ナチュラルでシンプルな優しい音楽ジェームス・イハ / ルック・トゥ・ザ・スカイ



本作からのリード曲「トゥ・フー・ノウズ・ホエア」
 

 
ギターのリフが印象的なロック・ナンバー。
ロックといっても激しいギターサウンドではなく、悲しげなロック。
サビの部分のギターリフもなんだか、ロマンティックな雰囲気で、
個人的にも本作の中で一番気に入っている一曲。
 
 
オルタナティブ・ロックバンドとして90年代に人気を博した
スマッシングパンプキンズの元ギタリスト「ジェイムス・イハ」。
日系人の両親を持つ日系三世、
父方の祖父が沖縄出身らしいが、
イリノイ州シカゴ生まれのアメリカ育ちなので、
本人はイリノイ州シカゴ生まれのアメリカ育ちなので、
日本語はほとんど喋れないそう。


そんな彼の14年ぶりにリリースされたソロアルバム。
 
前作はフォークやカントリーなサウンドが色濃く出ていたが、
今作はアコースティックなサウンドはそのままに、
より深みを増した歌詞と、少しばかりのエレクトロ・サウンドが加わっている。


1曲目の「メイク・ビリーヴ」は、
ウクレレとアコースティックギターから始まる。
バッキング・ヴォーカルにはカーディガンズのニーナ・パーションが参加しており、星空が似合いそうなカワイらしい曲になっている。
 
オルタナティブ・ロックバンド、ヤー・ヤー・ヤーズのカレンOが参加した「ウェイヴス」は、二人の声とベース音に徐々にいろいろな音が加わり、
宇宙の彼方を散歩しているような、浮遊感漂うナンバー。


アルバムタイトル「LOOK TO THE SKY」には
”何かがやってくる、空を見上げよ”
という意味が込められているのだそう。
確かに本作を聴いていると、宇宙や星、空が浮かんでくる。


とりたてて歌がうまい訳でもないし、個性的な声でもないけれど
声・メロディー・サウンドそのすべてがしっくりきているのは
自分の個性を知り尽くしているからこそ。


14年前のソロ・アルバムがリリースされた当時、
スマパンでの派手な衣装とメイクが印象的だった彼が
ソロでは一変、シンプルでナチュラルなサウンドに
「何、このアコースティックは?! 」
「歌詞といいメロディといい、とってもロマンティックなんですけど!! 」
と、彼の意外な才能に
「スマパン辞めてソロになるべき!!」
なんて思ってしまったくらい、そのギャップに驚いたのを覚えている。
その後、本当にスマパンを脱退するなんて!
これまた驚いたけど、こちらは彼の今の活動を見れば仕方なかったのかも…


その14年間の活動はというと、
プログレ・ロック・バンド「 A Perfect Circle(ア・パーフェクト・サークル)」にギタリストとして加入したり、
スタジオ経営にプロデューサー、
日本映画「リンダリンダ」のサウンドトラックを手掛けたり、
(プロデューサーとしては2001年には CHARA に楽曲提供,
「スカート」「ボクにうつして」をプロデュース)
さらに自身のファッションブランド「ヴェイパライズ(Vaporize)」を立ち上げるなど、その活動は多種多彩!
これだけの活動をしていれば、
自身のアルバムを作るのに時間がかかったのもうなずける。



CHARA「ボクにうつして」

CHARA「スカート」
 
とはいえ、次作が出るのにこんなに時間がかかるなんて待たせ過ぎ!!
と、言いたいところですが、
本作を聴けば待たされた事を忘れてしまうはず。
それくらい、期待以上の素晴らしいアルバムになっています。


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こちらもどうぞ☆
ジェイムス・イハ/レット・イット・カム・ダウン


 
記念すべきファースト・アルバムにして永遠のマスターピース。
14年前の作品とは思えない、今聴いても古臭さを感じない
柔らかで優しいメロディーからジェイムスの愛が感じられるはず。
 


桑江成美