Quatre Quarts(カトルカール)果物を、より果物らしく。素材の魅力を凝縮させたジャム。

Quatre Quarts

 

最初に感じるのは、驚くほどクリアなイチゴの酸味。
甘さよりも先に、素材本来の味わいを感じるイチゴジャム。

 

トマトとオレンジのジャムは、かすかに苦みを残した爽やかなオレンジに混ざっているからこそ、トマトのしっかりとした甘味を感じられる。

 

その食感も独特だ。
舌の上で「ごろり」とするほど、厚みのある果肉の歯応えを楽しめる。

 

QUATRE QUARTS の大久保香奈美さんが作るジャムはどれも、果物が持つおいしさの特徴が見事に凝縮されている。
生のまま口にした時よりも、その果物の「らしさ」をより強く感じることが出来るのだ。

 

「ジャムの素材には、沖縄県産のものを多く使っています。
季節ごとに旬のものを使っていて、今はパインがおいしい時期ですね。
7月後半になると、マンゴーやパッションフルーツが出てきます。
冬は、カーブチーやタンカンなどの柑橘系が多いかな。
おいしいジャムを作るのに、新鮮な状態で手に入れることの出来る県産フルーツは欠かせません」

 

そんな県産素材のジャムはお土産としても人気があり、また、結婚式の引き出物にと注文を受けることも多いという。

 

 

中には、ブラックベリーやルバーブ(西洋フキ)のように、あまり聞き慣れない珍しい素材を使ったジャムも。

 

「私は北海道出身なんですが、自分が育った土地のものを沖縄の方々にもぜひ召し上がっていただきたくて。
自家製の果物や野菜を、義両親が『これもジャムにどお?』と北海道から送ってくれるんです。
初めて見る野菜や果物って、なかなか手が出なくないですか? でも、ジャムになっていると試しやすいんじゃないかなぁ…と思って」

 

 

県内外で人気のジャム。手作りの工程には、香奈美さんのこだわりが幾つも散りばめられていた。

 

Quatre Quarts
今回は、色が濃く果肉がしっかりとしているのが特徴の「こころ」を使用。

 

イチゴのヘタは、丁寧に洗ってから取る。

 

「ヘタの裏側を洗うのはかなり面倒なので、先にヘタをとってしまう方が作業としてはラクです。
けれど、ヘタをとってから洗ってしまうと切り口から水が入り、水っぽいジャムになってしまうんです」

 

Quatre Quarts
まずはヘタの裏まで丁寧に洗い…。

 

Quatre Quarts
それからヘタをとり、すべてのイチゴを4等分に。素早い手さばきであっと言う間に完了。

 

また、砂糖はあえて精製されたグラニュー糖を使っている。

 

「グラニュー糖は、ジャムの色を美しく仕上げ、果物そのものの味を生かすのに最適なんです。
きび砂糖など精製の度合いが浅い砂糖は、ミネラルも多く栄養価も高いのですが、そのぶん雑味やアクも出ます。それだと果物の魅力を十分に引き出せないと考え、基本的にグラニュー糖を使っているんです。

 

砂糖それぞれの良さや特徴があるので、委託先から要望がある時や素材によってはきび砂糖を使うこともあります」

 

Quatre Quarts
グラニュー糖を数回に分けて入れる。「分けて入れることで、イチゴの水分を適度に閉じ込めておくことができるんです」

 

Quatre Quarts
しっかり混ぜたら少し寝かす。「そうすると煮崩れしにくくなるんです」

 

Quatre Quarts
グラニュー糖の浸透圧でイチゴが一回り小さくなったら、いよいよ火にかける。

 

Quatre Quarts
純銅の鍋に入れ、強火で一気に煮ていく。水は入れず、イチゴから出る水分だけで煮詰め、アクをとる。「ていねいにアクをとると、出来上がりの透明感が違うんです」

 

とろみを出すために、水溶性の植物繊維であるペクチンを使用しているのも香奈美さんのこだわりの一つだ。

 

「もし使わずにとろみを出すとしたら、お砂糖の量を倍以上にまで増やさなければなりません。
そうすると、せっかくの果物の味があまり生きなくなってしまうんです」

 

素材の味を生かすことを最優先した結果の選択だ。

 

Quatre Quarts
イチゴがしんなりしてきたら、ペクチンとともに二度目のグラニュー糖を入れる。みるみるうちに艶が増してくる。

 

Quatre Quarts
レモン汁を入れる。「レモンにもペクチンが含まれているのでとろみが増しますし、味がしまるんです」

 

Quatre Quarts

 

 

Quatre Quarts
しっかり熱消毒した容器に手際よくジャムを入れていく。「この道具が便利なんですー!たこ焼き屋さんで発見して(笑)。手元にストッパーがついているし、瓶を汚さずに入れられます。これを発見するまではお玉で入れていて…大変でした」

 

たくさんのこだわりが詰まったジャムは、トマトの赤、柑橘系のオレンジ色、ベリーの深紅色、つやつやとしたキウイの緑色と、どれも色鮮やか。

 

そして、その鮮やかさを引き立てているのが、愛らしいフォルムの瓶とラベルだ。

 

「味はもちろんですが、見た目にも気を配っています。
ジャムって保存できる期間が長いので、生活しながらよく目に入るでしょう? せっかくなら野暮ったい物よりも可愛い物の方が嬉しいし、プレゼントしたときも喜んでもらえるんじゃないかと思って」

 

そんな女性らしい繊細さを感じる一方で、香奈美さんの大胆さを感じるエピソードも。

 

「本部(もとぶ)町のてづくり市に出店したとき、農家を営むおばあちゃんに『うちのゴーヤでジャムはできないか』と言われて。
ゴーヤでジャム?! とは思いましたが、もしかしたらできるんじゃないかと挑戦してみたんですけど、佃煮のようにしかならずに大失敗(笑)。
そういえば、キュウリのジャムを思いついて試作したこともあるんですよ。でも、何度やっても青臭くなってしまって…。水分の多い瓜系の素材をジャムにするのは難しいんだということを学びました」

 

工房を構えたのが2007年。これまでに作ったジャムは100種類を超えるという。
遊び心や冒険心を実際にかたちにしていく大胆さと、素材に対する誠実さや繊細さ、その両方を併せ持つ香奈美さんにだからこそ、これほどの数のおいしいジャムを生み出すことができたのだろう。

 

Quatre Quarts
瓶のふちギリギリまで、たっぷりと詰める。「蓋を開けたときにいっぱい入ってると、私だったら嬉しいから(笑)」

 

Quatre Quarts
蓋は空気を抜くために軽く締め、ひっくり返さずに蒸し器で熱消毒する。「たっぷり入れているので中の殺菌はしっかりできているし、開けたときに蓋の裏が綺麗なほうが嬉しいから」

 

3人姉弟の長女で、幼い頃から我慢することも多かったという香奈美さん。
本当は小さな頃から好きだったお菓子作りを製菓学校で学びたかったが、家計のことを思うと諦めざるを得なかった。

 

「何か手に職をという思いがあったのですが、『製菓や調理では食べていくのが難しいのではないか』という両親と話し合い、ちょうど注目され始めていた歯科衛生士の勉強を始めたんです」

 

資格取得後、働いていた歯科でご主人と出会い結婚。しばらくして沖縄に移住した。

 

「手先を使うことは好きだったので、衛生士の仕事も楽しんでいました。
お菓子作りは趣味として続けていたのですが、ある日夫に『売ってみたら?』と言われて。
このまま歳をとるのはなんだか寂しいし、何かやりたいな…とは思っていたんです。夫の言葉をきっかけに、お菓子作りを仕事にしようと決めました。
そして、やはり売るからにはきちんと学びたいと思って」

 

香奈美さんは仙台の製菓学校に入学。歯科衛生士の仕事を続けながら、通信教育とスクーリングで本格的に製菓を学んだ。

 

「製菓学校での勉強を終えてから、イベントへの出店など、お菓子づくりの仕事を徐々に始めました」

 

Quatre Quarts
消毒後、瓶のなかに溜まった微量の空気を素早く抜き、真空状態にしてできあがり。

 

屋号につけた「QUATRE QUARTS」とは、フランス語で「4分の4」の意味。小麦粉・バター・砂糖・卵の4つの材料を同量ずつ用いて作る、パウンドケーキを指す。

 

「お菓子作りが好きで始めたので、最初は焼き菓子の販売をメインにと考えていたんですよ。
出店の際も、ジャムは棚の隅っこにちょこんと並んでいただけでした」

 

現在もジャムだけでなく、結婚式やパーティーにとタルトやマフィンといった焼き菓子の注文も多いが、ジャムの人気も徐々に高まっていった。

 

「最初は、『お客様に喜んでいただけるなら』と頑張って作っていましたが、今はジャム作り自体を心から楽しんでいます。
フルーツや野菜に触れている時間が好きで、幸せだなーと感じるんです。ジャムに対する想いも増してきたように思います。

 

わりとオーソドックスなジャムを買われる方が多いのですが、実は『ルバーブ』のような変わった素材のジャムが個人的には大好きで。すごくおいしいのでぜひ試していただきたいですね」

 

定番ものから変わり種まで。
QUATRE QUARTS のジャムは、種類の豊富さも魅力の一つだ。

 

「ジャムとは少し作り方が違うのですが、『リンゴジュレ』 も人気です。
皮や種もそのまま、リンゴを丸ごと水で煮るんです。煮汁を一晩かけて漉し、再び砂糖と共に煮て仕上げます。
私も大好きなのですが、お客様の中にもリピーターが多いですね。

 

ジュレはジャムと比べると日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、楽しみかたはさまざまです。パンやスコーンに塗るだけでなく、紅茶にひとさじ落とすだけでアップルティーになるし、リンゴタルトの表面に塗るなどお菓子作りにも役立つんですよ」

 

Quatre Quarts
リンゴジュレ。まるではちみつのような色と艶。「皮ごと使うため、リンゴの種類によって出来上がりの色も変わります。これは、茜リンゴという皮が真っ赤な品種で作りました」

 

Quatre Quarts
紅茶に入れてもしっかりとリンゴの風味を感じることが出来る。

 

Quatre Quarts
「ちょっと風邪っぽいなぁってときは、お湯に溶いて飲むとからだが暖まりますよ」

 

Quatre Quarts
フランボワーズのジャムを入れたグラスにペリエを注ぐ。「色合いが綺麗でしょう? フランボワーズのすっきりとした甘さがペリエによく合うんです。これもお客様に教えてもらったレシピ(笑)」

 

パンに塗ったりヨーグルトに入れたりして食べるイメージが強いジャムだが、活用法は驚くほどたくさんある。

 

パインのジャムは肉料理に添えるソースに。
プラムのジャムはポルト酒(ポルトガル産のワイン)とあわせ、ローストした肉にかけて。
ベリー系のジャムにシャンパンやペリエを注いだグラスは、見た目にも美しい。

 

「基本的に私は作る過程が好きなので、どう食べていただくかはおまかせ(笑)。
お客様に新しい楽しみ方を教えて頂くこともよくあって、真似させてもらってます」

 

QUATRE QUARTSの活動は、今後どのように広がっていくのだろうか。

 

「ジャムについては、種類を増やしていくよりも、現在あるものをより極めていきたいですね。
子育てが落ち着いたら、もともとメインで作りたかったタルトなどの焼き菓子にももっと力を入れていきたいと思っています」

 

Quatre Quarts
左から、キウイジャムとパッションフルーツジャム

 

 

Quatre Quarts
香奈美さんお手製のチーズタルトにも。「少し酸味のあるジャムは、チーズとの相性が抜群なんです」

 

Quatre Quarts

 

Quatre Quarts

 

いま、我が家の台所には QUATRE QUARTS のジャムの瓶が並んでいる。
その可愛らしい姿は見慣れたはずの台所の風景さえも変え、また、おいしいジャムは日々のくらしにうるおいを与えてくれている。

 

憂鬱な朝には、布団の中で、鮮やかなジャムをたっぷりのせたパンを思い浮かべるだけでいい。
すると憂鬱も吹き飛んで、からだも軽くキッチンへと向かえる。

 

疲れ切ってへとへとな夜には、温かな紅茶の中にジャムをひとさじ落とすだけでいい。
甘くたちのぼる湯気と香りが、私をなんとも優雅な気持ちにさせてくれる。

 

こんな風に、QUATRE QUARTSのジャムはいとも簡単に、私の日常に小さな魔法をかける。

 

「今度帰省するときには家族に買って帰ろう」
「来週会う友人に、いくつかプレゼントしようかな?」
ジャムのある食卓を堪能しながら、気づくといつも人にあげることを考えている。
まわりの大切なひとたちにも、このジャムの魔法をかけてあげたくて。

 

文:本岡夏実 写真・編集:中井雅代

 

Quatre Quarts
Quatre Quarts(カトルカール)
ブログ:http://quatrequarts.ti-da.net/

 

<ジャムお取り扱い店>
本部町:まちぐぁ cafe みちくさ
沖縄市:ブーランジェリー Zazou
(関連記事 贈りたくなるパン。パリテイストをコザで貫き20年以上、ハード系パンのさきがけ的ベーカリー
名護市:chou*chou plus
那覇新都心:fleur(フルール)
(関連記事 生活空間や心にうるおいを与えるインテリア家具・照明・雑貨とガーデンアイテム