» 『 一瞬と永遠と 』異世界が生まれるのは現実があってこそ。ある漫画家の日常。


萩尾望都・著 幻戯書房 ¥1,800(税別)/OMAR BOOKS

 

もともと「人」に興味がある。子ども、大人、老人、一般人、有名人、外国人。
どんな人でもよくて、この人は日々どんなことを考えて過ごしているのだろう、と想像するのが癖のようになっている。
現実に出会う人では物足りなくて、それでエッセイ(随筆)を読むようになった。
エッセイ集を出すのは著名人に限られるので、その道を究めた人の日々はさぞ刺激的なんだろうと期待して読むと、案外「普通」だったりする。
そしてそれをつまらないと思うかといえばそうでもなく、逆に安心する。
あんなすごい人でも、同じ人なんだ、と思えて。

 

今回ご紹介するのは漫画家・萩尾望都さんの『一瞬と永遠と』というエッセイ集。
萩尾さんといえば、「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「イグアナの娘」、「11人いる!」などの作品で知られ、手塚治虫文化賞などの多くの漫画賞を受賞し、その世界では知らぬ人がいないほどの漫画家。
他分野でも萩尾さんの作品から影響を受けたと公言する人も多い。その彼女の日常はいかに。

 

 
長年に渡って、雑誌などに寄稿した文章を一冊にまとめたこの本。読み始めてすぐ、「ああ、漫画家も普通の人なんだ」という感慨を覚えた。
理解のない両親との葛藤、子どもの頃の記憶、読んだ本の感想、生活の中でふと疑問に思ったことなどが、何のてらいもなく自由に綴られていたからだ。
でも、寺山修司や中島らもなどの名がさりげなく登場するあたりはさすが。

 

漫画家といえども、もちろん人間である以上、日々の雑事をこなさないといけない。
分かり合えない親とも対話しないといけないし、郵便局にも行かないといけないし、洗濯機もまわさないといけない。そんな中、いろいろと考える。妄想する。
一般の人がこれ以上は考えない、というさらにその先までえんえんと考え続けた結果、上にあげた傑作と呼ばれる作品が生まれる。異世界が生まれるのは現実があってこそ。
その秘訣を垣間見ることが出来るのがエッセイを読む楽しみ。

 

これを読んだあとでまた漫画を読み返してみるのもいいかもしれない。

OMAR BOOKS 川端明美




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