Tamie’s KITCHEN(タミィズキッチン) アジアの中心、沖縄の中心から、野菜の美味しさ、食の楽しみを発信するビーガンレストラン

タミーズキッチン

 

「ベジタリアンって、野菜、ベジタブルを食べる人という意味ではないんですよ。本来はバイタル、つまり生命力の強いものを食べる人っていう意味なんです。古代の人は肉を食べて生命力を感じるとは言わなかった。野菜を食べて生命力を感じてたんですね」

 

アメリカンビレッジにあるビーガンレストラン、タミィズキッチンオーナー、タミィさん(広河民さん)の話には、人を惹きつける魅力がある。

 

野菜は、生命力。

 

一番の人気メニュー、“本日のスペシャルプレート”を見れば、納得できる。それぞれが鮮やかな色で存在感を示していて、水々しく、その力が皿から溢れんばかりだ。

 

「地面から上にあるもの、真ん中くらいのもの、地中のものがあるか、葉物があるか、球体があるか。あと元々絵描きだったこともあって、色のバランスにも気を配りますね」

 

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この日のプレート。ソイミートとキドニービーンズのチリコンカン、小松菜の甘酒ドレッシング、クスクスとディルのサラダ、セロリのナムル風、人参と島人参のキャロットラペなど。

 

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プレートには、スープと、無農薬玄米ご飯か天然酵母パンがつく。

 

料理の主役は野菜。だから、そこはしっかりと吟味する。ほとんどが沖縄県産の無農薬で、新鮮なものばかりだ。料理の味は、ただ美味しいというだけでなく、この地ならではの多種多様な人種の舌を満足させられるものかどうかが重要と言う。

 

本日のプレートであれば、チリコンカンが象徴的と、シェフの高木さん。

 

「場所柄、外人のお客さんも多いんですよ。だから日本人にも外人さんにも満足してもらえる味を目指しています。今日のチリコンカンは、チリコンカンらしくガツンとした味ですけど、その味を出すのに、日本人の好きな味噌を使って、まろやかさも出しました」

 

確かに、満足できるしっかり目の味ではあるが、決してくどくはない。風味豊かな味噌や、さっぱりとしたコクの大豆ミート、みじん切りにされた旨味たっぷりの野菜が、ふんだんに使われているからだろう。

 

チリコンカンの周りを彩る付け合せも、植物性のものだけながらバラエティに富んでいる。蒸された小松菜には、ふんわりした甘みの甘酒ドレッシングがまとい、クスクスのサラダには爽やかなディルがアクセントをつける。日本人が好きな発酵による自然の甘み、どちらかというと外人が好む力強いハーブが、共存している。

 

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ビーガンソフトクリーム しっかりとして優しい甘み、さっぱりとした後味。

 

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タミィズキッチンのご飯は、本当に植物性だけなの?と疑うほどに食べ応えのある味。ケーキなどのスイーツも驚くほどカラフルだ。その上、どれもお腹いっぱいになる十分な量。よくあるビーガンやマクロビオティックのお店の料理は、薄味で、茶色いものが多く、量も控えめ。こんな常識を覆すのが、タミィズキッチンだ。

 

「ここはビーガンの人の専門店ではないんですよ。ビーガン料理専門だけど、ビーガンの人のためだけの店じゃない。色んな人に来ていただきたいんです。ビーガンの人もそうじゃない人も、あらゆる世界中の宗教の人も来れる。例えば仏教で五葷(ごくん)抜きっていうのがありますけど、五葷って、ネギとからっきょうとかニンニクとか、宗教的に興奮しやすいものですね。五葷を抜いて欲しいという要望があればもちろん対応しますよ。ビーガンの人はステーキ屋さんには行けないかもしれないけれど、お肉好きの人は、今日は軽めにしようってこっちには来れるんです」

 

みんなが、世界中の人が、いかなる宗教の人でも、訪れることができるビーガンレストラン。そうするのは、食はあくまでも楽しみなんだという、タミィさんの根源的な思いがある。

 

「ここはレストランなので、食を楽しむ場所なんです。食べることってそのまま私達の血になり、血になることは、私は叡智の知にもかけて、知性にもつながると思うんです。食べてそのまま血になり、知にもなるって、喜びそのものじゃないですか。だから楽しくしたいし、主義主張に縛られるのはつまらない。主義になってしまうと、これは食べない、NO!という世界になってしまうでしょ。必要なときは食べるかもしれないし、欲したら食べるかもしれない。狭くせずに、広がるようにしていきたいんです」

 

タミィさんから感じるのは、これはダメ、あれはダメという窮屈さではない。食に対する寛容さだ。ただ、野菜だけでもこれだけ美味しいものができるんだよと知ってもらえたら、それだけでいいのだと言う。

 

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寛容さは、食に対してだけではない。これは自分のレシピだ、ここは自分の店だという執着がない。スタッフに対しても寛容なのだ。

 

「以前住んでいた東村では、個人個人の体調に合わせた料理を作ったり、ワンデーシェフのようなこともしていました。その時のレシピを使って、店のオープン前に私が作って、レシピそのものをポンっと渡したんです。それをもとに美味しくなるんだったら、いくらでも進化させていいとスタッフには言っています。これが私の味だっていうのはないですね」

 

例えば、“本日のスペシャルプレート”は、スタッフが自由に作る。

 

「プレートを自由に作れるって、スタッフにとったらすごいモチベーションじゃないですか。だからスタッフも自分を表現できるし、発揮することもできる。自分を発揮できていないと、使われてるって感覚だから、疲れるし、楽しい仕事はできないですよね。楽しく仕事ができてないと、その波動が食べ物に入ってしまいますからね。その場合は話をさせてもらいますよ(笑)」

 

季節の行事にちなんだフェアを頻繁に開催するが、その料理作りもスタッフに任せる。

 

「フェアーってお楽しみだし、スタッフの腕の見せ所じゃないですか。肉まんを販売したり、ヌードルフェアーをしたり。『肉まん食べたいな〜』とか『ラーメン食べたいな〜』とか言って、スタッフに試作してもらいます(笑)」

 

さぞかしスタッフにはプレッシャーでは?と思ったが、シェフの高木さんは楽しそう。

 

「一番大変なのは、イベントがしょっちゅうあることかもしれませんね。終わったと思ったら、はい次これ〜ってすぐ来るから(笑)。でもこのペースに慣れました。色々自由にやらせてもらえるので、日々成長できているのを感じますし、大変なことより楽しいことのほうが、ずっと多いですね」

 

ビーガンやマクロビオティックについて造詣が深くて、しかしそれにとらわれることなく寛容。スタッフに対しても全幅の信頼を寄せている。そんなタミィさんだが、そもそもビーガンになったのは、自身の出産がきっかけだった。

 

「30歳を機にベジタリアンになりました。10代のときに、末期癌の患者さんが、食で健康体に戻ったっていうレポートを読んでから、30になったらベジタリアンになろうって決めてたんです(笑)。でも直接のきっかけは、自分が30になって、子を宿したいと思ったときですね。それまでの食生活の反省があって、まず土壌である自分の体をきれいにしなくちゃって思ったんです。私、自宅で出産してるんですよ。それはお友達の病院でのお産の話を聞いて、非常に嫌だと思ったから。お医者さんの対応が嫌だったとか、眩しいところで体を固定されたとか、お産がちょっと遅れたら、病院のスケジュールの都合で促進剤を使われたとか。生まれたら、赤ん坊は激しく泣くし、母子はすぐに引き離されてしまうし…。人生に1回か2回くらいのチャンスなのに、そんな思いをするのは惜しいなって思ったんですよね。それから、お産の歴史とか読んだりして。戦前までは80パーセントが自宅出産だったのに、戦後は80パーセントが病院での出産なんです。本来お産は、お産婆さんとか家族としていたものなのに、いつの間にか病院に命を委ねるものになってしまった。私は、お産はとっても大切な時間だから、大切な家族と静かに迎えたいなって思ったんです。だから自宅で産むには自宅で産める体にしなきゃと、5年かけて体を変えたんですよ」

 

タミーズキッチン

 

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店頭では無農薬野菜の販売も。

 

タミィさんは、頭で勉強した知識だけで話をしない。自分の実体験から得たことの話をする。

 

「それから食養生の勉強を始めたんですけど、面白かったのは、私、大やけどをしたことがあって。その時に食品で患部をケアして、食べるものをコントロールしたんですね。そしたらあんなにやけどしたのに、夜になったら楽になったんです。順調に治ってきて3日くらいしたとき、先生から、砂糖や果物を食べたら痛みが出るから、絶対に気をつけなさいよって言われたんです。でも油断して食べたら、見事にまた痛みが出て眠れないほどでした。それから自分で人体実験を色々してみたんですよ。本に書いてあることが、本当かなっていつも自分の中で疑問があったんで。だって勉強したことだけに頭が縛られるのはつまらないでしょ。真冬にバナナばっかり食べたらどうなるかとか。凍え死にそうになりましたよ。背中にカイロ5個貼っても震えました(笑)」

 

こんな実験を繰り返して、食の大切さを身を持って実感した。

 

「バナナだけ食べて体があそこまで冷えたのは、肉食をしてなかったからですけど。意識的に食べなかったら、食と体調の関係に気づけないですよね。意識的に食べていたら、昨日こうだったからこのバランスが悪かったかなって気づけるでしょ。無意識的に、テレビを垂れ流すように食べてたら、気付きにくい。食べる食べない、何をどう食べるか食べないか、食だけは自分でコントロールできるんですよ。太陽だったり土壌だったり、色んな要素で食べ物はできてるじゃないですか。食べたものが自分の血になり、知になるんだから、私達は大地と繋がってるんですよね。だから、意識して食べることがすごく大切で、生き方が変わってくると思うんですよ。こういう話をすると説教じみた感じになっちゃうんですけど(笑)、それはもう『いただきます』に凝縮されてますよね」

 

タミーズキッチン

 

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食の大切さを実感しても、自分でレストランをすることまでは考えていなかった。北谷にタミィズキッチンを構えたのは、タミィさんに与えられた役割だったと言う。

 

「私、東京育ちなんですけど、東京から最初はやんばるに来たんです。やんばるはすごくエキサイティングで刺激的でした。光の海だったり、太陽の熱だったり、都会で感じる自然と違って、もっと強い。自然に近い生活で、力が戻ってきた感じでしたね。東京では、仕事も好きだったし、お友達も好きだったし、全部よかったんだけど、なんか自分を生きてなかった。東京にいたときは、自分の本質を邪魔するものに囲まれていましたね。ああしなきゃ、母親としてはこうしなきゃ、みたいな固定概念があるじゃないですか。そういうノイズに囲まれてたんですけど、沖縄に来たら、自分の内側がうるさくなくなったというか。やんばるのこの大自然の中で暮らしていきたいと、家も買ったんです。畑やったり、セミナーやったりして、楽しかった」

 

しかし、そんな楽しい生活も、目に見えない力で終わりが来てしまう。

 

「そういう生活を始めたら、お知らせが来て(笑)、それはあなたの生き方じゃないですねーって、ボンってここに来たんです。そういう気づきや直感があったとき、私、抵抗するんですよ、私自身はこう思ってるんだって。でも抵抗すると体がしんどくなるときがあるんです。今回は翌日から体調がみるみる悪化して、死にかけたんです、本当に。初めて入院しました。20年ぶりに薬を飲んで、もうヤバイ、命を取られるって。何が何だがわからないけど、もうこれしかないんだって覚悟を決めたら、みるみる元気になったんです。ここに来てお店をやるよってなったら、メッセージの嵐ですよ。だから私の意思はちょっと置いておいて、自分ではそう思えなかったとしても、与えられたものが絶対私にとって最善になるものと信じて、向かって突き進むというか。そういう信念は日々ちょっとずつ固まってきています。今回はわかるんですよね、これが自分の役割だって。聖なるものからの計らいなんだと」

 

 

世界中の人へ向けて、野菜の美味しさ、食の楽しさを発信する。様々な人が集まる北谷アメリカンビレッジの、観覧車の麓というわかりやすいオープンな場所からだ。これがタミィさんの役割。

 

「こういうマクロビとかビーガンの店って、ちょっとわかりにくい辺鄙なところにあるじゃないですか。ここまで来るっていうぐらいの人には届ける、みたいなの。そういうつもりじゃなくても、結局わかる人にだけ発信してしまってる。でもここは違うんです。沖縄はアジアの中心に位置してるでしょ。で、その沖縄の中心の中部から発信するってことは、とっても意味があると思うんですよね」

 

文/田中えり(編集部)

写真/青木舞子(編集部)

 

タミーズキッチン

 

Tamie’s KITCHEN(タミィズキッチン)
北谷町美浜15-69 カーニバルパークミハマ214
098-989-9316
11:00〜22:00(平日〜21:00)
11:00〜15:00(火)
close 無
http://tamies.net