» ばーすぬ家(や)たっぷりチーズがとろける、北部の人気店の絶品ピザを那覇でも。

ばーすぬ家

 

「うちのピザの特長は、惜しみなくチーズを使っていること!」

 

1ピース持ち上げれば、オーナーの恵子さんの言葉にきっと納得する。ふんだんに乗せられたチーズがとろけ、具が流されてこぼれ落ちそうになるのを、もう片方の手で受け止めて口に運ばなければならないから。チーズの濃厚な味わいだけではなく、ふんわりとボリュームのある生地も魅力。

 

「生地はもちろん手づくり。東村大国林道の天然水を使用しています」

 

一口食べたら忘れられないその味わいに、本部町の人気店「花人逢 (かじんほう)」を思い出す人は少なくないだろう。

 

「花人逢は義姉が始めた店。私も4年ほど働いていました」

 

東シナ海を見渡せる高台にある花人逢。緑に囲まれた自然豊かな環境ではたらきながら、「こんなに素晴らしい景色や空気は、都会に住んでいる人にこそ味わってもらいたい」と、恵子さんは毎日考えていた。

 

「じゃあ、あなたが那覇にお店を開いたらいいさ!」

 

義姉に言われた一言に、

 

「・・・そうかなぁ? ・・・そうねぇ」

 

それまではまさか、自分がピザ屋をやることになるとは思いもよらなかったと恵子さんは笑う。

 

ばーすぬ家
花人逢にはないが「私ぜんざいが大好きなのよ!」。氷が溶けても味が薄まらないようにと濃いめに味付けされたぜんざいとふわふわの氷、せんべいのしょっぱさとのバランスが絶妙。「ぜんざいだけ食べにくるお客様もいるくらいよ」

 

恵子さんは自身が経営する美容室で20年間美容師として働いていたが、ともに美容師である長男夫婦に店を譲った。

 

「親としてはとても嬉しかったですね。自分の店を子どもが継いでくれのは最高のしあわせ」

 

そうして、すでに人気店となっていた花人逢を手伝いに行くようになった。

 

「本当に素晴らしい場所にあるんですよね。海も緑もあってすごく癒される。観光客の方で近くに宿をとっていればすぐに来られるけど、那覇のひとたちはそうは行かないでしょう。いつもコンクリートに囲まれて生活している都会の人たちにこそ、気軽にこの雰囲気とピザを楽しんでもらえたら良いのになと思うようになって」

 

5年前の2月、那覇市与儀の自宅一階を改装してに店をオープンさせた。

 

ばーすぬ家

 

ばーすぬ家

 

水だけでなく素材すべてにこだわり、手づくりを心がけている。

 

「できるだけたくさん野菜が摂れるようにサラダはたっぷり。使っている野菜の種類も多いですよ。また、ドレッシング、ピザ、ひらやーちーのタレにはにんにくを使っています。その方が味もいいしヘルシー。みんなに健康でいてほしいからね。もちろん、私もずっと元気で長生きしたいさ(笑)」

 

オリジナルメニューの開発にも余念がない。 
サラダの種類を増やすべく、今年登場したのが「そばサラダ」。

 

ばーすぬ家

 

「サラダに麺類を合わせたくて、うどんやそうめんなど色々やってみたんだけどそばが一番おいしかった。中でもよもぎそばは色合いも綺麗だし、クセもないからサラダにぴったり。湯通しして油もしっかり抜いているから、さっぱりして食べやすいですよ」

 

つるりとしたよもぎそばに、ばーすぬ家特製ゴマドレッシングがマッチ。野菜も山盛りでこれだけで一食分はあろうかというボリュームだ。

 

「アボカドとキウイを足し、まろやかさと甘さを出しました」
ヵい
ばーすぬ家

 

広々とした縁側と庭の緑も見事だ。

 

「お客様を緑で癒してあげたいので、庭づくりや花の世話にも力を入れています」

 

ばーすぬ家

 

「ピザはテイクアウトもできるから、いうなればばどこでも食べられるでしょ?でも、緑を見ながらぼーっとする時間が特に女性にはとても必要だと思うわけ。私もそうだったけれど、みんな色々と大変なことがありますよね。仕事、育児、嫁姑問題、ご主人との関係…。毎日忙しいしつらいことも沢山ある。そういう時にうちにきて、庭を眺めながらおいしいピザを食べて欲しい。ちょっと息抜きをして、また元気になって明日から頑張れるように。だから、ピザはもちろんだけど庭作りにもこだわっているんです。休みの日には日がな一日庭いじりしていますよ」

 

ばーすぬ家
ばーすぬ家

 

「花は必ずいつか枯れるでしょう?その時はいつも声をかけるようにしているんですよ。『ご苦労さんねぇ。長い間私たちを、みんなを癒してくれてありがとうねぇ』って」

 

笑顔が印象的で、まさに花のように明るい恵子さんにもつらい時期があった。ちょうどその頃、仕事の研修でメンタルケアについて学ぶチャンスがあった。

 

「子どもが小学3年生と5年生の時でした。美容室を従業員にまかせて、本土へ1年間勉強しに行ったんです。『子どももまだ小学生なのに、今行くんですか?』とも言われたけれど、今やらなきゃだめだ!って」

 

そこで学んだことが、家庭でも店づくりでも生かされている。

 

「一番大事なのは感謝の気持ち。昔はわじわじーすることも多かったけどね。今はすべてがありがたいと思うようになりましたよ。だから今はとても幸せ。

 

うちの店名は、次男が小学生の頃に野球のコーチに『お前は左利きだから(元阪神の外国人選手の)バースに似てるな』と言われていたので『ばーすぬ家(=バースの家)』と付けました。その次男がいずれこの店を継ぐと言ってくれていて。食品を扱う仕事で全国を飛び回っている次男が継いでくれれば、新メニューも色々できそうですね。これから楽しみです。私は陶芸でもやろうかしらね(笑)」 

 

ばーすぬ家
那覇の住宅街に位置。一歩入ると沢山の花や緑が出迎えてくれる 

 

ばーすぬ家
仲がいいのでいつもお嫁さんと間違われるというスタッフのようこさん(左)と。「本当に良い子で大好きなのよ、息子の嫁にしたいくらい。息子達もようこさんも既婚者だから無理だけどね(笑)もちろん息子のお嫁さん達もとっても良い子よ!」

 

料理の撮影後、おいしさの理由を尋ねてメモをとっていると、

 

「あい! ぜんざいも溶けてきているさ。どうぞ先に召し上がってください、できたてのうちに。しゃべるのはいつでも大丈夫ですから、食べ終わったら声をかけて!」

 

もあい場所として店を利用するひとも多いというが、

 

「うちはラストオーダーが夜8時までなんですけど、夜のもあいだと7時くらいからしか始まらないでしょう?だからそういう時は延長して10時くらいまで開けたりするんですよ」

 

感謝だけでなく、思いやりにもあふれた店。だから居心地が良い、だからひとが集まる。庭の緑だけではない。恵子さんの思いやりに、そして優しさのこもった料理に私たちは癒される。

 

写真・文 中井 雅代

 

ばーすぬ家
那覇市与儀2-12-19
098-855-7097
open 11:00~21:00(ラストオーダー20:00)
close 火曜、第4月曜