HYGGE(ヒュッゲ)/玄米のプチプチ食感がクセになる、引き算ドーナツ

hygge-34

 

見た目は素朴な、なんてことない焼きドーナツ。でも、噛むとプチプチとした歯ごたえを感じる。これ、なんだろう? 

 

ドーナツって外側と内側の食感の違いはあるけれど、生地自体は平坦なイメージ。HYGGEドーナツのプチプチは、注意深く味わわないと見逃してしまいそうに繊細。けれど、歯ごたえのアクセントになっていることは確か。そして、噛めば噛むほどじんわりと感じられる自然の甘みに、笑みがこぼれる。

 

シンプルで素朴、ムダなものを削ぎ落としたプレーンのドーナツ。つぶつぶの正体を突き止めたくて記憶を探っているうち、あっという間に1個たいらげてしまった。

 

焼きドーナツの店 HYGGE 店長の石田環(めぐる)さんが、つぶつぶの正体を明かしてくれる。

 

「それは玄米粉なんですよ。北海道産小麦と伊江島の全粒粉、それに秋田のお米“あきたこまち”などの玄米を粉にしたものを混ぜています。噛めば噛むほど感じられる甘みは、玄米の甘みなんです」

 

HYGGE

 

自然で優しい甘さは、後に残らず丁度いい。玄米粉の入った焼きドーナツなんて初めてだ。奥様の聖美さんが、それを入れるに至った理由を教えてくれた。

 

「お米農家の友人がよく言ってたんです。『唐揚げでもなんでも、小麦粉じゃなくて玄米粉使うと美味しいよ』って。それを思い出したのと、普段家でも玄米を食べているので、馴染みのある食材だったというか」

 

環さんが言葉を続ける。

 

「色々な粉を全国から取り寄せて、どんな組み合わせ、分量にするかは苦労しました。でも、玄米粉を入れるっていうポイントっていうのかな、それが決まってからは、ドドドと出来上がりましたね」

 

hyugge

 

この焼きドーナツを作りあげたのは、なんと環さんだ。グラフィックデザイナーの環さんは、これまでお菓子作りなんてしたことがなかった。そのきっかけは、一粒種の息子さんが生まれたこと。

 

「息子が3歳くらいの時かな、妻がスコーンを焼いてるのを見て、自分が子どもの頃はドーナツが好きだったってことを思い出したんです。息子のために、生まれて初めてドーナツを作ってみたんですよ」

 

出来栄えは、「中まで火が通ってなくて、生揚げっぽいし、油っぽくて、全然美味しくなかった」と聖美さん。美味しくなかったのは、環さんも認めるところ。けれど息子さんだけは反応が違ったそう。

 

「『お父さんのドーナツ、うまいうまい』ってパクパク食べてくれたんですよ。嬉しそうに笑ってもくれて」

 

hygge

 

その笑顔を見て、環さんのスイッチが入った。

 

「デザインを始めた頃によくやっていたのは、いいなと思ったものをきっちり真似して作ってみることだったんです。雑誌の誌面だったら、ここの余白は何ミリで、行間は何ミリ、文字の大きさはこれで、みたいに。真似しているうちに、自分だったらこうしたいっていうのが出てくるんですよね。ドーナツ作りでも同じでした。最初はレシピ本通りに作ったんです。そしたら、こんなに砂糖や色々なものを入れるのかとかわかって。そのうち、玄米粉を入れるオリジナルに行き着いたんですよね」

 

HYGGEのドーナツは、どんどん引き算をしていくのがその特徴。

 

「玄米粉を入れることで、甘みが出たんで、砂糖をギリギリまで減らしました。甘さを感じるのと頼りないの、ギリギリのところ。僕のデザインも、どんどん余分なものを省いていくことが多いんで、ドーナツと同じですね(笑)」

 

HYGGE

 

フレーバードーナッツの具材の量も、必要最小限。

 

「バレンタインやクリスマスなど、期間限定でチョコレート味を出すんですけど、あんまりチョコレートチョコレートするのもなあと思って。子どもが食べるものですし。生地にチョコレートを少し振りかけてから焼くというスタイルになりました。試作していた時は、生地にチョコレートを混ぜ込んだり色々してみたんですけど、これくらいがちょうどいいなと」

 

HYGGE

 

定番の味はいさぎよく4種類。「プレーン」「くるみ」「チェダーチーズ」に「玄米」。ドーナツ専門店にしては、ちょっと少なめに感じる。

 

「ドーナツの種類がなぜこれしかないのかというと、うちの息子の反応がよかったのを厳選したというのもありますけど、毎日食べても飽きのこないもの、優しい味のするものっていったら、これくらいになってしまって。チェダーチーズは塩気が少ないものを選んでいます」

 

チーズの塩気が控えめに香ったり、くるみがカリリと小さなリズムを生んだり。いずれも、プレーンとの違いはあるものの、あくまでも生地の美味しさが前提にあって、具材でその生地にちょっとした変化をつける程度。シンプルだからこそ、各々が好きなようにアレンジして食べられるのも、楽しみの1つ。

 

「そのまま食べてももちろん美味しいと思いますど(笑)、甘さが足りないという方は、はちみつをかけたり、ジャムをつけたり。もうちょっと変化が欲しいという方は、ヨーグルトを添えたり。お客さんがお店に来て、こんな風に食べたよって報告してくれるのが嬉しいですね。うちでもチェダーチーズのドーナツは、ベーグルみたいに半分に切って、間に野菜や卵、ソーセージなんかを挟んで食べています」

 

hygge-3456

環さんは編集者である聖美さんとともに、studio BAHCOとして、クリエイティブな活動も継続中。

 

息子さんの笑顔が見たくて焼き始めたドーナツだったが、お店にしたことで、息子さんに見せたい姿を見せることもできた。

 

「いつも家にいてパソコンの前に座っていて、息子には僕が仕事しているとは思われてなかったんじゃないかな。でもこの場所を借りて、ドーナツのお店にしようと決めてからは、息子と一緒に壁にペンキ塗ったりして、働いてる感じの姿を見せられたんです。だから、ほんとこの店始めてよかったなと思いますね」

 

息子さんの笑顔が見たい、息子さんとの思い出を作りたい。環さんの息子さんへの愛情が、HYGGEの原点。

 

「お父さんとお店作りをした、お父さんのドーナツが美味しかったってことが、少しでも彼の記憶に残ってくれたら嬉しいですね」

 

3人で手を繋いだ姿をモチーフにしたお店のマーク、息子さん等身大のヒュッゲ坊やの看板、優しさの詰まったシンプルドーナツ…。全て環さんが愛情を込めて作ったもの。このお店、このドーナツが懐かしく記憶に刻まれるのは、息子さんだけではないはずだ。

 

写真・文/田中えり

 

hygge-3404

 

HYGGE(ヒュッゲ)
宜野湾市大山2-23-1(ジミー大山店駐車場向かい)
090-1947-0002
12:00〜18:00(売り切れ次第終了)
close 日・月(火・不定休)
https://www.facebook.com/HYGGEokinawa/?fref=ts