しましまストアー島を思う気持ちがつくる八重山の宝物と、全国から取り寄せたかわいい雑貨

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波照間のモチキビ、西表島の黒紫米、石垣のハーブティ…。小さな店舗の真ん中には、八重山のお土産ものが並ぶ。そのテーブルを、古くて味わいのある生活道具や色とりどりの食品たちが囲む。

 

今年(2016年)6月、石垣島の市街地に波照間島出身の夫婦が小さな雑貨店を始めた。店主の登野盛(とのもり)敬子さんが思い描くのは、観光客も地元の人も楽しめる雑貨店。

 

「八重山の本当にいいものを紹介したいと、お土産ものは主人が集めてきたんです。八重山諸島10島のうち、ほとんどの島を巡って探しました。それから商工会の繋がりで、先輩がこだわって作っているものも仕入れています」

 

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一方敬子さんは、地元の人向けのものセレクトする。思わず目を引く可愛らしいパッケージの食品や、昭和30年40年代に作られたアンティークの食器、インドの手紡ぎの柔らかなクロス、おばあちゃん手縫いの着物の古布の雑巾など、説明の書かれたカードを読むだけで、へえと楽しくなる。

 

「パッケージがかわいくて、友達にプレゼントしたくなるようなものや、私が旅先で見つけたもの、昔から好きだったものなどを置いています。このパスタは千葉産で、実家にいた頃から食べてたものです。うちの父は結構グルメで、父がこのパスタを見つけてきたんです。もちもちして生麺みたいな歯ごたえで美味しいですよ。キリンラーメンはパッケージがかわいいし、このべっぴんラーメンなんてラーメンなのに無添加で、人気がありますね。こういうの、みんな面白がってくれるかなと思って」

 

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雑貨や食品でみんなを楽しませたいと思っている敬子さんだが、店を開いたのには大きな理由がある。それは、波照間島の黒糖を使った黒蜜を紹介したかったから。その黒蜜は、ご主人の龍さんが作るものだ。

 

「波照間の製糖工場から仕入れた黒糖を、小さな工場で主人が1人で丁寧に作っているんです。水飴などを加えず、原料は波照間の黒糖と波照間の水だけです」

 

その味は、スッキリとしてクセがなく、甘ったるい感じがない。甘さの中に、塩味も感じられるのは、波照間の潮風が混ざっているからだろうか。甘さだけが際立つ平坦な味ではなく、ほろ苦さや滋味深いコクもある。

 

「波照間の黒糖は、アルカリ性の土壌のせいか、エグミがなくて、なんか深い味わいなんです。沖縄だったらどこでも製糖工場があるじゃないですか。石垣にもあるんですけど、石垣の人でも、『波照間の黒糖が一番美味しい』って言いますね」

 

敬子さんは、そう言ってリーフレットを差し出してくれた。それには、龍さんの故郷、波照間島と特産の黒糖、黒蜜への熱い思いが詰まっていた。

 

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波照間産黒糖の量り売りもしている。

 

波照間島は、日本最南端の島で、人口約500人。平らな地形であることから、そのサトウキビは海風をたっぷり浴び、ミネラルが豊富という。丁寧に刈り取られたサトウキビを、24時間以内の新鮮なうちに黒糖にする。その黒糖を、灰汁をとりながらじっくり弱火で8時間煮こんでは、自然に冷まし、また8時間煮込んでは冷ますを繰り返し、ようやく出来上がる。

 

漆黒に輝く美しい蜜。手間暇かけられたそれは、ダイヤモンドの印の貼られた瓶の中で、なんだか誇らしげに見える。

 

「ダイヤモンドのマークにしたのは、島の宝という意味を込めたんです」

 

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店内には腰掛けられるスペースも。全国から集めたサイダーなどを飲める。

 

龍さんがなぜ波照間島で黒蜜を作るようになったのか、その経緯を敬子さんが話してくれた。

 

「主人は、学校を出た後ほどなく故郷の波照間島へ戻って、黒蜜作りを始めたんです。それまで島のお土産といったら製糖工場の袋に入った黒糖か、泡盛の泡波しかなかったから。もっと波照間を代表するようなお土産を作りたいってことで」

 

高校がない波照間島では、15歳になると進学のため皆、島外へ旅立つ。そのまま島外、県外に残り、島に戻らない若者が多いという。卒業してUターンした龍さんが、波照間を代表するお土産作りに取り掛かったのは、波照間島をこよなく愛しているからに他ならない。

 

「お土産を作ることによって、もっと波照間を知ってもらって、もっと人が沢山来る島にしたい。そうすれば交通の便がよくなって、天候に左右されない島になるんじゃないか、もっと暮らしやすい島になるんじゃないかと主人は思っているんです。波照間島は石垣島から船で1時間くらいなんですけど、海が荒れると1週間とか船が出なくなるんです。そうすると観光客が来ないし、島の暮らし自体が、天候に左右されてしまうんですよね」

 

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島のために、黒蜜作りに励んだ龍さん。一方、八重山出身でない敬子さんが、この石垣島で店を営むことになったのは、波照間島への旅がきっかけだった。

 

「以前は東京のテレビ局で撮影の仕事をしていました。照明をやっていて、重いのを持つし不規則だし、きつかったですけど、毎日違う現場に行けて楽しかったですね。でも東京はなんか便利すぎてしまって。元々アナログ人間なので、コンビニがないような不便なところに一旦身を置いてみたいっていうのがあって。前に一人旅でお世話になった波照間の民宿で、2年間だけと決めて住み込みで働くことにしました。旅でお世話になった時、宿のお母さんが一人で切り盛りしていて、すごく忙しそうだったから手伝いをしていたんです。他の宿泊してるお客さんにも『ここで働いたら? お母さんに聞いてみなよ』なんて勧められて。すっかりその気になって、自然な流れで、会社も迷いなく辞めました。その民宿で、配達やら、お客さんを港まで送迎することなどをやっていたんですけど、主人が島に帰ってきた時に、港で私を見かけたみたいで…」

 

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帰ってきたばかりの龍さんに猛アタックされ、「気づいたら付き合ってた」という2人。しかし敬子さんは、なかなか結婚に踏み切れずにいた。

 

「最初から地元の千葉へ帰ろうと思っていたし、地元へ帰ったら、また元の撮影の仕事に戻るつもりだったんです。波照間は、”波照間ブルー”って色があるほど、海の青が何層にもなっていて、とっても綺麗だし、手付かずの自然はあるし、島の雰囲気もすごくいいところ。でもやっぱり交通の便がよくないのがネックで。波照間にいた頃、友人が私に会うためにわざわざ内地から来てくれたんですけど、天候が悪くて、石垣から1週間船が出なくて。それで結局私に会えずに帰ってしまったということがあったんです。私も、何かあった時に、すぐに実家に帰れる場所にいたいと思っていたので…」

 

2人で出した結論は、龍さんは波照間、敬子さんは石垣島でそれぞれの仕事をし、週に2日程、龍さんが石垣で過ごすという週末婚のようなスタイル。このスタイル、龍さんにとってもいい効果があったという。

 

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「主人は波照間では仕事のことばかり。朝早くから夜遅くまで工場にこもりっきりの生活なので、石垣に来ることで休めて、仕事とプライベートの切り替えができるみたい。主人の黒蜜、石垣島のお店にも何軒か卸しているんですけど、これまで注文が入っても、船の状況でお店に並ぶまで1週間くらいかかることがあったんです。でも石垣でこの店をするようになってからは、ここにストックして私が配達できるので、注文があったらすぐにお店に届けられるようになりました」

 

当初、石垣島にこのしましまストアーをオープンさせると言い出したのは、ご主人の龍さん。「自分でお店をするつもりはなかった」という敬子さんだが、インテリアや扱う商品を決めていくうち、どんどんこの店が好きになった。ピンときたものをセレクトしで店に置けることになった時はとても嬉しく、今、毎日が楽しいという。今後は、オリジナルのTシャツなども作っていき、さらに愛着の湧く店にしていきたいのだそうだ。

 

黒糖や黒蜜…、島の宝物はそれだけでない。波照間を愛し、よくしていきたいという敬子さん夫婦の若くて熱い力もそう。波照間が生んだ幾つもの宝物が、島の生活を変えていくに違いない。

 

写真・文/田中えり(編集部)

 

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しましまストアー
石垣市大川203
080-6488-3639
10:30〜19:00
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