bio cafe 清流舍心と身体に豊かな恵みをもたらす 沖縄マクロビオティック界の先駆者

清流舎

 

「うちのは沖縄そばっていったら、ちょっと語弊があるかもしれない。
カツオや豚など、動物性の素材は一切使ってないからね」

 

腰が強くツルツルと喉ごしのいいモリンガ麺は、栄養価の高い葉ものにイメージしがちな青っぽさが全くというほど感じられない。

 

「モリンガは東南アジアではポピュラーな植物で、免疫力を高めてくれる効果があるんです。うちの庭でも育てていますが、生でサラダにするのもいいんですよ」

 

スープは椎茸と昆布ダシを使った優しい味。ひと口ふくむたびに身体の中がじんわりと温まっていくのがわかる。

 

そして、ジューシーで弾力のある大豆の唐揚げ!
マクロビ料理だと知らなければ、鶏肉の唐揚げと思いながら食べ進めていたに違いない。
楽しい驚きと共に、これまで食べたことがない滋味深いそばを存分に味わった。

 

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自家製麺はオーガニックの小麦粉に、やんばるの山から切り出した薪を燃やしてできた木灰の上澄み液、石垣島の塩を加えて練っているという。
通常の白麺と、モリンガの乾燥粉末を生地に練り込んだ麺の2種類が用意されている。

 

“生命の木”という別名を持つモリンガには、なんと90種類以上もの栄養素が入っているというから驚きだ。

 

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庭に植えられたモリンガの木

 

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調理場がひと際慌ただしくなるランチタイム。
共に調理場に立つスタッフの様子を見てアドバイスをしたり、指示を出したりしながらも、手は片時も休めない。
茹でた麺を器に移し、具材をのせる。
その無駄のない手つきから、長年にわたる経験の深さが十二分に垣間見える。 

 

店の主、長嶺弘子さんは、日本で最初に開校されたマクロビ料理教室「リマ・クッキングスクール沖縄校」の師範もつとめている沖縄マクロビの第一人者だ。

 

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清流舍は今から約15年前、天然酵母のパンや自然食品などを扱う店としてスタートした。
それまで農業に勤しんでいた弘子さんは、家族の病気やアレルギーについて悩んでいたことから健康の大切さについて考え始め、転職を決意したという。

 

「子どもが4人いるんだけど、アトピーっぽくなったり蓄膿症になったり、兄弟げんかをすることも多かったんです。それを見ていると、身体や心の中に何か鬱積したものがあるように感じられてね。
有機農家のお友達からアドバイスをいただいたり、食に関する本をいろいろと読んで勉強して自然食を始めました。
でも、それだけではなかなか効果が得られなかったんです。

 

お店を始めてしばらくした頃、取引先の会社の方からマクロビのことを教えていただきました。それで食材の選び方や使い方、調理の仕方、食事の仕方について勉強して、家の食事を玄米食に変えてみたら、家族の体調や生活に良い変化が現れたんです。

 

当時の沖縄にはマクロビ料理のお店がまだなくて。うちで料理を作って出すことができたとしてもアドバイスまでできなければ意味がないと思い、教室に通ってしっかり学ぼうと思ったんです」

 

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現在高校生という一番下のお子さんが2歳の頃、弘子さんはリマ・クッキングスクールの門を叩いた。
子どもを預けて大阪校、東京校と1泊2日のトンボ帰りを繰り返し、約4年半をかけて初級、中級、上級、師範クラスを卒業。

 

「生活もかかっていたし、先生方の教えを吸収するために必死でしたね。
味にしても理論にしても、マクロビの世界は目からうろこというくらい衝撃的で面白かった。
最初に教わった基本食はいたってシンプルなものだけど、とにかくおいしかったです」

 

卒業後、弘子さんが地道に積み重ねた努力が実を結び、沖縄でマクロビオティックを広めて欲しいと、教室の運営まで任されることになったのが11年前。
沖縄では上級者コースまで取得することができ、お店の2階の部屋に泊まり込んで学ぶ県外からの研修生も多いという。

 

「教室は年2回の12回コースで、秋は11月、春は4月に受講生を募集しています。
普段の生活は誘惑も多いでしょうし、泊まり込んで勉強すると体調も早い段階で改善されることが多いのでお勧めです」

 

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芯までふっくらと炊きあがった玄米をはじめ、野菜や海藻、豆、キノコなどを使った数種のおかずやサラダ、汁物、ドリンクがつく日替りランチ。

 

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玉ねぎやかぼちゃなど、ランチプレートの中で一番シンプルな調理法と思えた焼き野菜にも味覚と心がしっかり反応し、今でもあの味を思い出すことができる。

 

「玉ねぎ、おいしいでしょ。
野菜は有機野菜、無農薬野菜を中心に使っていて、マクロビオティックの理論に則って調理しているんです。野菜のアクを火を入れながらうま味に変えるやり方とかね。
おいしいと喜んでいただくのは当たり前のことで、感動が生まれるような料理を提供することを心がけています。これがとても重要なことだと思っているんです」

 

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通常の白麺も。

 

マクロビ料理は、東洋に古くから伝わる「陰陽調和」という原理を基軸のひとつとしている。

 

「ほら、人にも陰気な人と陽気な人がいるでしょう? それと同じで食材にも全て陰と陽の性質があって、調理法もわけて考えることができるんです。
それぞれの素材が持つ個性を引き出すためにしっかりと考えてレシピを決め、陰と陽のバランスがとれた状態(=中庸)になるように調理し、一つのお皿の上で調和させていきます。

 

例えば野菜でいうと、ゴボウやニンジン、ダイコンなど、土の中で下に向かって育つものは身体を温める働きがあるので陽性の野菜。ゴーヤーやヘチマ、葉ものなど太陽に向かって伸びていくものは身体を冷やす働きがあるので陰性の野菜ととらえます。また、根菜の中でも、ダイコンとニンジンなど比較するものによって陰陽に差がでてくる。
そうやってバランスを考えながら、野菜を合わせていくんです」

 

野菜の重ね煮を作る場合は、陰性のものを下に、陽性のものを上にすると鍋の中で良い対流が生まれ、うま味が増す。
繊維に直角に切るのが陽性の切り方、並行に切るのが陰性の切り方で、それぞれの野菜の性質に合った切り方がある。
陰陽を考えながら野菜を切ると、適当に切った野菜よりも料理に深い甘みがもたらされる。

 

弘子さんから次々と飛び出す、豊富な知識。
マクロビの深い世界の入り口を、わかりやすく軽快なテンポで話すその声に、ぐんぐん惹き付けられていく。

 

 

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「マクロビは基本的に、食べてはいけないものがあるわけではないんです。私も普段の生活は玄米と野菜が中心ですが、10日に1食くらいは白身魚を食べています。赤身の魚は脂肪分が多いから、あまりお勧めできませんが。
それから、ごく稀にお肉を食べる時は野菜をたっぷりとり、お肉はほんの少しお付き合い程度でいただくようにしています。お肉はどうしても不純物を身体においていってしまうから、ご病気の方は肉も魚も徹底してとらないほうがいいと思います。

 

心と身体をバランスよく整え健康を維持するためにも、食べるものや食べ方もしっかりコントロールしていかないとね」

 

これまで敷居が高いように思っていたマクロビが、自分にとってできること、必要だと感じることから始めていいのだとわかり、一気に身近なことに感じられた。

 

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弘子さんはカフェや料理教室以外にも、食を通じて心身の健康をサポートし、気軽なコミュニケーションの場になればという思いから、さまざまなイベント活動も開催している。

 

「毎週水曜日、子どもや家族の食生活が気になっているお母さんたちに向けて、子育てサロンというイベントを開催しています。
親子で一緒に料理を作ったり、野草を摘んでクッキーやスコーンを作ったり、お茶会をしたりするんです。子育て中の悩みなんかも相談できるし、友達もできるから楽しいですよ。

 

今後は展示会なども考えていて、マクロビと合わせていろいろな方とコラボしていきたいと思っています。
それから、カフェでは酵素を摂取できるローフードやロースイーツ、新しいデザートなども作って提供する予定です。

 

仕事をするにも楽しみたいし、新しいものにもどんどん挑戦していかないとね。
やりたいことが多くてもう大変よ私(笑)」

 

 

周囲の人や物事を大切に、地にしっかり足をつけ、前向きに生きる人特有の美しい笑顔を見せて弘子さんはそう話す。

 

取材中、まるで自分の家に帰ってきたように店を訪れ、弘子さんとの会話を楽しむ女性の姿がよく見られた。
ただ身体にいい料理を出すだけではないこの空間に、多くの人が集まるのは当然のことだ。

 

カフェとして、料理教室として、人々のつながりを育む場所として。
ここには、日々の生活を良い方向に楽しく変えていける、幾多の出会いが待っている。

 

文・仲原綾子  写真・中井雅代

 

清流舎
bio cafe 清流舍
読谷村古堅851
098-956-4000
open 土曜〜火曜 11:30〜15:00 
http://seiryusha.com