うえのいだ土地の再生が、家族の再生へ。子供の遊び場がないまぜの、都会の小さな癒やしの畑

うえのいだ

 

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「僕は、うえのいだ自体をアップサイクルしていこうと思ったんですよ」

 

アップサイクルとは、元のものより価値の高いものを生み出すこと。リサイクル(再利用)のアップグレード版だ。農薬を使わない野菜作りや創作活動をしている“うえのいだ”、玉城真さんによると、「一見廃品とか不要品に見えるものでも、逆手に取って、面白いものに変えていくこと」だ。

 

玉城さんがアップサイクルに取り組んだのは、那覇は首里にある一族の土地。公道に通じていない袋地で、この場所へは、隣の建物との境界線上の細い隙間を辿ってくるしかない。畑をするに農作業用の機械の類も入れられないし、収穫した野菜を運び出すのも一苦労なはず。一見不利なことばかりのこの土地を、いかにアップサイクルしたのか?

 

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直接畑に来て、農薬・化学肥料不使用の野菜を購入することもできる

 

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その答えが、不定期に開催される“畑のアトリエ”だ。袋地の土地には玉城さん手作りの木のデッキがあり、テーブルが並べられている。畑の隣、青空の下で、自然に親しむ学校が開校される。

 

「土地が狭いし、普通の農家さんと同じことしてたら違うなと。自分のやり方が“畑のアトリエ”。僕、ずっと美術をしてきたんで、畑にあるもので何か作るの得意なんですよ。好きなことをして、人がいっぱい集まってくる畑にしたかったんです」

 

うえのいだ

 

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玉城さんの肩書は農家にとどまらない。青空教室の美術の先生でもある。

 

よく晴れた冬の日、畑で採れたレモングラスの葉、月桃やムラサキシキブの実、ハーブなどを使ったしめ縄作りのワークショップが開催された。集まったのは、しょっちゅう畑に遊びに来る近所の親子や、畑の手伝いをよくしている県立芸大の学生、うえのいだのインスタグラムを見て遠方から初参加した家族連れなど、様々。

 

玉城さんの作り方の説明の後、それぞれが好きな材料を選んで創作にとりかかる。夢中で縄を編む人、ふざけあってなかなか進まない家族、創作に飽きて畑のブランコやハンモックに揺られる子供達。ここでは「こうしなきゃいけない」というような決まり事なんて何もない。自分のペースで創作して、遊びたくなったら遊んでいい。それぞれが好きなようにここでの時間を共有していた。建造物に囲まれた中にポッカリとできた、人と自然が交流する暖かい空間。冬の柔らかな陽の光に照らされ、皆の笑い声が響く。ああ、この土地が喜んでいるなと感じた。これがアップサイクルだ。

 

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奥様の純さんが、ワークショップを開催するに至った経緯を話してくれる。

 

「ここに来た時に、自然がいっぱいあったから、ここを潰しちゃ勿体無いって思ったし、子供が小さかったから、こういう自然に触れさせたいと思ったんです。木登りしたりとか、土に触れたりとか。自分の子供たちだけでなく、近所の子にもここで遊んで欲しいと思ったし。都会の那覇だからこそ、こういう場所を残さなきゃって」

 

長年放置されていたこの土地は、木々が鬱蒼と生い茂り、瓦礫が散乱していたのだそう。玉城さんは、1年かけて掃除をした。今、畑を囲むように生えている木々は、元々そこにあったもの。1部を畑にしたものの、自然をなるべくそのままの形で残した。“畑のアトリエ”は、子供たちが木や土に触れるきっかけにもなるのだ。

 

うえのいだ

 

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“畑のアトリエ”での創作活動には、木や土に触れること以外にも大事な意味がもう1つ。自分自身をありのまま受け入れることに繋がると、玉城さんは考えている。

 

「僕、アートに救われたんですよ。アートって自分を掘り下げていく作業が多くて。自分がなんで表現するのかを掘り下げると、自分を見つめなおす作業に繋がるんです。自分をカウンセリングするじゃないですけど、アートは良し悪しじゃなくて、何でもいいんだよって受け入れてくれる。とりあえずの自己表現ができるんです。受け皿ができて、アートによって自己肯定ができるようになったんですね。だから子供達も、その子がどんなことをしたいのか自由に表現してもらって、それでいいんだよ、大丈夫だよって、全て拾ってあげたいんです」

 

その言葉通り、長女の結々(ゆゆ)ちゃん、次女の翠(すい)ちゃん、三女の明(はる)ちゃんは、畑にあるものでそれぞれの遊びをする。小花を摘んで木箱に綺麗に並べたり、月桃の葉を割いて細くしてみたり、木の積み木を好きように重ねたり。全て、彼女らのしたいことが表現されている“アート”だ。それを暖かく見守り、ときに一緒に遊ぶ玉城夫妻の優しい目配りが印象的だった。

 

ポツリと玉城さんが言う。

 

「幼少の頃に愛ある家庭っていうんですかね、ちゃんと子供のことを親が見てくれたりすると、無条件に自己肯定感が増えていくと思うんですよ。でも、その状況が自分にはなかったんで」

 

うえのいだ

 

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「これはちゃんと話したほうがいいかなと思って」と前置きして、自身のお祖父様やお父様のことを話してくれた。

 

「うちはすごいお家だったんですよ。すごいっていうのはある意味、家庭が崩壊してた(笑)。オジイは兵隊だったんですよ。華北からタイのバンコクまでずっと歩いて行軍したような、日本一歩いたと言われる部隊にいて。2年のところ、兵役が伸びて5年も行っているんです。沖縄戦を経験した他の人の話とは、全然内容が違う。負けたことがないとか、特に酔っ払うと兵隊だった頃の自慢ばかり」

 

長く軍人だったお祖父様は、その息子である玉城さんのお父様に対しても、その名残で接してしまったのだろう。

 

「親父はそのオジイから、鉄拳制裁は当たり前のあらゆる暴力を受けて育ったんです。そんな育ち方をしたから親父は萎縮してしまって、今でも人の目を見れなかったりするんですよ。お酒に逃げてばかりで、まったく家庭を顧みなかった。いつも怒ってて、母親と喧嘩してるし、僕達兄弟を放置しっぱなし。今思えば、子供への接し方がわからなかったんでしょうね」

 

うえのいだ

 

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お祖父様の戦争の体験が、お父様の人柄に影を落とす。その影響は、玉城さん自身にももちろんあった。

 

「そんな親父だったから、自分も子供との接し方がわからなかったんです。長女の時は抱っこはするけど、どうスキンシップをとっていいかわからなかった。次女のときは、自分の練習で、わざとチュッチュしたり(笑)。三女のときにようやく無理せずスキンシップがとれるようになってきた感じです(笑)」

 

純さんも言葉を続ける。

 

「誰が悪いとかじゃないと思うんです。おじいちゃん自身も戦争で、精神的にダメージを受けてて、PTSD的なところがあるんです。夜中にうなされていたり。戦争が終わっても、戦争の影響が、お義父さん、主人へと、次の世代、その次の世代まで続いちゃうんだなって、すごく怖かった」

 

うえのいだ

 

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バラバラの家族。そんな状況に少しずつ光が差したのは、玉城さんが、お祖父様に頼まれ、その所有するアパートをリノベーションしてからだ。リノベーションをきっかけに、お祖父様と玉城さん家族は、そのアパートに住もうと首里に戻った。そして、新しい出発の場所だからと、そのアパートを、一族の屋号である“うえのいだ”と名付けた。

 

「その後、オジイから、この土地で畑をやってみないかって話をもらって。で、畑も“うえのいだ”にしようって。オジイの世話や、“うえのいだ”のアパートとか、“うえのいだ”のこの畑とか、“うえのいだ”をやっていることで、どんどん家族が変わっていくのがわかるんですよ」

 

季節ごとに小さな芽が吹き、新しい命が誕生している畑。お子さん達が作った木の札が、見る者の心を和ませる。「10がつ12にち セルバチコ」。種蒔きをして、水をあげて、札を作り土に立てる。その後も世話をして、その成長を楽しみに待つ。そんな玉城さん一家の様子が畑から見て取れるのだ。仲の良いどこにでもいるであろう“普通”の家族。幸せな日常がまんま反映されている畑だからこそ、お祖父様やお父様にも変化をもたらしたのだろう。

 

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「畑に水撒く時間がないから、親父を呼んで水を撒いてもらったりしているんです。なんか家族の問題を家族で解決していこうという形になってきたんですよね」

 

驚いたことに、玉城さんが学生のときに離婚した両親は、昨年よりを戻し再婚をした。

 

「今は自分も親父とちゃんと対峙できるんです。嫌なものは嫌だとちゃんと伝えています。親父は、昔は逃げてたけど、今はちゃんと聞いてくれますよ。小さい頃は甘えられなくて寂しかったけど、ようやく今、親父に甘えて、トラウマを解消している感じです(笑)」

 

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純さんお手製のジューシーとりんごケーキ。畑の月桃を器代わりに

 

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こちらも純さん手作りのレモンスコーン

 

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壊れていた家族が一つにまとまりだした、そのことを玉城さんは「第1章が終わった」と表現した。親に甘えられなくて自己肯定ができなかった自分。それをアートで癒やし、自信を取り戻した。一族の再生のきっかけとなったこの畑は、今や近所の人や次世代を担う子供たちの癒やしの場、遊びの場になっている。土地がもたらした和が、どんどん周囲へと波及している。“うえのいだ”の第2章は、既に幕を開けている。

 

文・写真/和氣えり(編集部)

 

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[うえのいだの野菜を購入できる店]
◆ハッピーモア市場
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◆浮島ガーデンハルサーズマーケット
(毎月第2日曜開催)
http://ukishima-garden.com
https://www.facebook.com/UkishimaGarden/

 

◆ブエノチキン浦添店
 イートインコーナー
http://www.buenourasoe.com