niceness(ナイスネス) 食養生にもなる、滋味深いネパールカレー

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ネパールカレーについて知らなければ、そのさらりとした優しさに驚くはず。勝手に想像していたのは、スパイスたっぷり、ガツンと辛く、パンチの効いたカレー。けれど、nicenessのカレーは、拍子抜けするくらいに刺激が少なく、すっと舌に馴染む。刺激の代わりに広がるのは、野菜や豆の、素材から引き出されるしみじみとした旨み。ネパールカレーという馴染みのないカレーながら、なぜか懐かしい感覚に捕らわれる。じんわりとしてほっとする。

 

niceness店主、桒原(くわはら)伸弘さんには、目指している味がある。

 

「滋味深い味を出したいと思っていて。やんばるの野菜自体が美味しいから、それを引き出す感じがいいなと思っています。野菜にもよりますけど、炒め蒸しにしたり。豆のカレーには、昆布と干し椎茸からとった出汁を加えているんです。元々この出汁を家で使っていて、加えてみたらいいなと思ったので」

 

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この日の野菜のカレーには、マシューラというネパールの大豆たんぱく、クーガ芋というやんばる在来種で長芋に似た芋、それにモウイが。豆のカレーには、”うすいえんどう豆”という和歌山の自然栽培の豆や、緑豆など。付け合せは、ニンジンのアチャール、キャベツのサラダ、ゴーヤーのタルカリ、かぼちゃと紅いもの天ぷら、島豆腐と小松菜のタルカリ。ご飯のお米はほぼ地元産で、分搗き具合は季節により変える。

 

本場のネパールカレーとは少し異なる、伸弘さんならではのオリジナリティは、スパイスの使い方にも。

 

「スパイスも香りを強くしたければ、油にしっかり香りを移せばいいんだけど、でもそれも好みですよね。あんまりスパイスが強烈なのは、日本人の口に合わないんじゃないかな」

 

8種ほど加えられているスパイスの香りは、心地よく鼻をくすぐる程度におさえられている。あくまでも主役は野菜。ここではスパイスですら、野菜の滋味深さを活かすもの。

 

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お金に頼らない暮らしをしたいと、1年程かけて自分達で店を建てた。

 

伸弘さんの工夫は、味だけにとどまらない。体にいいものを、と食養生にも気を配る。共に店を切り盛りする奥様の悠子さんが、教えてくれる。

 

「消化力に重点を置くアーユルヴェーダや、陰陽のバランスを取るマクロビオティックを取り入れているんです。豆のカレーに昆布出汁を入れるの、組み合わせがいいんですよね。豆はお腹にガスが溜まりやすくって、昆布はそれを抑制してくれる力があるって。それからご飯は、白米と玄米を混ぜているんです。玄米だけだと、よく噛まないと消化にあまりよくないし、どうしても重くなりすぎちゃう。でも白米だけだとなんか食べた気がしないから、合わせたらいいかなと(笑)。パンも小麦だけだと体が冷えるんで、中和するためにご飯を加えています。パンの中のつぶつぶ、実は、ご飯粒なんですよ。ご飯を入れることで、お米の甘みも加わりますよね」

 

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パンプレートに付く、天然酵母の麻炭パン

 

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アイス用に仕入れた、エチオピア・モカのスペシャルティコーヒー

 

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名護産自然栽培の桃とオーガニックココナッツミルクのアイスクリーム、豆乳ヨーグルト添え

 

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寺田本家のにぎり酒と黒ゴマのスコーン

 

美味しいものを提供するのは当たり前。伸弘さんと悠子さんは、体にいいものを出すことが、飲食店の役割と考えている。2人は、その重みを口にする。

 

「飲食店として、お客様の体に入るものを作っているんだから、ちゃんと勉強して、体にいいものを出さないと。お医者さんと同じくらいの知識がないと、と思っているんです」と伸弘さんが言えば、

 

「食べているもので体はできているから、飲食店をするって、大変。舌を楽しませるだけの娯楽ではいけないと思って。なんて大変なことを始めてしまったんだって(笑)」と悠子さんも続く。

 

その言葉通り、料理に対する2人のこだわりは枚挙に暇がない。白いお砂糖は一切使わないし、使う野菜は地元産で、ほとんどを友人の畑から直接仕入れる。名護産玄米の乳酸菌で豆乳ヨーグルトを手作りするし、その豆乳ヨーグルトでパンの酵母までおこしてしまうほど。

 

素材にこだわる上、アーユルヴェーダやマクロビオティックの考え方までをも取り入れたメニューの数々。これらのメニューは、自身の体に合うものを、と探した結果、変遷を経てたどり着いたもの。

 

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nicenessは今年10年目を迎えるが、オープン当初は、タイカレーの店だったという。東京で全く別の料理の調理人をしていた伸弘さんが、タイカレーを食べて衝撃を受けたのが、始まりだ。

 

「東京の老舗のタイ料理店で、初めてタイカレーを食べてすごいびっくりしたのが、カレーにはまったきっかけなんです。2人でタイへ行って、現地で出会った人の家に住み込んで、おばちゃんと一緒に台所に立って、タイ料理を学びました。帰ってから、那覇にタイカレーの店を出して、7年くらいやってたかな」

 

しかし、体にいいものをもっと勉強したいと、移転をきっかけにメニューを見直すことにしたのだそう。

 

「タイ料理は生野菜が多いから、1年中食べるのはきついんじゃないかとか、タイの調味料は、今でこそオーガニックのものもあるけど、その当時のものはほとんど保存料が入っていたし、砂糖を多く使う料理もある。色々気になって、もっと食のことを勉強したいと思ったんですよね。それに、もっと緑の多い所に住みたいから、名護へ移転しようと。移転の休暇を利用して、今度は北インドとネパールへ行ったんです。2ヶ月くらい行ったんですけど、自分としては、インドよりネパールがすごく体に合いましたね。インドで外食すると、どうしてもお腹を悪くしていたんです(笑)。油や、乳製品とか結構多いし。その後、ネパール行ったら、すごく素朴でシンプルな感じで。日本にも近いように思いました。醤油とかを使うし、玄米も食べる。チウラっていう玄米を蒸したものを乾燥させてカリカリにして、それにカレーをかけて食べたり」

 

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その間、自然にお肉を欲しないようになり、体の調子のよいことに気づく。悠子さんが、穏やかに話してくれる。

 

「体の調子がいいのはもちろん、精神面も変わりましたね。イライラしないし、怒ることもあんまりなくて。那覇のときは、忙しくて店でケンカしたりしたけど、今はないですね。昔だったら気にしていたことも、別にどうでもいいというか(笑)」

 

自身の体験からお肉を使わないビーガンの店にしようと決め、名護にネパールカレーの店、nicenessを誕生させた。

 

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ビーガンの店にして一番嬉しいのは、食べる人を選ばないことと、悠子さんは言う。

 

「最初、名護でビーガンのお店ってやっていけるのかなって不安もあったんですよ。でもやってみたら、逆にビーガンの方が間口が広いってわかって。お肉を食べられないって人って、結構いるし、お砂糖をお医者さんから止められている人もいる。ビーガンの人だけじゃなくて、ビーガンじゃない人も食べられるし、それに子供だって食べられる。タイカレーの時は、ペーストに唐辛子を入れていたので、お子さんには出せなかったんですよね。でも今だったら大丈夫」

 

伸弘さんと悠子さんの、食材やその組み合わせ、そして調理法のこだわり。2人はそれを「飲食店であることの責任」と言う。しかし根本にあるのは、別け隔てなく皆に美味しく食べて欲しいという、お客に対する深い深い思いやりだ。

 

写真・文/田中えり(編集部)

 

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名護市宇茂佐1635-1
080-5232-8552
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