Ploughmans Lunch Bakery(プラウマンズランチベーカリー)売り切れ必至のパンのこだわりは「こだわり過ぎないこと」

 

数種類の色鮮やかなパンと、どっさり盛られた野菜が目をひくランチプレート。
美しい彩りの料理と美味しそうな香りが大きなトレイで運ばれてきて、思わず顔がほころぶ。

 

 

自家製のパン。プラウマンズのパンを一度食べ、すっかりハマって通いつめているという人を何人か知っているが、その気持ちが一口食べてよくわかった。
もちっとして弾力があるがぎっしり詰まった感じではなく、程よい軽さがあるので次から次へと食べられる。
種類の異なるパンをどうやって食べ進めていくか、悩むのも楽しい。
これはつき合わせの「きびなごの香草マリネ」を乗せて、こちらはスープと一緒に・・・
中でも一番のお気に入りはアーサと海塩のリュスティック。
潮の香りがしっかり香るもちもちパン。

 

 

素朴で美味しいパンは野菜に合う、これは鉄則だと思う。
ここのパンを食べていると、自然と野菜を食べたくなる。
これでもかと盛られた野菜に最初こそ目を丸くしたが、食べ始めるとなんてことはない、野菜そのものも自家製のシンプルなドレッシングも素晴らしく美味しいので、サラダを食べる手が止まらない。
パンに挟めば、即席サンドイッチの出来上がり。

 

 

豊かな素材の味わいを、もったりとした食感で舌の上に長く留める「にんじんとトマトのポタージュスープ」。
あとをひく美味しさにあっという間に飲み干してしまってから、
「…パンを浸して食べるの、忘れてた!」
ああ、なんたること…。とろみのあるさわやかな甘さのスープ、パンに合うこと必至なのに。
私も家でにんじんとトマトを使ったポタージュスープを作るが、味わいが違う。ほっとするだけでなく、少し、ほんの少しだけきりっとした締まりのある味。その立役者が、人目のつかないところにひっそりと隠れている。
「コリアンダーをちょっとだけ使っているんです。」

 

 

ガトーショコラ。外側はかりっと焼かれ、中はしっとり。繊細な大人のおやつ。

 

おどろくなかれ、プラウマンズのプレートランチはなんと、パンとコーヒーのおかわりが自由!
出されたプレートで十分お腹いっぱいになるが、病み付きになる美味しさのパンは、食後のおしゃべりを楽しんでいるうちにまた食べたくなるのだろう。「パンお願いします」というおかわりを希望する声を何度も耳にした。

 

 

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石臼でマスタードシードを挽いて作る、名門ファロ社のマスタード

 

北谷のカフェで店長を務めていたこともあれば、子供服をデザイン販売していたこともあるという、多彩な経歴を持つオーナーの屋部(やぶ)さん。
普段はご飯を食べることが多いが、パンというよりパン屋が好きでお店を開いたという。

 

「パンを中心にメニューを決めています。パンに合うサラダやスープ、プレートを食べ終えた時に食べたくなるデザート、という風に。」

 

ヨーロッパを訪れた時、パンのある風景をいたるところで目にし、心を打たれた。

 

「大きなパンを抱えて道を歩いている人をよく見かけて。日本だとそんな大きいパン売れないですよね。でも、ああいうパンが日本でもいっぱい売れたら良くないですか?(笑)そんな風景が定着したら良いな、という想いもあって。ご自宅でもこういう感じで召し上がるとおいしいですよと提案して、実際にこちらで食べて頂いて、『このパン美味しかったから』と買って帰って頂けたら嬉しいですね。」

 

屋部さんの想いはそのまま現実のものとなっている。取材時、店を訪れた時にはパンのほとんどが売れ、ランチを食べて帰るお客さんたちも続々と持ち帰り用に購入、最後はほぼ完売の状態だった。

 

 

店のこだわりを訊くと、

 

「こだわり過ぎないこと。
無農薬で、国産小麦で、全部天然酵母で、卵はなしで・・・とこだわりすぎてしまうと、どうしてもできるものが限られてしまう。健康も大切だけれど、飲食店なのだから僕は何より先に美味しさを追求したくて。だから、お客様が選べると良いかなと。ベジタリアンの方も買える、イースト菌使ってるのも天然酵母のものもある・・・という風に、それぞれに特徴を持ったパンを色々そろえています。」

 

屈託ない笑顔を絶やさず穏やかに語る屋部さんは、まるで店そのものの象徴のように見える。唯一無二の存在感を醸しながら、押し付けがましいところがまるで無い。
「こだわりすぎないこと」という言葉をきいた瞬間は、その意外性に虚をつかれた気持ちになったが、すぐにじんわり納得がいく。
誰をも魅了する独特の雰囲気と料理、そして美味しさ。しかし、堅苦しいところがこの店のどこにも見当たらない。そんな雰囲気に気をゆるするのだろう、お客さんはみなゆったりと寛いで、居心地の良さからなかなか席を立つことができない。

 


緑に囲まれた広々とした庭で食べれば、まさに「プラウマンズランチ」の気分を味わえそう。

 

 

Ploughman(プラウマン)というのは「耕す人」という意味のイギリス英語で、プラウマンズランチとは、家から持って来たパンやチーズにビールなどで済ます簡単な食事のことを指す。

 

「イギリスではそれが定食の名前にもなっていて、よくレストランなんかでも見かけるんです。そのバランスとコンセプトが良いなって。」

 

日本では耳慣れない言葉だが。

 

「ですよね、だから名前もよく間違えられるんです、『ブラウマンズ』とか。なんで『ブ』に間違えられるんだろう?僕が屋部だから?(笑)でも、それで良いと思って。名前は覚えにくいし場所もわかりづらいけれど、一度来て気に入ってくれたらきっと忘れないんじゃないかなって。」

 

住宅街とも言えない、ひっそりとしたところにある。
駐車場の場所に迷っていると、店から出て来たお客さんが丁寧に教えてくれた。
「自分も最初は迷ったんですよ。」

 

名前を間違い(私も『ブ』だと思っていた)、最初は道に迷っても、絶対にまたそのドアを開けに行くだろう。
そして、次はもう迷わない。

 


Ploughmans Lunch Bakery(プラウマンズランチベーカリー)
北中城村安谷屋927-2
098-979-9097
open:8:00~16:00(ランチ:10:00~15:00)
close:火・水
HP:http://ploughmans.net