古民家cafe喜色-Kiiro-おばあの家へ遊びにきたような、気安さとおもてなし。ご飯のすすむ、ちょっぴり甘めの口福御膳

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「ほんとはすごく人見知りなんです。それを克服じゃないけど、なるべく自分からお客さんに声をかけますね」

 

人見知りとは全く思えないほど、明るい笑顔で親しげに話してくれるのは、“古民家cafe喜色”店主、喜納朱里(きな あかり)さんだ。朱里さんは、「なんか見覚えのある顔」と思ったらすかさず声をかけるし、そうじゃなくてもきっかけを見つけては言葉をかける。

 

「本土のお客さんが『実は去年も来たんだ。今年も来れたよ〜』と応えてくださったり。観光客の方だったら、例えば『沖縄で何食べました?』って聞いて、お客さんが行きたがっているところのことを教えてあげたりしますね。沖縄の方だったら『沖縄の味、懐かしいんじゃないですか』って話しかけたり。大したことはしていないんですけど、何かお客さんの思い出になればいいなと思って」

 

話しかけるだけでなく「これ、ちょっと作ってみたんで」とか「隣のおじいが持ってきてくれたんで」と、テーブルに小皿や果物などを差し出してくれる。朱里さんのおもてなしは、自身のお祖母様を幼い頃から見てきたからかもしれない。

 

「そういえば私のおばあも、もてなし好き。子供や孫の好きな料理を覚えていて、いつも冷蔵庫や冷凍庫にストックしておいてくれるんです。行ったら、『アンタ、これ好きだったでしょー?』って、カメーカメーしてくれる。私が東京から帰省した時なんかは、大好物のコロッケを沢山作ってくれました」

 

築70年の古くて雰囲気のある琉球古民家、朱里さんの心のこもったおもてなし…。古民家cafe喜色には、おばあの家に遊びに来たような居心地の良さがある。

 

古民家cafe喜色

 

おもてなしの気持ちは、一番にお料理に表れる。看板メニューの“喜色御膳”は、優しい心遣いに溢れたものばかり。

 

例えば、ご飯に乗せられた佃煮。肉や野菜はもちろん、海藻や豆類など栄養バランスのよいおかずがたっぷりあって、ご飯にもうっすらと味が付いているのに、更に手作りの佃煮が乗っていることに、じわりと嬉しさがこみ上げる。パパイヤチャンプルーには、目を見張るほどたっぷりの昆布が。出汁をとった後の昆布の始末かと思ったが、そうではない。チャンプルー用だけに昆布をたっぷりと使っている。島豆腐をあぐー豚で巻いた肉巻きなど、どのおかずも、ほっこりと優しい甘さを含んでいて、箸を口に運ぶ度に癒される。

 

古民家cafe喜色

ご飯は、沖縄のスーパーフード、サトウキビの繊維を発酵させて粉末にしたものを混ぜて炊いた、サトウキビご飯。黒糖の香りがほんのり漂う。

 

古民家cafe喜色

前菜3種に、このお重、ゆし豆腐のつく喜色御膳。ゆし豆腐は自家製で、ふんわりと柔らかく、特にファンが多い。

 

「あえて甘めにしているわけじゃなくて、元々のうちの家庭の味に近いかも。『ここのご飯を食べると元気になる』とわざわざ疲れている時に来てくださるお客さんもいますね(笑)。佃煮はうちの定番で、国産大豆を出汁で固めに炊いて、じゃこと島野菜のンスナバーで煮た佃煮です。うちで『ご飯と合うよね〜』って食べているので、お店でも、ご飯がいっぱいすすむようにと乗せました(笑)」

 

喜色のご飯は、喜納家の味。お料理を作るのは、朱里さんのお母様の末子さん。末子さんは長年、老人福祉施設で調理を担当してきただけあって、その味の優しさに納得した。

 

古民家cafe喜色

朱里さんの手作りケーキ、紅いもタルト。食器は、地元の古我知焼(こがちやき)

 

古民家cafe喜色

同じく朱里さんの手作り、泡盛にコーヒー豆を漬けた自家製のコーヒー・リキュールを使ったチーズケーキ

 

朱里さんは「せっかくここまで来てもらったんだから」と何度も口にする。カフェ喜色があるのは、観光客で賑わう古宇利島の手前に位置する屋我地島。この島は通り過ぎるだけの人が多い。朱里さんの言葉は、わざわざやんばるまで来てくれたという思いと、わざわざこの島に立ち寄ってくれたという、お客への感謝の気持ちから出てくるもの。

 

「オープンして約4年になりますけど、オープン当初はいわゆるカフェご飯で、ハンバーグとかの洋食を出していたんです。でも、せっかくここまで来てくれたんだからと、地元の食材を使う今のスタイルに落ち着きました」

 

料理を運ぶ朱里さんが、食材などの説明をしてくれるので、いかに地元のものを多く使っているかがわかる。屋我地島産の海ぶどうやもずくを使い、はちみつが取れる時期には、そのはちみつでケーキやパフェを作る。あぐー豚は、朱里さんの同級生が育てる羽地産だ。どれもメニューありきで食材を探すのではなく、生産者とのご縁がまずあって、その食材を使わせてもらうというスタイル。

 

古民家cafe喜色

 

古民家cafe喜色

 

「たまたまお店始める前に、久しぶりに同級生に会って『あぐーを育ててる』って話を聞いて。だったらそのあぐーを使わせてもらいたいねって、メニューを考えました。はちみつも、この島で養蜂をやっている三浦さんが、たまたまうちに食事に来て『実は養蜂やってて、はちみつができたんです』って持ってきてくれて。すごくおいしかったので『ぜひ使わせて下さい』って。人とのつながりってほんと大事だなって、お店を始めてからますます思いますね」

 

地元のものを多く使うのは、地元への恩返しと朱里さんは言う。

 

「この島の人に本当に助けてもらってるんですよね。ご近所さんが、この店を知り合いに紹介してくれたり、お店がわかりづらい場所にあるので、迷ってるお客さんを案内してくれたり。島の小学生が、自転車で連れてきてくれたりもするんです。お隣さんが『パインができた、野菜ができたから使って』って持って来てくださったり。本当に皆さんにお世話になってるので、屋我地の発展に少しでも貢献できたらと思いますね」

 

古民家cafe喜色

 

地元に根ざした店でありたいと同時に、小さくやっていけたらいいと微笑む。

 

「例えば席数を増やして、お客さんいっぱいで対応が手薄になって、残念な感じで帰ってもらうよりは、小さいながらもきちんと目配りして、お客さんに満足して帰ってもらいたいです。家族でやっている小さなお店ですから。おばあの家、親戚の家に来たみたいに、ゆっくりしてもらえれたら嬉しいですね」

 

朱里さんは、一人ひとりのお客を大切にして喜んでもらいたいという思いを、店名にも込めた。

 

「お店の名前の由来になっているのは、“喜色満面”っていう四字熟語なんです。自分も相手もみんなが笑顔に、幸せになるっていう意味で。うちの名字が喜納なので、“喜ぶ”という字は入れたいねって。自分の名前についてなんとも思ってなかったんですけど、内地にいたときに『喜びを納めるってすごいいい名字だね』って言ってもらったことがあって。それで名字の一文字を入れようと思ったんです」

 

喜納さんちの喜色満面の口福御膳。手作りのお料理の優しさだけではない、朱里さんと交わす楽しい会話も、喜色での忘れがたい思い出になるに違いない。

 

写真・文/田中えり(編集部)

 

古民家cafe喜色

 

古民家cafe喜色-Kiiro-
名護市饒平名19
0980-52-8126
open 11:00〜18:00(LO.食事はなくなり次第終了)
close 月・火
https://www.facebook.com/kominnka.cafe.kiiro/?fref=ts