» 羽地鯉のぼり祭り手作りの熱帯鯉のぼり、向かい泳ぐは空に真っ直ぐ

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり

 

こどもの日が近づくと羽地ダムの広場には、真上へ泳いでいるかのような鯉のぼりがお目見えする。風向きの関係か、重いのか、手作り鯉のぼりは、泳がずに垂れたまま。それがまた、なんだか愛らしい。色づかいは、まるで沖縄の海にいる熱帯魚のよう。

 

これは、名護に住む人たちによる、手作り鯉のぼりである。

 

ウロコがひとつひとつ布で作られ、縫い付けられている鯉もあれば、子どもたちが描いた顔のひとつひとつが、まるでウロコのように見える鯉もある。渋い色で絞り染めされたものもあれば、蛍光色でカラフルなものもある。

 

子どもも大人も夢中になって作ったであろう鯉を、じっくりと見る。すると、まるで隠れキャラ探しのように発見があり、楽しい。

 

 

羽地鯉のぼり

 

20年以上の歴史がある名護市の羽地鯉のぼり祭りが、手作り鯉のぼりコンテストを始めて3年になる。参加者たちは、配られた白い鯉のぼりに思い思いの色や飾りをつけるのだ。

 

今回は、保育園、子供会、企業、絵画教室、民泊グループなどの地域グループがコンテストに参加した。その中の、「すだつ羽地保育園」の園児たちは、手形スタンプや指先に絵の具をつけて、鯉のぼりを描いていた。

 

 

羽地鯉のぼり

 

絵の具に手を入れ、「ヌルヌルして気持ちが悪いー」と言いながら、嬉しそうなのは年中組さんだ。ギュッと力を込めて、手形を押す。モミジの葉のようなスタンプがひとつできた。満足気な表情だ。

 

羽地鯉のぼり

 

一方の年長組さんは、指先で、色づけ作業を始める。「文字は、塗りつぶさないでねー」という先生の言葉を、半分だけ理解した子どもたちは、文字の中を丁寧に塗ってしまう。先生は苦笑いだ。子どもたちは真剣そのものだから。

 

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり

 

また、初めは指先で塗っているつもりが、集中していくうちに、手全体で絵の具を混ぜ、大胆に塗っている。体長3メートルほどの鯉のぼりを塗るのは、大がかりな作業だ。途中から、上半身裸での作業となった。

 

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり

 

こんなふうに、みんなが一生懸命作った鯉のぼりは、来場者による投票で、優勝が決まる。賞品もあるため、結果発表はかなり盛り上がる。

 

「身内票でもいいんです(笑) 地域の皆さんが頑張って作った鯉のぼりを、多くの方に、見に来ていただけたら」

 

そう話すのは、羽地鯉のぼり祭り主催の名護市役所観光商工課、宮里力(ちから)さんだ。

 

今では、参加者みんなが楽しく取り組んでいる鯉のぼり作り。実はこれは、「古くなった鯉のぼりの代わりを買う以外で何かできないか」と考えたアイデアだ。

 

21年前、鯉のぼり祭りが始まった当初は、何千匹もの鯉のぼりが、羽地大川沿いや羽地ダム上を泳いでいた。山々に囲まれた広大な自然の中で泳ぐ姿は、圧倒的な迫力であったという。しかし、祭り期間中の雨や風の影響で、鯉のぼりは色褪せたり、破れたりと、年々減ってしまった。

 

「魚の習性なのか、川を下ってしまう鯉のぼりもあって(笑)下流で発見される姿もチラホラ。そんなこともあり、今では、250匹ほどに減ってしまいました。今後は、市政便りなどで市民からのお下がりを募り、少しずつでも数を戻していけたらと思います。それと、手作り鯉のぼりも毎年増やしていきたいと思っています」

 

羽地鯉のぼり

 

少しずつ定番化してきた鯉のぼりコンテストだが、企画した1年目は何もかもが手探りの状態だった。

 

まず、白い鯉のぼりの作り方だ。大きさは?素材は?最初に縫うべき?色付けしてから縫うべき?口の部分には何を入れればいいのだろう? わからないことだらけで、まさにゼロからのスタートだった。

 

宮里さんたちは、地域の手芸屋さんや縫い子さんと相談しながら、鯉のぼりを作っていった。素材は、できるだけ軽くて丈夫なもの、それと描きやすさを優先し、綿の布にした。生地の幅をギリギリまで活用するため、ポッチャリ型の鯉のぼりになった。2年目までは絵付けを先にしていたが、3年目からは、出来上がりをイメージしやすいように、形を作ってから色付けをすることにした。そして、口には、雨でも錆びにくい加工の針金を入れている。

 

羽地鯉のぼり

 

祭り開催中に気づいた失敗もあった。色づけで使った絵の具が水性だったのだ! 

 

「運営側も参加者も、何を使って色づけをしたらいいのかよくわかっていなくて。水彩絵の具で色塗りしてくる団体がいくつかありました。期間中の雨で、隣の鯉のぼりを自分色に染めてしまう鯉のぼりもあったりして(笑)」

 

自分色に染めた鯉のぼり、染められてしまった鯉のぼり。それもなんだか見てみたい。また、鯉のぼりの制作は、市から依頼するのではなく、希望者を募ることにした。

 

「最初の2年間は、こちらから羽地地域の方々に制作依頼をしていたんです。でも、『道具がない』とか、『スケジュールが合わない』というところもあり、鯉のぼりの集まりがあまりよくなくて。または、市からの依頼だから無理矢理作るとか(笑)そこで、募集形式に変えたのです。また、参加地域も羽地だけでなく、名護全域に広げました。そうしたら、今年は、29匹の鯉のぼりが集まりましたよ。毎年少しずつですが、数が増えています」

 

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり祭りは、昨年の20周年に、2日間で21500人の来場があった。ダム上を彩る鯉のぼりを間近で見ようと、ダムの端から端まで歩く人や、コンテスト中の鯉のぼりに投票をして楽しむ人もいた。

 

祭りでは、ウナギのつかみ取り大会も人気だ。今年は、ウナギをなんと116匹も放流した。獲った後は、持ち帰りができるため、慣れた参加者はクーラーボックスを持参する。子どもたちは、目をキラキラさせて、ウナギを追いかけるのだ。子どもたちはたくましい。足にニュルッとしたものが触れることを想像しただけで、ゾビッとする大人もいるのに。

 

その他にも、カヌーや生き物探検、羽地のおじいによる竹とんぼ作りなど、体験コーナーは、予約いっぱいになるほど人気だ。

 

羽地鯉のぼり

 

羽地鯉のぼり

 

また、地域の人たちの出店にも力を入れた。約10店舗という数は、他のイベントに比べ、決して多くはない。それでも、羽地そばやとれたて野菜、まきやフーズさんのらっきょうドレッシング、しまドーナッツなど、地域で作った食べ物を揃えた。

 

「地元の方の参加が、嬉しかったです。やっぱり地域の魅力を生かせるのは、地域の人ですから。これを機に、羽地地域の特産品となる商品を作り出したり、それをアピールする場になれば嬉しいですね。お金ではなく、知恵を出し合って、地域を活性化していけたら」と宮里さんは願っている。

 

羽地鯉のぼり

鯉のぼり祭り担当宮里さん

 

やんばるの壮大な自然の中で行われる鯉のぼり祭り。アクティブ派のファミリーなら、川で遊んだり、芝生の急斜面でソリ滑りを楽しんだり、一日中遊びながら過ごせる。また、のんびりしたい派は、広い芝生広場でゴロンとしたり、地元食材の食べ物を食べながら、エイサーなどのステージ発表を見て過ごすのもいい。ゴールデンウイークの1日に、そんな豊かな時間の過ごし方をするのも、気持ちがいいものだ。

 

こどもの日って、どう過ごすんだろう?そんな単純な疑問の答えは、ここ羽地ダムにありそうだ。

 

大きな鯉のぼりが家に飾れなくても、鯉のぼりがここには、たくさんある。職人仕立ての鯉のぼりが、並んで一斉に泳ぐ姿は、ただただ美しい。そして愛嬌のある手作り鯉のぼりは、それぞれ味がある。それらを見ながら過ごす家族の時間は、子どもたちにとって特別な思い出になるだろう。

 

これからもユニークな手作り鯉のぼりが増えていくといいなぁ。どんどん盛り上がって、名護の枠を越え、県内、県外からの手作り参加があったら、もっと華やかになって、見応えがありそう。こうして、みんなで作った鯉のぼりを見ながら楽しむことで、子どもたちの健やかな成長を願っていけたら!

 

写真・文 青木舞子

 

羽地鯉のぼり
羽地ダム鯉のぼり祭り
住所 沖縄県名護市田井等1017
毎年こどもの日前後に2日間開催