Chicco Tacco(チッコタッコ)二軒目、三軒目に流れなくても良い、妥協ナシのバル

Chicco Tacco

 

美味しい食事と美味しいお酒は、切っても切れない仲。
チッコタッコで一番人気だという「スモークの盛り合わせ」には、豚バラ肉、鶏もも肉、鴨肉、うずらの卵のスモークの4種類が並ぶ。スモーク独特の香ばしい匂いとともに口に入れれば、ハーブのしっかりした味わいが想像以上の柔らかさで広がっていく。よく燻されていて豚バラの脂っこさや鴨のクセも全く気にならず、肉の旨みとハーブの芳しさだけが留まる。

 

「燻製はあえてスモーカーという機械を使わず、普通に調理用の鍋で燻して作っています。その方が火加減を自分の感覚で調節できるから」

 

この絶妙な塩加減はお酒を誘う。そしてお酒が進めば、食も進み、食が進めばお酒も…というスパイラルを予感させる。

 

「『今日は車で来たから食事だけ…』と来店したお客様でも料理を一口食べてみて、あっさり代行を頼まれるってこと、よくあるんです」と、お店を営む田野尻太志さん・香織さん夫妻が微笑む。

 

Chicco Tacco

 

沖縄県産紅芋のニョッキは、紅芋の甘みとクリームの優しい味に温もる。そしてクリームに浮かぶのは、これも沖縄産であるアオサ。アオサの磯の香りがアクセントになり、芋とクリームという組み合わせもぼやけることなく、面白い味わいに。ニョッキの弾力ある歯応えも楽しい。

 

「沖縄県産のものを使っているので、旅行客の方にも喜ばれる一品です。久茂地で駅近という土地柄か、旅行や出張で来たというお客様も多いですね。ある旅行客の方が『沖縄名物じゃあないけど、ここでしか食べられない美味しいものに出会えた!』と2日連続で来店されたこともありました」

 

Chicco Tacco

バーニャカウダ。1~2人用のSサイズと3~4人用のLサイズあり。

 

 

料理を受け持つ、香織さんが言う。

 

「お酒と相性の良いことを一番に考えて、メニューを決めています。味付けも、食材の旨みをしっかり引き出してお酒が進むように、でも決して濃くはならないように、その匙加減に気を配りますね」

 

バルっぽく黒板に書かれたメニューを見れば、香織さん一人で受け持っているとは思えないぐらい、豊富な品数が目に飛び込んでくる。バルらしい、牡蠣のオイル漬けや生ハムのアンチョビポテトといった、まさにお酒の進むメニューはもちろん、ホホ肉の煮込みや日替わりの鮮魚料理など、レストランのようなメニューもあり、パスタだけでも数種類。おつまみだけでなく、きちんとした食事もとれるようになっているのだ。

 

「この値段で、こんなものまで食べられるなんて!という満足感も大事にしています」と言う通り、全体的にリーズナブルな印象も受ける。

 

Chicco Tacco

スモークなどの人気メニューや、ハーブティーの茶葉などはテイクアウトもできる。店内だけでなく、那覇の新都心にある「Tous les jours du vin」でも購入可能。

 

 

Chicco Tacco

 

料理を担当する香織さんは、お店を持つ前から14年間、ずっと料理一筋でやってきた。

 

「姉が1人いるのですが、その姉と一緒に小さな頃からクッキーやケーキを作っていくうちに料理にも興味が出てきて。調理の専門学校を出てからは、いろんなレストランや飲食店などでイタリアン、和食、フレンチ・・・中華以外は全て一通りやりました。その中でも素材を活かして作り上げるシンプルなイタリアンが自分に合っている気がします。でも、美味しいものはジャンルに囚われずに、どんどん取り入れますよ。例えば、このパテも『パテ・ド・カンパーニュ(田舎風のパテ)』という風にフレンチの要素を入れています」

 

気負いなく話す香織さんからは確かな自信が感じられる。

 

Chicco Tacco

 

Chicco Tacco

 

「美味しい料理はもちろん、飲み物や空間にも、全てにこだわって店を作りました」

 

Chicco Taccoは、イタリアンを中心とした洋食を美味しいお酒とともに楽しめるお店だ。バルのような気軽さとカフェのようなくつろぎやすさの両立を目指した。20人も入ればいっぱいになってしまう、こじんまりした規模だが、訪れた人は思い思いのスタイルでゆったりと楽しむ。

 

太志さんは言う。

 

「店名の横にEspresso&Wineと付けたのは、『料理やワインはもちろん、最後に飲むエスプレッソまで、全てがきちんと美味しいです』という意思表示なんです」

 

傍らの香織さんも言葉を足す。

 

「それに、夫婦2人だけでやっているので、入れ替わり立ち替わりで大勢の人に来て頂いてもちゃんと対応できるかどうか・・・。それよりは少ないお客様でもいいから、おつまみからスイーツまでじっくり楽しんで頂いて、『最初から最後まで美味しかったよ』と言ってくださる方が嬉しいですね」

 

Chicco Tacco

 

実際にお店では、コース料理ではなくとも、開店から閉店までゆったり過ごすお客さんもいるという。

 

楽しく飲んでいても、メニューや時間制の関係でやむを得ず二軒目へと流れなくてはならないことは多い。それでも、なかなか良いお店を見つけられず彷徨ったり、味や雰囲気でハズレを引いたりして、良かった一軒目のお店の記憶までが霞んでしまうこともある。美味しさや雰囲気の良さは先刻承知の場所で、ゆっくりと腰を落ち着けて楽しめるのなら、本当はそれが理想なのだ。

 

Chicco Tacco

 

設計や塗装などは全て、機械科を卒業し製図の知識もある太志さん自らが手がけ、イスやテーブルはもちろん、果ては照明のソケットひとつに至るまで太志さんが東京や沖縄、時にはオークションも使って、探し集めたものだ。

 

「どこにもないお店にしたくって。僕は中学生の頃から、流行っていればとりあえず乗ってみるなんてことが嫌で嫌で。ここも、イスの高さからドアの色まで全て自分で考えて作り上げました。店名の『Chicco tacco(チッコタッコ)』は僕の故郷、鹿児島は枕崎の言葉で「ボタンのかけ違い」という意味で、拡大解釈して「ちぐはぐ」のような意味で使っています。こだわりつつも、どこかちぐはぐな印象になるように意識しました。ワインのお店と言うと、敷居の高い気取ったお店を連想されがちなので、あえて雑多な感じにして、気軽にくつろいでほしいと思ったんです」

 

Chicco Tacco

 

訪れた人と自分達の、適度な距離感を保つためにハイカウンターにしたり、席と席の間に衝立を作って個室風にしたりと工夫を凝らす。カウンターにはパソコンを充電しながら使えるように各席にコンセントも設置され、仕事帰りにメールチェックしながら一杯という、おひとりさまも来やすい雰囲気だ。

 

「デートや女子会で使う方もいれば、ふらっと一人で来る仕事帰りのサラリーマンの方もいますね。お店を持つ前から、沖縄には居酒屋やバーは多くても、1人で料理とお酒を楽しめるお店が少ないかなと思ってたんです。あと『1名です』と言うと、店主がカウンターの中からあれこれ話しかけてきて…ということが多くて。僕もシャイなので分かるのですが、それだと逆に気を使って落ち着けない方もいると思うんですよ。そういう方にもじっくりと料理やお酒を堪能してほしいので、おひとりさまの居心地の良さにもこだわって作りました。…あ、もちろん話しかけれれば喜んでお答えしますよ」

 

Chicco Tacco

 

他ではあまり見かけないものを厳選したというワインは、常時20種類が揃う。リストに載っていないものもある。
「ハンガリーのフルミントの物とか、ちょっと面白い物も扱っています」

 

ワインについて話すと、太志さんの目がこの日一番の輝きを見せる。

 

Chicco Tacco

 

「ワインは難しさが面白さであり、僕も日々勉強です。大まかに分ければ赤・白ですが、産地やブドウの品種、年度、日照時間によって、味がこうまで変わるのか!という個性の奥深さにハマりますね。お客様からの『パテに合うものは?』、『辛口過ぎないもので・・』といったご相談にも喜んで乗りますし、何度か通ってくださるお客様には、僕の方から『こんなワインはいかがですか?』と話しかけたりもします」

 

それは太志さん自身にも、ひとから良いワインに引き合わせてもらった、嬉しい体験があったからだ。

 

「僕も、ある人に『これ、太志さんが好きだと思うよ』とケヴェルツ トラミネールの物を勧められたことがあるんです。辛口ですが甘みもあり、フルーティで、魚だけでなく肉にも合いそうな美味しさで、今もよく飲んでいます。それに『よく僕の好みが分かってるな』と嬉しくて嬉しくて…。自分のために作られたのでは?と思える一本に出会えるのがワインの醍醐味だと思うので、僕もそんな喜ばれる提案をしていきたいですね」

 

またドリンクはワインだけでなく、カクテルも主な種類は全ておさえてあり、ビールも一種類ある。

 

「あれこれ試しましたが、料理の味を引き立ててくれる素直な味が気にいって、ハートランドを置いています。お酒はビールしか飲まないという方でも、ビールに数種類のおつまみという風に楽しんでいかれますね」

 

もちろんノンアルコールビールや食事に合うハーブティーなども豊富に置かれている。

 

Chicco Tacco

 

Chicco Tacco

 

店名にも冠したエスプレッソは、京都の老舗である小川珈琲の豆を使って出している。これをバリスタでもある太志さんが一杯ずつ丁寧に淹れていく。

 

太志さんは、日本中のバリスタ達が腕を競う「ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)」で上位入賞したバリスタから直に珈琲について教わった。要望があればラテアートも施してくれる。

 

エスプレッソにも手を抜かないどころか、エスプレッソだけでも充分にこだわり抜いている。お店をカフェ使いする人もいるというのが納得だ。

 

Chicco Tacco

 

苦味も酸味もきちんとあるが、不思議と爽やかな味わいになっていて飲みやすく、重くない。香りの高さと合わせて、珈琲を飲んだという満足感でいっぱいになる。カフェラテやカフェモカなど、テイクアウト可能なカフェメニューもある。

 

さらに、スイーツのメニューには、自家製で7種類ものスイーツが並ぶ。『濃厚チーズケーキ』『紅茶のクレマ・カタラーナ』『ブルーチーズのケーキ』『季節のシフォンケーキ』『しっとりガトーショコラ』『ティラミス』『アイスのアフォガード』…この豊富なメニューは香織さんの心遣いによるものだ。

 

「私自身も、友達と楽しく飲んでいて、せっかく『よーし、最後スイーツも頼もっか!』って盛り上がったのに、『メニューにシャーベット1~2種類しかないね…』『お店変える?』『うーん…』ってことが結構あるんです。それじゃ寂しいので、ウチは最後の最後までちゃんと楽しんでもらえるように、たくさん作ってあります」

 

Chicco Tacco

 

Chicco Tacco

 

お店をオープンして、1年あまりが過ぎた。

 

「この1年は内装や営業時間など変更に試行錯誤の連続でした。つい最近まで、ドアの色をもっとしっくりくるようにと何度も塗り直していたり…。ランチ営業をどうしようか考え中だったりします。でもお客様の反応を見ながら色々と試みるのが楽しくもありますね。今はメニューに私が好きな内臓系のものを取り入れようかな、なんて思ってます。でも内臓系を増やし過ぎちゃったら・・・ますますどこにもない場所になりますね」

 

夫婦ともいたずらっぽく微笑む。

 

Chicco Tacco

 

Chicco&taccoならば、二軒目、三軒目に流れなくてもいい。ゆっくり食事とお酒を楽しんだ後も、美味しいエスプレッソとスイーツで、そのまま夜を素敵に終えられる。そんなお店は意外に少ないし、確かにどこにもない場所なのかもしれない。

 

文 石黒万祐子

 

 

Chicco Tacco
Chicco Tacco (チッコタッコ)
那覇市久茂地2-17-18 1F
098-869-0017
18:00~24:00(L.O 23:00)
HP http://chicco-tacco.info