BARAQUE(バラック)/石垣島は豚も鶏もおいしい。隠れた食材でつくる島のバインミー。

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「石垣島といえば石垣牛だよねってなってますけど、石垣牛に負けないぐらい美味しいものが色々とあるんですよ」

 

石垣島の隠れた食材について教えてくれるのは、島のバインミー屋さんBARAQUE(バラック)のオーナー、田中すみれさんだ。

 

「豚もとっても美味しいんですよ。もろみ豚っていう石垣産の豚がいてですね、泡盛を作る時に出るもろみ液を使って育てられるから、ほどよい脂加減になって臭みも少なくなるんです。もろみ豚以外にも石垣育ちの美味しい豚が色々いるので、それをうちでは本場ベトナムっぽくレバーパテにしたり、オリジナルな感じでつくねや塩豚にしてバインミーに挟んでます。鶏肉もね、石垣黒鶏っていい鶏いるんですよ。元々はフランスの鶏で石垣島で繁殖させてるって感じらしいんですけど、とにかく旨味が濃くってね、蒸した時に違いが分かるんですよ。歯ごたえあって臭みなくって。うちでは、このもも肉を炒り蒸しみたいにしてバインミーに使うことが多いかな。もちろん肉類だけじゃなくって、卵もご近所に有精卵で美味しいの育ててる農家さんがいるので、そこのを使いますし、野菜もできる限り石垣島のものですね」

 

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石垣島サンドとでも呼びたい、選び抜かれた食材がたっぷりのバインミー。ただ、すみれさんがバインミーという形をとっているのは「なんとなく」。フィーリングの産物なのだ。

 

「なぜバインミーかってのは、なんとなく…としか言えないんですけどね。昔、湘南のカフェで働いてた時に、店長からいきなり『バインミーって知ってるか? うんまいんだけど!』とか聞かれて。私ベトナム旅行した時もフォーしか食べてこなかったし、バインミーは食べたことなかったんですけど、なんでかバインミーって語感のインパクト強くてずーっと残っちゃったんですよ。バインミーバインミー…って。まぁグルメな店長が言うなら絶対美味しいはずとは思ったんですけどね。それで、数年後に石垣島に移住してきたんですけど、近くに明石食堂って有名なそば屋あって常に混んでてて、あぶれた人が周りうろうろしてるんですよ。私たち夫婦でそれ見てて、『ここらへん食べ物屋さんないのに大丈夫かねー?』ってなって。『じゃ食べ物屋やる?』『じゃバインミー?』ってスルッと出てきたんですよ」

 

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ひょんなことから始まったバインミーだが、コンセプトはしっかり練りあげられている。バラックのバインミーは本場ベトナムの味とはまた異なる我流バインミーなのだという。

 

「むこうのバインミーにも使われるパクチーやニョクマム、ネギ油とかはちゃんと使って、ベトナムの空気感を入れてはいるんだけども、どちらかといえば日本人が食べやすいように寄せて作ってますね。メニューにしても、レバーパテはベトナムのバインミーにありますけど、つくね、塩豚、フライドエッグ…あとベジタリアンの方向けにレンズ豆のコロッケとか、その時々で私が思いついたものをバインミーにしてる感じですし、本場のとはまた別物だとは思います。それに、むこうのバインミーって作る方も食べる方もお手軽さをウリにしてると思うんですけど、その意味でもだいぶ違ってて、私のバインミーはかなり手間暇かかってますね」

 

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パクチーは別添えで、食べる時に自分で挟み込むスタイル。

 

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左)自家製のパクチーソースと唐辛子オイル。 右)島豆腐ドーナッツ

 

その言葉通り、すみれさんの作るバインミーのレシピはいくつもの工程を要する、手のこんだもの。

 

「レバーパテにしても、初めにタマネギとニンニクをじっくりじっくり炒めて冷まして、そこにレバーを、まずは半量だけ焼き付けてブランデーでフランベして臭み抜くんですよ。それでレバーだけだと単調になるので、味と食感にアクセントつけるために豚コマの部分もちょっと混ぜるんですけど、それからそれを一気に攪拌して、蒸しあげていくんです。塩豚は塩豚で時間かかりますよ。まずは塩を揉みこんで2晩寝かせなきゃいけないし。それでパンに挟む直前に、また20分かけて揚げてってして。仕込みだけでも大変です。だけどパクチードレッシングやネギ油とかも、細かいところまでやっぱり私自身でイチから作りたいんですよね。このへんの妥協は許せなくて」

 

さらにこのバインミー、ボリュームたっぷりだが完食後も胃もたれせずいられるのは、身体への優しさも考えられているから。化学調味料に頼らない味の作り方も、その表れだ。

 

「私のバインミー、パンチ効かせつつも優しく美味しくでやりたいんです。だから化学調味料は使わないです。私自身が妊娠中から化学調味料の味を受け付けなくなっちゃったのもあって。化学調味料使ったもの食べると舌がピリピリきたり胃にきたり、気持ち的にもなーんかザワッとしたり…。まぁ学生時代はマックとか全然行ってましたし、なんならハンバーガーおかわりして何時間もいたんですけどね(笑)。それに、確かに外食でよく使われる、グルタミン酸ナトリウムみたいな旨味成分使えば、ちゃっちゃとパンチ効いたものできちゃうではあるんですよ。値段もある程度抑えられるし。だけど、その後の身体のこと考えたら、そういうのには頼らないでいたいなぁと。いい食材選んで、ちゃんと手間かければ十分にパンチ効かせられますしね。中にはどうしても手作りできない部分もあって、たとえばパンに塗る、バター代わりのショートニングなんかもそうですけど、できるだけトランスファットフリーを選んだり、健やかさ重視です」

 

 

現在バラックは実店舗を設けず、移動販売や注文販売という形態をとっているが、ひとたびイベントに出店すれば、すぐに売り切れ。たまにデリバリーする会社や集まりでも引っ張りだこ。注文しそこねて逃してしまった人たちからは「なんで教えてくれなかったのー!」とがっかりした声が挙がるという。

 

「有り難いことですね。私たち貯金も全然ないし、仕入れとか営業許可とかもう何ひとつ分からないところからのスタートだったんで。元々、私はオーダーメイドでぬいぐるみ作ってて、夫は木工やってて、ものづくりは好きかといえば大好きですけど飲食とはまた全然別のものですしね。でも手探りでもこうやってバインミーやってると、人とのつながりが広がっていくのを実感できるんですよ。地元の方だけじゃなく、観光の方も来てくれるんですけど、そのお友達とか、お友達のお友達までもが『友達にオススメされたから来てみたー』とか、『インスタの写真が美味しそうだったから…』とかって。それに、ここで頑張ってたから、昨夏には新宿伊勢丹でやった石垣島のイベントにも声かけていただいて、参加してきたんです。こんな風に広がっていく感じが、やってて良かったなってところですかね」

 

すみれさんは現在妊娠中だがバインミーへの情熱は留まり知らず。もう新たなバインミーのアイデアも浮かんでいる。

 

「他にも作ってみたいバインミーあります。今だと、魚系はイワシトマト煮のバインミーっていうのを割とレギュラーで作ってるんですけど、せっかく石垣島なので、近海で獲れるミジュンをオイル漬けにしてバインミーにしてみたいんですよね。今はイベントの参加やオーダーとかも体調見つつではありますけど、どんな形でも、うちの自己流なバインミーを『美味しい!』って言ってくださる人たちのために作り続けていきたいですね」

 

 

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