イカライスベンダータコライスが進化?!ヘルシーなジャンクフード「イカライス」のはじまり、はじまり。

イカライス

 

イカライス

 

初めて聞く、イカライスという名前。つい海のイカを思い浮かべてしまうが…。

 

「タコライスからのイカライスだよ。顔に『?』付いてるお客さんには、『タコライスにタコが入っていないように、イカライスにもイカは入っていません』ってところから説明するよね。僕の夢の食べものなんだけど、みんなにも面白がってもらえたらいいなぁ」

 

そう言うのは、イカライスベンダーの池城安司さん。出てきたイカライスは、確かにタコライスに似た形ながら彩りはずっと淡く、優しげ。スプーンを入れると、グリーンカレー風味の挽肉と野菜、チェダーチーズ、ターメリックライスが一度に載ってくる。ボリュームの割に繊細な味わいだ。

 

イカライス

添えられたシークヮーサーを絞れば、より一層すっきり。辛いのが得意な人はカウンターにある自家製ピリ辛オニオンピクルスを足してもいい。

 

「タコライスもグリーンカレーも僕大好きでさ、両方いっぺんに食べられないかなっていう夢みたいな、思いつきから始まったの。タコライスってジャンクフードだけど、ジャンクって凄いよね。手軽に食べられるし満腹になるし、一度食べると一生いいわってなるのに、しばらく経つとまた食べたくなるし。だからタコライスのいいところはそのまま持ってきて、グリーンカレーも入れちゃって、しかも、たくさん食べても胃もたれしないヘルシーなものを作れればなぁと思って」

 

好物ふたつをくっつけてしまうという斬新な発想。さらに、ジャンクだがヘルシーという、矛盾するような要素を併せ持つのもまた新しい。そんな安司さんの夢を形にしたのは、弟の池城安信さんだ。安信さんは那覇市内でピパーチキッチンというカフェも営んでいる。沖縄県産の食材を多く用いたごはんが評判のお店で、ヘルシーな料理は得意技といえる。

 

「イカライスは、タコライスっぽくグリーンカレー風味でって決まってる枠があるから、その中で工夫してヘルシーさを作りこむ感じかな。肉は鶏肉を使っています。ヘルシーだし、グリーンカレーとも合うんで。タコライスもレタス入ってますけど、イカライスにもサニーレタスとかレッドキャベツとか旬の野菜をたっぷり載せてます。もうこの部分はサラダ食べるみたいな量ですよ。それにナッツも玉ねぎのピクルスも加わるから結構な食材数でしょ」

 

イカライス

 

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食材の量とバランスでジャンクをヘルシーに。だが、安信さんはヘルシーでありつつも、イカライスらしいシャレの効いたところは崩したくないと言う。

 

「ただね、これトマトはあえて入れないんです。なんでかっていうと、味も彩りも分かりやすくなりすぎちゃうから。タコライスに寄りすぎるというか。トマトはない方が、『えっイカライス?何なの?』ってまま面白さが消えないと思うんで。こういう分かんなさ、謎の部分を楽しんでほしいです」

 

イカライス

 

イカライス

 

ひとつひとつこだわりを語る口調は穏やかで朴訥ながら、料理人としての自信が滲みでる。そんな安信さんが最も心を砕いたのは、イカライスの料理としてのまとまりだ。

 

「一番むずかしかったのは、上の具材とごはんに一体感を出すこと。タコライス食べてて、たまにバラバラに感じる時ないですか?ごはんだけ浮いてるなみたいな。イカライスも初めそうだったんです。だから全ての味を一度に味わえるように、ごはんそのものにターメリックとぬちまーす、ピパーチで味を付けました。そもそもごはんはテイクアウトしても美味しいように水分量にすごく気を使ってふっくら炊きあげてるけど、白米だとどうしても味がまとまらないから塩気をつけた。そうしたら一体感、出ましたよ。ただ、今度は食感があっさりしちゃうからピーナッツを砕いて載せてアクセントにしました。エンターテイメントな感じが出たんじゃないかな」

 

イカライス

テイクアウトもOK。

 

もっとヘルシーに、もっと面白く。ジャンクフードといえば、作る側もさくさく作っては出すイメージだが、イカライスは小さなところから作りこまれて今に至る。味わいも繊細で、なんだかジャンクフードのくくりは軽々と飛び越えてしまったようにも感じるが、それには安司さんが首を振る。

 

「いや、やっぱりタコライスに対してのイカライスって位置からは動きたくないんだよね。あくまでシャレのノリで。味の工夫は弟に任せてて、僕なんかは『イカライスとイカスライス、どっちが言いやすいかなぁ』とかそういうことばっか考えてたんだけど、これが例えば鶏挽き肉のアジアン風プレートとかグリーンカレー丼みたいな名前だったら、わざわざお店持つ意味ないんだよ。ヘルシーにもこだわってはいるけど、やっぱり一番の武器は今までにない新しいジャンクフードってことだから、それを楽しんでほしいな」

 

イカライス

 

イカライス

 

安司さんはイカライスベンダーという、新しい発想を楽しむための空間についても語る。

 

「イカライスベンダーのベンダーは屋台っていう意味なんだけど、ここニューヨークの屋台っぽい空気でやりたいの。少し前に流行ったエッグベネディクトとかチキンオーバーライスとか、新しくて面白いレシピってだいたいニューヨークの屋台から出てくるんだよ。ここもイカライスの次は、極端な話アイスクリームライスとかでもいいわけ。そういう新しいものを面白がる場所としてありたいんだよね」

 

イカライス

 

進みだした、イカライスという夢。その夢はさらに広がるばかり。

 

「オープンしてから半年くらいだけど、初め『イカライス?』って半信半疑の顔だった人が美味しそうに食べて、何回も来てくれるようになった時は嬉しかったよね。イカライスもタコライスみたいに愛されていきたいなぁ。理想は、もう赤の他人がそこらにイカライス屋を出しちゃうような状況だよ。タコライス屋って沖縄のいたるところにあるでしょ。究極を言うと、もうレトルトパウチでイカライスが発売されるといいよね。そこまでいくと、おぉ馴染みきったなって。パクられてる?全然いいよ。独占欲なんてないよ。だって、もしそうなったら、ここは看板に“元祖”って書いとけばいいだけだからさ(笑)」

 

フライヤーに書かれた「イカライス、イカが?」という誘惑の文字。ふたつ返事で飛びついてしまう。堪能した後も、ジャンクフードにありがちな胸のむかつきなどなく、満足感だけが残ると知ってしまったから。そういえば、タコライスも元々は南米のタコスから出てきた食べ物。タコスからタコライスが生まれ、今、イカライスが生まれた。見届けたい、イカライスがここ沖縄の新たなソウルフードになっていくさまを。

 

文/石黒万祐子

写真/金城夕奈

 

イカライス
ICARICE vendor(イカライスベンダー)
沖縄県浦添市勢理客4-13-1 結の街1F
080-8553-1303
OPEN 9:00~17:00
CLOSE 土曜
駐車場有り
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