cafe&dininng Rich épi(リッチエピ)エイや豚足も上品に美しく。食材のあらゆる可能性を追求するフレンチベースのカフェごはん

リッチエピ

 

「普段食べられないようなものを出したいんです。お客様にも『そんなん、食べられるん?』とか『初めて食べたけど、イケる!』とか、よく驚かれるんですが、そういう変わったものがやりたくて店を持ったんですよ」

 

リッチエピの料理の特長は、“驚き”にある。

 

「普通はイヤなんです。斬新な料理の方が面白いし、よそでやってることと同じことはしたくないなって話してて」

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

白、紫、緑、赤色とカラフルに彩られた魚料理。フレンチの王道のような見目麗しい一品だが正体は、エイ。エイって、食べられるの?

 

「エイのヒレの部分ですね。沖縄というより、日本ではあまり馴染みがないんですが、フレンチの本場、フランスでは結構食べられてるんですよ。韓国だと、あえて発酵させたエイがあるんですが、エイって日が経つとアンモニア臭がするんです。あれはちょっと食べられないですね。もちろんうちでは活きのいい新鮮なうちに出しますよ。エイって時間との勝負もあるけど、調理も難しいんです。トゲに毒持ってるから刺さると相当大変なんで。
それに、エイの中心はほとんど骨なので、ひとつずつ取り除いて掃除しなきゃいけないし。だから出す店は限られるんじゃないかな」

 

初めての味にやや緊張しつつ、口に運べば、白身魚に似通ったあっさりした味わいとまろやかなソースの香りがふわっと広がる。これが、あの悠々と泳ぐエイだとは。

 

「エイは、手間かけたら本当に美味しいんですよ。まずセロリやニンニクとか香味野菜と一緒に炊いて臭みを取るんです。エイは蒸した方が美味しくて、それにはヴァンブランソースっていう白ワインとケイパー、エシャロットのソースがよく合うんですよ。それに“野生のアスパラ”と呼ばれるソバージュを添えました。これは希少で、フランスから取り寄せたんです」

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

一風変わった料理を出したい。エイはそんな想いの表れだ。さらに、その見た目から、食べられるのか誰もが逡巡する点ではエイ以上のウツボまでも、若林さんの手にかかれば何種類もの料理へと変身する。

 

「ウツボも評判良かったですね。『こんな風に食べられるの、知らなかった!』って皆さんに言ってもらえましたよ。刺身で食べたり、唐揚げにしたり、スープにもして。スープは、骨から出汁を取るんです。ウツボは凶暴なだけあって、パンチの効いた出汁が取れます。のんびり泳いでる魚とは違いますね。とにかく手強いんです。人に噛みつくし、指挟まれたらチョン切れるし。釣り人からも嫌われてて、グワーッて動いて釣り糸をグッチャグチャにしちゃうし、釣れた他の魚を食べちゃう卑怯なやつなんですよ。だから普通は糸ごと切って捨てるような魚なんですけど、すごく美味しいっていうのは知ってたので」

 

エイもウツボも、だいぶキワモノのように感じるが、若林さんはそれぞれに合った料理方法で、抵抗なく食べられる洗練された一品へと昇華させることができる。

 

「元々は大阪や神戸のフレンチの店やカフェで働いてたんです。フレンチはいろんな素材に応用が効くから好きなんですよ。ソースを変えるだけで料理がガラッと変わりますしね。でも別にそれには囚われずに、料理は色々やりたいと思ってて。煮込み料理にはストウブ使ったりね」

 

若林さんの料理の基幹となっているのはフレンチ。だが、食材選びや料理方法はいたって柔軟だ。そしてなにより、食材の知識が豊か。

 

「魚は皮と身の比率のバランスが悪いと美味しくないんですが、どの魚が美味しいとか、どう料理したらいいかは、見たら分かりますね。身が柔らかいものは蒸したり、皮が美味しい魚は焼いたりとか。季節や場所で手に入る魚は変わってくるから、それに合わせて考えます。旬を大事にしたいので、『この魚だ!』と決めてから買いに行くんじゃなくて、市場に並んでる魚を見て考えるんですよ。今そこにアカジンがあったから、みたいな。僕、魚は料理作ったりするのも好きですけど、もう魚自体が大好きですね。泳いでる姿とか・・・」

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

魚の話になると若林さんの目は光を帯びる。詳しいのも、そのはず。若林さんは余暇のほとんどを釣りに費やす、釣り人でもあるのだ。

 

「20才過ぎた頃から、ずっと釣り好きですね。大阪でも休日には欠かさず行ってました。クブシミとかイカとか、獲れる魚が大阪と沖縄では違うかな。沖縄来てからは北部で、シーカヤックに乗って釣りに出ます。良いのが釣れたら、そのまま調理して店で出してますよ。なにより新鮮だし、皆さんにお出しする価格も抑えられますしね」

 

若林さんの魚好きは、ただ料理をして味わうだけではない。実際に魚が泳ぐ様子を見て、釣って、触るところからなのだ。知識と経験と、発想のバランスで独創的な料理を創りだす。そして、それは魚だけでなく、肉料理でも発揮される。

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

 

ころんとした可愛い形。普通のハンバーグのようだが、一口食べればジュワッと旨みが飛び出してくる。中を見れば、ミンチされていない赤身の肉がゴロッと入っていて、歯応えに。

 

「アグーの豚足を網脂で包んだハンバーグです。網脂っていうのは豚の腸の脂ですね。味に幅が出るから牛肉も少し入れてます。豚足は掃除して茹でて、骨を全て外して固めたものを四角く切っていくんですよ。豚足のグニュグニュした食感を味わってほしいので。これで包んで焼くことで、肉汁が外に飛びださないから、切った時に初めてジュワッと出てくるんです。小籠包とかは包んでるから肉汁が封じこめられますよね、ああいう期待をこめてます。このハンバーグは、試しにまずランチで出してみたんですよ。そしたら、あるお客さんは週に3回もわざわざ糸満から食べに来てくれたんです」

 

リッチエピ

庭で収穫したバジル。2~3時間かけてソースにする。

 

全ての料理に何かしらインパクトがあり、心躍る。そんな驚きを大切にする若林さんは、昨年秋に沖縄に移住。2014年4月末に「リッチエピ」をオープンした。

 

「やっぱり魚が好きで、海が好きで、沖縄に来ました。フレンチのレストランじゃなくて、気軽にちょっと変わったものも色々食べられる、あくまでカフェをやりたいなと思って。初めは海が見える店舗を探したんですが、ここだ!って思ったところがタッチの差で取られてしまったり…。でも、ここが見つかって、外人住宅というのも譲れない条件だったので、ここに決めました」

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

リッチエピ

 

オープンしてまだ数か月だが、やりたいことがどんどん出てきているという。

 

「魚に力入れたいとか、まだ漠然とした感じなんですけどね。沖縄の魚だと、僕も好きなアカジンが今のところ人気あります。最近は伊勢海老もやりましたね。沖縄ならではのマグブーやアオブダイも今、いろいろ試作してますよ。沖縄の人は肉好きな人が多いとも聞くし、肉でもやりたいことはたくさんあります。あとはドリンク。どこでも飲める国内のビールだけじゃなくて世界各国のビールも置いたりとか。デザートももっと種類を増やしたいし、これからですね」

 

若林さんの手にかかれば、どんな珍しいものも美味しいものへと変身する。大船に乗った気持ちで待って、味わえばいいのだ。リッチエピはフランス語で“豊かな穂”という意味を持つ。食における豊かさとはなんだろう。それは高級な食材を惜しみなく使うことだけではない。さまざまな食材の可能性を探り当て、楽しむことでもある。リッチエピの料理はそれを教えてくれる。

 

文/石黒万祐子(編集部)

 

リッチエピ
cafe&dininng Rich epi
浦添市港川2-12-7 No.50
Pあり

 

営業時間
ランチ12時〜15時(16時クローズ)
ディナー18時〜22時(要予約)

 

定休日 月曜、第1・第3火曜
電話:098-943-1713
HPhttp://www.richepi.com