LE VILLAGE(ル・ヴィラージュ)ソバ粉100%の生地で作る、フランスの郷土料理「ガレット」。

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こんがり焼けたガレットの生地から漂う香りに、「わっ、懐かしい!」と思わず声が出た。なぜだろう?

 

「生地は、そば粉100%でできているんですよ」

 

いわゆる「蕎」の匂いではないが、どことなく和を感じさせる、繊細で身近な香り。

 

生地を適当な大きさにナイフで切り、具材とともに口に運ぶ。
新鮮でみずみずしい野菜と、パリっと焼けた生地がよく合う。
添えられた目玉焼きの黄身をつぶして生地とよくなじませるのが、オーナー・宮城美生さんおすすめの食べ方だ。

 

「ガレットの生地と黄身って相性抜群で、私大好きなんですよ」

 

 

ガレット同様、大皿からはみ出すほど大きなクレープは、生地のもっちり感が特徴的だ。

 

「オーダーを頂いてから生地の材料を混ぜ合わせています。そうしないと、どうしても生地がだれてしまうんです。」

 

たっぷりと乗せられたイチゴは「あまおう」。
キンと冷えた甘酸っぱいイチゴと、もちもちしたクレープ生地がよく合う。

 

ガレットもクレープも、同じプレートを使って生地を焼く。

 

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「当店では生野菜をふんだんに使ったり、ハンバーグやチキンを乗せるメニューもあるため、皿の上で盛りつけることもありますが、一般的にガレットは、プレートの上で工程が完結するんです。
生地を流して、焼いて、具を乗せたら皿の上にドン! はいどうぞ、というのがフランスでのやり方。すごくお手軽な料理なんです」

 

いわば、フランス版鉄板焼きというところか。

 

食べ方にも作法はない。もともと、屋台で気軽に購入できるカジュアルな食べ物だ。

 

「上に乗せる具材にも特に決まりはありませんが、フランスではチーズ、ハム、卵が一般的です」

 

ガレット発祥の地と言われるフランス・ブルターニュ地方では、寒さに弱い小麦の栽培が困難なため、代わりにソバを生産していると言う。
フランスとソバ。なかなか結びつかない両者だが、皿の上では違和感なく融合している。

 

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ガレットの魅力はおいしさだけでなく、栄養価の高さにもある。

 

「ビタミンB1や良質なタンパク質、さらに動脈硬化を予防するルチンを多く含む、ヘルシー食材なんです。
日本では、修行僧らが行脚するときにそば粉を携行し、食事の際はそれをお湯や水で溶いた『そばがき』を食べます。つまり、それだけで食事として成立するほど、栄養が豊富であるということではないでしょうか。

 

また、そばを食べたあとに『そば湯』を飲みますよね? あれは、そばを茹でる際に水溶性の栄養分が湯の中に溶け出してしまうから。ゆで汁を飲んで、その溶け出した栄養を補給するという目的があるんです。

 

一方ガレットは、溶いた水も一緒に焼き上げますから、栄養分はそのまま中に入っています」

 

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飲食とはまったく関係のない仕事に長年従事していた美生さんが、店を開こうと決意したきっかけは、庭にある大きなガジュマルだ。

 

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「この物件と『出逢っちゃった〜』という感じでしたね。
賃貸契約を結んだ後すぐにヨーロッパへ飛び、二週間ほど滞在してメニュー開発など準備を始めました」

 

もともとガレットには目がなかったという美生さんは、それまで沖縄に専門店がないことを寂しく思っていたと言う。

 

「日本で食べるなら東京、という感じだったので、『じゃあ、私がやればいいんだ!』と」

 

フランスにも支店を持つ、東京のガレット専門店のオーナーに、作り方を教えてもらえないかと連絡をとると快く受け入れてくれた。

 

「ブルターニュ出身のフランス人で、ガレット以外のおいしい郷土料理も沢山おしえてくださいました」

 

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クレープというと、くるりと円錐形に巻かれたものを頭に浮かべるが、フランスでは平べったい形のままで皿に乗せるのが一般的だ。「巻くのは日本くらいではないでしょうか?」

 

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クレープにかけられた自家製塩バターキャラメルソースは、瓶詰めにして店頭販売している。一般的なキャラメルソースよりもビターな味わいで人気。バニラアイスやトーストにも合う。

 

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セットメニューには、前菜3種とスープがつき、さらにドリンクセットやデザートセットにすることもできる。

 

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LE VILLAGE には実に、12種類ものガレットがそろっている。

 

「最初からメニューは多めにしようと考えていました。というのも、フランスでは普通、一つの店で50〜60種類ほどのバリエーションがあるんです。
また、素材にもこだわって、できるだけ県産のものを使うようにしています。野菜はファーマーズマーケットなどで、新鮮なものを仕入れています」

 

見た目以上の食べごたえに、驚くひとも多いと言う。

 

「『ペラペラで、お腹いっぱいにならないんじゃない?』とよくきかれます。
ですが、召し上がると皆さん『お腹いっぱい!』とおっしゃいます(笑)
沖縄はお肉が好きな方が多いので、ハンバーグやチキンを具材に取り入れていますし、男性でも満腹になる量をこころがけ、お作りしています」

 

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店内からも、外の豊かな緑を眺めることができる。

 

美生さんの人生に大きな転換をもたらした、庭のガジュマルの葉が生い茂り、テーブルと椅子に木もれ日を優しく落としている。
スピーカーからは小さく音楽が流れ、時間はゆっくりと過ぎていく。
外の喧噪から隔絶された、別世界のような店。

 

日常の延長線上にあるような身近さが魅力の店もあるが、LE VILLAGEはそういう店の対極にある。
豊かな緑に囲まれて食べる、フランスの郷土料理。
「非日常感」も、ごちそうの一つだ。

 

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ホールを担当している美生さんの従弟、しんやさんと。

 

「いつか、沖縄産のソバ粉でガレットをつくりたい」と、美生さんは言う。

 

「大宜味でソバを育てている方がいるんですよ。
安定して供給できるようになるまではまだ時間がかかるかもしれませんが、新ソバの時期に限定からでも始めたいと思っています。
また、クレープも伊江島産小麦で作ることができたらいいですね」

 

こんなに美味しい料理があることを、沖縄の人にも知ってほしいと始めた店。
フランス人直伝のレシピに、独自のアイディアを取り入れた美生さんのガレットはすでに、多くの人をトリコにしている。

 

写真・文 中井 雅代

 

LE VILLAGE
LE VILLAGE(ル・ヴィラージュ)
北中城村渡口982-42
098-935-2332
open 11:00〜18:00
close 木、第2・4水曜
ブログ:http://village.ti-da.net