田仲洋服店スマートに見える服。オーダーメイドでしわの寄らない、自分だけの一着を。

田仲洋服店
 
しわの出ないスーツを探すのは、想像以上に難しい。
万人の体型にぴったり合う型紙はないので、既製品だとどこかに不都合が生じることは避けられないからだ。
 
「スーツって他の服と違いフォーマルな場で着ることが多いから、しわが寄るか寄らないかで大きく印象が変わるんですよね。
自分の体型にピッタリ合ったものを、シュッと着こなしている人が好きなんです。
体型に合わせて作るオーダーメイドなら、それが可能になります」
 
気に入ったデザインで、大体のサイズが自分に合っていても、例えば肩幅が少し大きいとか、袖の長さが数mm足りないということは誰しも経験したことがあるのではないだろうか。
その時、既製品であれば選択肢は2つ。
不都合に目をつぶって買うか、買うのをあきらめるか。
 
オーダーメイドは妥協や我慢やあきらめとは無縁な上、自分好みのカスタマイズまでできてしまう。
 
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例えば、スーツの裏地を変える。
襟の形を大きくする。
パンツのラインだって変更できる。
 
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蝶ネクタイは、色も素材も変えられる。
シャツのボタンの位置や数も相談できる。
 
田仲洋服店が提案するのは、カジュアルベースに上品さも兼ね備えたスタイルだ。
 
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ゆるめラインの服も、からだにフィットする服もあるが、全身ダボダボのスタイルは気分ではない。
かといって、完全なモードスタイルというわけでもない。
 
「ストリートが上品になった感じ」
 
と、デザイナーの田仲康人さんは言う。

 
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田仲さんがデザインする服の共通点は、スマートに見えること。
 
「シャツのほとんどは『ドレスシャツ』。
くびれがあるのでほっそりとしたラインが出ます。
襟を小さくすると、スマートな印象になりますよ」
 
どれも、オーダーメイドだからこそ生まれる効果だ。
 
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パンツ、ネクタイ、蝶ネクタイもオーダーメイド可能。蝶ネクタイは3,150円〜だが、シャツとセットでオーダーすると2,100円〜とさらに手頃に。
 
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2012年11月に田仲洋服店をオープンさせたばかりの田仲さんは、以前は生活用品や雑貨のデザイナーとして活動していた。
 
「デザイン関係の仕事に就きたいと思っていたので、芸大卒業後、東京の会社に就職しました。
でも、昔から服に興味があって趣味で作ってもいたんです。
趣味が高じて、大学祭では自作の服でファッションショーを開催したことも。
それなのに服飾業界に就職しなかったのは、忙しすぎるというイメージが強かったから。
仕事ではなく、趣味のままにしておいたほうが良い気がしたんです」
 
生活用品のデザイナーとして東京で働き出してからも、洋服のことはずっと頭にあったと言う。
 
「東京の自宅周辺にはおしゃれなショップが沢山あったので、服屋を見て回るのが楽しかった。
でも、仕事もすごく面白かったんです。
キャドを使って掃除用具やフック、タオルバーのような身の回りのものをデザインしていたのですが、それはそれで楽しくて。
デザイン自体が好きだから、デザインできるなら何でもいいと思っていました」
 
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しかし、服飾デザインについても学びたいと思うようになった田仲さんは、就職して2年後、働きながら夜間の服飾学校に通い始めた。
 
「仕事が終わってから学校に通う生活を1年ほど続けたころ、本腰を入れて勉強するために会社をやめようとも考えたのですが、先輩に『3年続けるまでは辞めるな』と諭されて。それで結局、学校の方を途中でやめることになったんです」
 
服飾デザインにより興味を持つようになっていた田仲さんは、入社4年半が過ぎた頃、会社を辞めて服作りに専念することにした。
 
「生活雑貨をデザインするときは、見た目以上に機能や便利さが重視されますが、服はどちらかとえばアート寄り。デザイン面でも自由度が高く、いろんなアイデアを試すことができるので、より面白いと感じるようになったんです」
 
オリジナルブランドを設立し、東京で展示会も行った。
発表した服はほとんどが売れ、順調な滑り出しだった。
 
以前から沖縄に戻ることを考えていたため、実店舗をオープンさせるなら沖縄でと、2012年に東京を後にした。
 
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オーダーする際のデザイン用紙。実際に好みの色を塗ったり、デザインを書き込んでイメージをかためていく。
 
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サンプル生地から素材を選ぶ。縫製の際は、縫い目が目立たぬよう心がけ、生地のふちに近いところを縫っている。
 
田仲さんの作る服はどれも縫製の美しさが印象的で、中でもシャツに施されたステッチの精緻さが目をひく。
 
「ものをスッキリ見せたいといつも考えてるので、縫い目もできるだけ目立たないように縫製しているんです。
ステッチがほとんど見えないよう、工夫したシャツもあります。
生地のキワや縁にかける『コバステッチ』と呼ばれる細いステッチを縫うときは、集中しますが楽しいですね。

 
学生の頃から、既製の服を解体したりしてつくりを学びました。
解体した服から型紙を起こし、他の生地を使って縫ってみたりして。
すると、既製品とそう変わらないクオリティーで作れるのが面白くて。
その頃から、Gジャンの襟だけ付け替えるなど、リメイクもよくやってました。
 
学生時代はダンスをやっていたのでダボダボスタイルが多かったのですが、東京に出たことでモードの魅力を知ったんです。
中でも気に入っていたのが、シャツをメインに展開していた某ブランド。
それも普通のシャツではなく、襟が2枚ついていたり折り目が複雑だったりと、遊び心のあるアイテムばかり。
 
今、シャツを多く作っているのは、そのブランドの影響が大きいと思います」
 
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「シンプルだけど個性もしっかりあるデザインが好き」という田仲さん。
そのこだわりは、カットソーやTシャツにもしっかり表れている。
 
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田仲さんによるブランド「RŪ-JI(ルージ)」オリジナルのアクセサリーも人気。
 
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田仲洋服店では、オーダーメイドだけでなく、お直しやリメイクの相談も受け付けている。
 
「丈を詰めたり、袖や襟などの細部をリメイクしたり、できる限りご協力させていただきます。
スマートに見える服が好きなので、例えばウエストを詰める場合も横幅を詰めるだけでなく、後ろ身ごろに縦のシームを入れるなどして、全体的なラインを整えるよう心がけています。
 
また、こちらがご提案するデザインだけでなく、お客様からのご希望があればゼロからデザインを起こすこともできますし、服に限らず縫製が必要であれば承ります。カーテンの裾上げのご依頼があったことも(笑)。
 
お直しの依頼というのは、服の作り手にとっては嬉しいものです。例えそれが自分が作ったものでなくても、服を大事にしているんだなーという想いが伝わってきますから。
ご遠慮なく、どんなことでもご相談ください」
 
田仲洋服店
 
「いつになるかわからないけれどオートクチュールのブランドもやりたいんです。
また、グッズや小物も作りたいし、帽子も…。
これからの展開が自分でも楽しみです」
と話す田仲さん。
 
ふちギリギリを縫うステッチが好き、お直しも喜んで引き受けるなど職人気質な面を持ちながら、表現がより自由だからと服飾デザインの道を選んだり、個性を忘れぬデザインを追求するなど、表現者としての気概もひしひしと感じる。
 
しかし、田仲さんご本人は至って穏やかな人。
服に対する熱い想いを内に秘めながらも、古き良き町の洋服店のご主人というような雰囲気。
 
住宅街の裏手にひっそりと佇むこの洋服店は、田仲さんのように服を大切にする人が足繁く通い、そして長く愛される店になっていくのだろう。
 

写真・文 中井 雅代

 
田仲洋服店
田仲洋服店
豊見城市字真玉橋131−4
(駐車場多数有り)
TEL,FAX 098-856-1032
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