読んだ。
 
またこの中の「らせん」という短編の中で、花火の出てくる好きな場面が実は花火じゃなかったことに初めて気づく。
思い込みってすごい。頭の中ではくっきりと暗い夜空に花火が上がっていたのに。
 
ばなな作品を読むといつも、誰にでもドラマティックに生きたいという願望はあって、でもそれを求めて探しに行かなくても日常は十分ドラマティックなものであふれているということを思う。
見方(受け取り方)の問題。
 
女性の支持が多いばなな作品。
でもこの本はきっと男性にも受け入れられやすいはずです。
だいぶ前の作品なのに色褪せない、今読んでも胸に響くこの短編集。
初心者にもおすすめします。
だらだらと汗をかきながら、木陰でアイスを食べつつ読んでみてはいかが?

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp