喫茶ニワトリこだわりの手づくりシロップがたっぷり。ごちそうかき氷を、 のんびりお庭で。

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マンゴーの果肉をどどん! と豪勢に盛り付け、黄金色のシロップをたっぷりまわしかけたら、「はい、お待ちどうさま!」。
カウンターに置かれたその姿に、歓声をあげずにはいられない。
高々とそびえる氷の山を、恐る恐るスプーンで崩して二度びっくり。
中の氷にもしっかりとシロップが浸透し、マンゴーの果肉がまたも顔を出した。

 

口に入れると心地よい冷たさとともに、フルーツの濃厚な風味が口いっぱいに広がる。
そして意外にも、舌に残るのは想像していたよりずっと爽やかな甘味だ。

 

「甘さ控えめなかき氷がお好みなら、こちらがお勧めですよ」
そう言って出してくれたのは、浦添市の特産品である「桑の葉」を使っためずらしい抹茶のかき氷。

 

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桑の葉抹茶の粉末。「養蚕の街として知られる浦添市の特産品なんです。血糖値の上昇を防ぐので、高血圧や糖尿病に効果的だと言われていますし、くせが強すぎないので美味しい抹茶になるんですよ」

 

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粘り気の強いシロップが全体に行き渡るよう、三つ口の容器を使ってたっぷりとシロップをかける。

 

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「まだ全種類制覇していないのに、いつ来てもこればっかり頼んじゃう。完全にハマってますね(笑)」と、常連さん。

 

ほろ苦い抹茶シロップと、ていねいに煮た有機小豆の控えめな甘味が絶妙にマッチする大人な一皿。
濃厚だがクセのないシロップは、後をひく味わいでどんどん食べ進めてしまう。
しまいには器を両手で持ちあげ、溶けた氷の最後の一滴まできれいに飲み干していた。

 

西村剛さん・美奈子さん夫婦が営むベーカリー「 ippe coppe (イッペコッぺ)」の庭に、美奈子さん手製のドリンクやスイーツが味わえる「喫茶ニワトリ」がオープンしたのは2012年のこと。
2013年の7月から新メニューとしてかき氷が登場すると、瞬く間に大人気となり、県内外各地から多くのひとが訪れている。

 

マンゴー、桑の葉抹茶、ドラゴンフルーツ、イチゴ、パイナップルと5種類ある手づくりシロップのベースとなるのは、美奈子さん手製の「基本のシロップ」だ。

 

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鮮度を考慮し、2日に一度のペースで作る「基本のシロップ」。

 

「基本のシロップは、洗双糖・三温糖・甜菜糖・グラニュー糖の種類の4種類をブレンドして作っています。
洗双糖は精製の度合いが低いのでミネラルが豊富に含まれ、こくもあってまろやかなのが特徴です。
けれどその濃厚さは、果物など素材の甘さや風味の邪魔をしてしまうこともあるんです。
そこで、あっさりとして雑味のないグラニュー糖も加えています。
すると、素材そのものの味も引き立つシロップになるんですよ。

 

砂糖と素材、両方の長所が生きるようにと、配合の調整には時間をかけました。
実は最近も、もう少しこくを出したいなぁと少し改良したところなんです」

 

こだわりぬいた基本のシロップにフルーツなどの素材を加え、各種シロップへと展開させていく。

 

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シロップの材料となる宮古島産の冷凍マンゴーは濃厚な甘さ。

 

「素材はできる限り県産のものを使っています。
マンゴーは宮古島産と豊見城産、ドラゴンフルーツは久米島と糸満から仕入れ、桑の葉抹茶は浦添のものを使用しているんです。

 

イチゴは最初他県のもの使おうと考えていましたが、宜野座で採れたものだけを使用しています。
県内でのイチゴ栽培はあまり盛んとは言えないので、ご提供できる数に限りが出てしまうのですが、それで良いんじゃないかなーって。
沖縄のものを使うことに意味があると思うから。

 

また、『かき氷を一年中食べられるメニューにしてほしい!』なんてありがたいお声があり、他県の果物を使ったり、作ったシロップを冷凍保存したりという方法も考えてはみました。
けれど、それってなんか違うなぁ…って。
旬のものは、その時期を逃さずに食べるのが一番!
無理して通年提供するよりも、最高においしい状態のフルーツをお客様に楽しんで頂きたいと思っています」

 

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シロップも練乳も「これでもか」というほどたっぷりかけてくれる。

 

県産の新鮮な素材を使ったシロップは、その程よい甘さが魅力だ。

 

「果物にはそれぞれの特徴があるので、基本のシロップと合わせた時の味や触感についても、じっくり研究しました。
甘味の強いマンゴーは、ねっとりとした触感が残らないようさらりと仕上げる。
ドラゴンフルーツは甘さがぼんやりとしているので、きりっと引き立たせるためにシークヮーサーの果汁をたっぷり絞って加える。

 

甘さのバランスをとるため、それぞれ工夫をしています」

 

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「ドラゴンフルーツは、このまま火を通さずにシロップにします」

 

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また同じ果物を使うときでも、その都度「基本のシロップ:素材」の配合を変えていると言う。

 

「同じ果物なら糖度も一緒、ということはまずないからです。

 

一本の木やひとつの畑でも、場所によって日差しの強さや角度、陰の出来方も違いますよね。そうなると、できた場所によって糖度も均一ではないのが当たり前。

 

ですから、作り始める前に必ず素材の味をみて、ちょうどいい甘さになるように配合する割合を調整するんです」

 

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ドラゴンフルーツのシロップには、シークワァーサーの果汁をたっぷりと。

 

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ドラゴンフルーツ、シークワァーサー果汁、基本のシロップを入れて撹拌する。

 

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シロップを氷にかける際にも、美奈子さんのこだわりが発揮されている。

 

「食べている途中、氷の味しかしない部分があってがっかりすることってありません?かき氷好きとして、それだけは避けたくて(笑)。

 

シロップは氷と交互に何度かかけるのですが、それぞれの果物の特性が出るので、種類によってかける回数や量を微調整しているんです。

 

マンゴーやドラゴンフルーツのシロップは粘度が低くさらっとしているので、食べているうちに味が薄くなりやすいんです。
そこで、まずはお皿の底にシロップを入れます。そして氷と交互に計3回しっかりシロップをかけ、果肉と練乳も入れます。すると、最後の一口までおいしく食べられるんですよ。

 

反対に、桑の葉抹茶・イチゴ・パイナップルのシロップは粘度が高く、氷の表面を上滑りして中まで浸透しづらのが特徴。
味がくどくなり過ぎないよう注ぐ回数を減らし、その分、一度にたっぷりとかけます。そうすれば食べているうちに中までシロップが浸透し、全体的にちょうど良い濃さになるんです」

 

シロップをかける。
ただそれだけの工程にここまでこだわっている。だからこそ、目が覚めるように美味しい一皿が生まれるのだ。

 

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各種シロップの試作を重ねていた頃は、近所の人や夫に味見をしてもらって意見を求めた。「わりとすんなりできたものもあれば、完成までに2週間以上費やしたものも」

 

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多くの人に愛されるベーカリー「 ippe coppe 」。
店の横にある庭に突如として表れた喫茶ニワトリだが、喫茶コーナーの構想は ippe coppe のオープン前から描いていたと美奈子さんは言う。

 

「屋台のような親しみを感じさせる店で、シロップを使ったメニューを提供できたら嬉しいなぁ…と、ずっと前から思っていました。
というのも私、昔からシロップ作りが大好きなんです!
保存がきくし、なにより色んな使い方が出来ると思うと、なんだかわくわくするから。
旬の果物でシロップを作っては、ヨーグルトにかけたりジュースにしたり、そのままジャムがわりにパンに塗ったりして楽しんでいたんですね。

 

夫もシロップ作りを応援してくれていたので、2008年に ippe coppe をオープンさせた後、店が落ち着いたらいつか実現させようとタイミングをうかがっていたんです。

 

シロップを使ったメニューはいろいろあるけれど、カキ氷を出すことは決めてました。夏が長く、氷をかけた『ぜんざい』も人気の沖縄にはぴったりじゃないかと思って。
実は、ippe coppe をオープンさせる前にすでにかき氷機も買っておいたんですよ(笑)」

 

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「購入して5年、出番がくるまで物置で眠っていたけれど、やっと日の目を見ました(笑)」

 

こだわりのかき氷を目当てに訪れる人は後を絶たず、今では ippe coppe と同様の人気店となった。

 

客層は幅広く、ちいさな子ども連れのお母さんや20代の女性たちをはじめ、仕事の合間に休憩にやってくるサラリーマン、散歩途中のおじいさんやおばあさん、中にはスケーター男子まで!

 

庭という場所が多くの人を惹きつけているのではないかと、美奈子さんは話す。

 

「屋外にあるお店って老若男女関係なく、そこにいるみんなが気楽に仲良くなれるような気がするんです。

 

私、屋台が大好きなんですね。祭りの露店にラーメン屋やおでん屋…。色々あるけど、どれも雰囲気が素敵じゃないですか? たまたま隣に座った人に話しかけて、仲良くなっちゃったりして(笑)。
そういう場所を作りたいってずっと思っていたんです。庭という場所を選んだのもそのため。
喫茶ニワトリに沢山の人が集まって、自由にわいわいと楽しんでくれたらとても嬉しい!

 

その様子をイメージしたら、いつでも自由奔放に走り回っているニワトリたちが思い浮かんだんです。それが店名の由来」

 

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大きく伸びたアセロラの木の枝が、心地のよい日陰をつくっている。

 

かき氷を楽しめるのは10月いっぱいの予定だが、それまでに新作登場の可能性もあると言う。

 

「当店で取り扱いしている『沖縄セラードコーヒー』の豆を使った、コーヒーゼリー味が出せたらなーって。
試作段階ですがめちゃくちゃ美味しいですよ〜(笑)期待してください!

 

11月以降の喫茶メニューについても、コーヒーに合うお菓子を色々と考えているので、かき氷の時期が終わったあともお楽しみに」

 

研究熱心な美奈子さんによる新作スウィーツへの期待で、胸が膨らむ。

 

喫茶ニワトリ

 

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庭に置かれた椅子に腰掛けていると、広い空と、大きな木と、そこに集う人々が
目に映る。

 

色鮮やかなカキ氷たちがその開放的な空間を彩り、ピクニックにやってきた時のようなうきうき感を与えてくれる。

 

1人でくる人。
友人や家族とくる人。

 

それぞれの時間を楽しみながらも、同じ空間で時間を共有する人々になんとなく親しみを感じるのは、きっと私だけでない。

 

「今日も暑くていやんなっちゃいますねー」カキ氷を待つ女性にそう話しかけると、「ほーんと!でも、まさにカキ氷日和ですね!」という答えが返ってきた。

 

知らず知らずのうちに、笑顔と会話が生まれる。

 

カウンターから手渡される一杯一杯に、思いとこだわりが詰まっているからだろう。
喫茶ニワトリのかき氷はその冷たさに反して、口にした人の心を温めてくれる。

 

写真 中井雅代/文 本岡夏実

 

喫茶ニワトリ

喫茶ニワトリ

浦添市港川2-16-1

TEL/FAX 098-877-6189
open 13:30~18:00

close 火・水

 

喫茶ニワトリ
ippe coppe (イッペコッペ)
open 12:30~18:30(売り切れ次第終了)

close 火・水

 

HP http://www.ippe-coppe.com

ブログ http://ippecoppe.ti-da.net