イタリアン惣菜 まぶ家トマトソースを極めた、シンプルイタリアンのデリカテッセン

 

まぶ家

 

「まぶ家の原点は、トマトソースなんです。瓶詰めで4種類あって、“まぶ家のトマトソース”、“こどものトマトソース”、“大人のトマトソース”、“沖縄のトマトソース”。この店をオープンするより前に、トマトソースの販売が先だったんです。読谷のゆんた市場に卸したり、イベントで販売したり」

 

まぶ家店主、摩文仁信勝さんは、トマトソース作りをイタリアで学んだ。かの地では、トマト収穫期の夏場に、その年の分を一気に仕込む。まぶ家でも、最もトマトの美味しい旬の時期に、読谷産のフレッシュトマトを使って作る。それが、季節限定の“沖縄のトマトソース”だ。その作り方は、いたってシンプル。ゆっくりゆっくり時間をかけて、トマトの旨みを凝縮させる。

 

「“いっちゃん農園”っていう農家さんのトマトなんですけど、すっごい甘いんですよ。トマトとオリーブオイルと新玉ねぎだけで、塩も入れてないです。煮詰めて裏ごしして寝かせて、翌日更に煮詰める。2日かけて、半分以下になるまで煮詰めますね。11月から5月までくらいまでで、今年はもう終わりです」

 

今年最後の“沖縄のトマトソース”。その味は、サラリとみずみずしく、ほんのり甘く、トマトの味がぎゅっと濃い。

 

 

まぶ家

 

トマトソースを極めた摩文仁さんだけに、お惣菜のショーケースにもそれを使ったものが多く並ぶ。“県産豚の中味のトマト煮込み”や、“じゃがいもと鶏肉のトマト煮込みローズマリー風味”など。他にも、常時15種類ほどのイタリアン惣菜が、やちむんの皿に盛られて美しく勢揃い。定番メニューは、カポナータやシーフードマリネ、野菜グリルマリネなど5種類ほど。あとは季節の旬の惣菜が、その時々でやちむんを彩る。好きな惣菜を、50グラムから好きなグラム数で持ち帰ることもできるし、イートインする場合には、前菜として皿に少しずつ盛りつけてもらうこともできる。

 

中でも人気1,2を争うのは、“カポナータ”。フランスで言うところのラタトゥイユで、野菜のトマト煮込みだ。

 

まぶ家

 

トマトと刻んだ香味野菜の優しい旨味の詰まったソースが、具材にしっかりと絡む。パプリカはトロンと柔らかく、その甘さが十二分に引き出されていて心地よい余韻を残すし、どの野菜も口の中でほどけるほどクッタリしているのに、煮崩れしていることもなく、見た目も美しい。

 

「野菜は全部素揚げするんです。茄子とかズッキーニは、煮込むと煮崩れするじゃないですか。だから、仕上げの段階でさっとトマトソースに絡める程度です。素揚げしているんで、本来の甘さが引き出されるし、ソースの味も染み込みやすいんです。オリーブやケッパーなども入っていますが、味付けは、塩だけですね」

 

 

シンプルな味付けで、素材の味を最大限に引き出しているのが、まぶ家のお惣菜だ。シンプルなのは味付けだけでなく、料理自体もしかり。レモンのトッピングが涼やかで、暑い日にひときわ目を引く、“やわらか鶏のレモンマリネ”もシンプルな料理。塩やハーブを使って茹でただけだ。

 

「鶏の胸肉を生のまま、レモンとレモングラスと塩をビニール袋に入れて、真空状態にするんです。それを湯煎するんですけど、茹で過ぎるとパッサパサになるので、茹で時間は気を使いますね。茹で上がったら、それ以上火が入らないよう袋のまま氷水に入れて冷まします。鶏から出る旨味が袋の中に残るので、盛り付ける時、上からかけてソースにするんです」

 

肉汁の旨味を再び吸った胸肉は、パサパサすることはなく、しっとりとして跳ね返すような弾力がある。一見簡単そうと思えるも、家ではこうは作れないと感じ入る。レモンとレモングラスの爽快感が、食欲をどこまでも刺激する。

 

 

まぶ家

 

まぶ家

 

「毎日食べられるシンプルな料理がいいなと思っていて。気軽にこの店に入って、気軽に味わって欲しいっていうのがありますから。『これどんな料理?』って迷うよりかは、お客さんが見た目でわかりやすいし、選びやすいかなと」

 

まぶ家の惣菜は、どれも味を想像できるものばかり。「どんな味なんだろ?」とハテナマークが頭に浮かぶ前に、「これ、食べたい!」という料理がすぐに見つかる。シンプルな料理がいいと思ったのは、修業したイタリアのレストランとの出会いからだ。

 

 

まぶ家

 

「『自分は沖縄に帰るから、海の料理がメインのところへ行きたい』と希望して行った店なんです。その店は、北イタリアの海沿いの店で、前菜からメインまで全部魚。ほんっとにシンプルですよ。フリットと言って素揚げして、塩をパッとかけただけとか、エビを蒸し器で蒸して、温野菜と一緒にバルサミコソースをピッとかけただけとか、カルパッチョは、白身魚を薄く切って、香りのいいバージンオイルとレモンをピピっとかけただけとか。小さいタコを小さいフライパンに入れて、にんにく入れてワインを入れて蒸して、足がクルッとなったら、はい終わり!とか。一緒に修業していた妻と『えー、これだけ?』って最初すごい驚いたんですよ。でも、ほんとにこれだけで美味しいんだって、そう教えてくれたのが、この店です」

 

まぶ家

 

まぶ家

まぶ家の自家製パンに、お惣菜をサンドしてもらうこともできる。カポナータサンド(上)と、トマト&モッツァレラチーズのサンド(下)

 

シンプルな調理で素材の味をダイレクトに伝える。そのため、余分なものはとことん省く。胡椒などの香辛料は使わないのだ。

 

「香辛料とか加えたら色んな味ができると思うんですけど、1個プラスしたらその分、素材の旨味がなくなるんじゃないかと思って。やっぱりシンプルに塩とオリーブオイルだけ。あとはレモン使ったり。お店をオープンした時、ちょうど上の子が生まれて、離乳食が始まる頃で。子供と一緒に食べるとなると、料理に胡椒とか使わないじゃないですか。うちの店でもそういうのがいいなって。『子供にも食べさせられるものあります?』ってよく聞かれるんですけど、『うちのは大丈夫です!』って」

 

まぶ家

 

まぶ家

 

肉料理でも胡椒の刺激でごまかさないのは、まぶ家ならでは。

 

「これはアンガス牛の赤ワイン煮込みです。普通の赤ワインじゃなくて、ランブルスコという微発泡で貴腐ワインみたいな甘口のワインで煮込んでいるんですね。パルマがあるエミリア・ロマーニャ州のお酒です。僕、海沿いの店だけだなく、パルマにあるレストランでも修業したんです。そこで学んだ料理ですね。イタリアでも地方によって赤ワイン煮込みの味が違って。これはパルマでしか食べられない味の赤ワイン煮込みです」

 

まぶ家

 

まぶ家

イタリアの修業先で出会った、摩文仁夫妻お気に入りのワインを置いている。サルディーニャ島産のヴェルメンティーノ(白)と、ランブルスコ(赤)。その他、フランス産オーガニックワインも。

 

なるほど、よくある赤ワイン煮込みとは一味違う。ランブルスコのほんのりとした酸味が、アンガス牛の旨みをいかんなく引き立てている。そのお肉は、箸で切れるほどに柔らかい。香り高いワインの風味とアンガス牛のマッチングが絶妙で、また食べたいと思わせる忘れられない味だ。

 

まぶ家

 

まぶ家

摩文仁さんの手打ちパスタで、オリキエッティのアーリオ・オーリオ(上)、読谷産紅芋のニョッキ・クリームソース(下)。好きなパスタに、トマトソースやバジルソースなど好きなソースを絡めてくれる。乾麺もある。

 

食べ疲れない優しい味の料理の数々。どちらかというと女性が好む味付けと感じるのだが、摩文仁さんが女性好みの味を熟知しているのだろうか?

 

「あ、うちの妻です! 彼女もコックで、ここの料理の半分は妻のレシピかな。自分が試作して不安があるときは、試食させますね。やっぱり女性目線だし。お客さんは、自分達と同世代かちょっと下の世代。『小さなお子さんも食べるだろうから、こういう味付けがいいんじゃない?』とか、『ちょっとくーたー(味が濃い)だね、もう少し控えてもいいんじゃない?』とか。『こういう優しい料理があったらいいんじゃない?』とか」

 

まぶ家

 

そうは言っても、自身の作る味の方がいいと思うこともあるだろう。

 

「う〜〜ん、でもね〜、妻の言うこと、あたってるんですよ。色々言われて『じゃあ、お前作れよ』と思う時もありますよ。言わないですよ、心の中で思うだけ(笑)。彼女の言うこと聞かずに出したことがあって、そういう時は売れ残るんですよね(笑)。前にね、“ミント風味のかぼちゃマリネ”っていうの出したんです。かぼちゃって素揚げしたら、結構油を吸っちゃうんですよね。『ちょっと油っこいね』と言われたんですけど、出してみた。そしたらやっぱり出なかったです(笑)。『だったら蒸し焼きにしたらいいんじゃない? 蒸し焼きは味が逃げないし』って。『お、なるほどねー』って(笑)。今は、“かぼちゃのホワイトバルサミコマリネ”に変身して、人気ありますよ」

 

まぶ家

 

まぶ家の味を支えているのは、奥様との固い信頼関係なんだと知り、なんだか嬉しくなる。

 

「今、一番下の子が生まれたばかりで、妻がずっと抱っこしてる状態だから、自分が朝、試作で作ったのとかお弁当箱に詰めて置いておくんですよ。そしたら昼頃、彼女から電話がかかってきて『あれ、美味しかった』って言われることがあって。そしたら『ああ、嬉しい〜、ああ〜〜、よかった〜〜』って。妻に『美味しい』って言われたら、オッケーなんです(笑)」

 

奥様との信頼関係だけでなく、摩文仁さんの温かな家庭の様子までもが透けて見える。日常の延長のような心地よさ。この店が居心地いい理由は、そんなところにあるのかもしれない。摩文仁さんが目指すのも、イタリアで通い詰めたバールのような、日常に寄り添う店だ。

 

まぶ家

 

まぶ家

 

「イタリアのバールって、みんなサッと入って、クッと飲んで帰るとか、昼から常連さんが集まってカードゲームをしてたりとか。自分達もイタリアにいた頃は、妻と仕事終わりに夕飯食べに寄ったり、アマーロっていうショットグラスの食後酒だけを飲みに立ち寄ったり、カプチーノを飲みに行ったりしましたね。そのうちお店の人と顔見知りになって、ちょっと会話をしたり、メニューにないものをオーダーしたりして、楽しかったですね。ここもそんなバールのように、気軽に好きなように使ってもらえたら嬉しいです」

 

写真・文/田中えり(編集部)

 

まぶ家

 

イタリアン惣菜 まぶ家
読谷村波平1817-5
098-958-2622
11:30〜19:00(金・土〜22:00)
close 日
http://mabuya.ti-da.net
https://www.facebook.com/イタリアン惣菜-まぶ家-819564708133775/

 

※ゆんた市場、おんなの駅でお弁当やオリジナルトマトソースを販売しています。
※お弁当、オードブルの注文も承ります。