ととらべべハンバーガー 八重岳の緋寒桜で燻した極厚ベーコンに、手作りバンズ。我が子のように大切に育てた、ド迫力ハンバーガー

 

 

“「とと」は、古い日本語で「お父さん」、「べべ」は、フランス語で「赤ちゃん」。親が子を育てるように、愛を込めてハンバーガーを作る。そういう気合いを店名に込めました。”

 

インパクトある店名について、聞かれることがよほど多いのだろう。店の柱には小さく、ととらべべハンバーガーの由来を説明する掲示がある。

 

“とと”である店主、佐藤健太さんは、“べべ”であるハンバーガーを、その由来通り、手間暇かけて大切に育てる。

 

「ベーコンは、塩とスパイスに5日間以上浸けて、丸1日塩出しして、6時間かけて燻します。八重岳の緋寒桜のチップで燻してます。台風で倒れた桜の片付けを手伝ったりして、桜の木をもらってくるんですよ。最近、ベーコンと言っても、ちゃんと燻さず液に浸けるだけとか、塩漬けも注射で済ませるとかあるじゃないですか。そういう手抜きをせずに、ちゃんと作るってことにこだわっています」

 

手間暇をかけるのは、ベーコンだけでない。バンズは毎朝その日の分を手作りする。

 

「他へ委託して作ってもらうことも考えたんです。でも原価の関係で、バターがマーガリンになってしまったり、ランクの低いものにならざるをえない。そういうの嫌なんですよ。パン屋さんが毎日パンを焼くように、バーガー屋もバンズを自分で作らなかったら、何を作るんだってことにもなるし。だからバンズは自分で作って焼くって決めてしまったんです。すごく大変で、途中後悔した時期もありましたけど(笑)」

 

パティの味を引き立てるソースも手作りだ。

 

「もとぶ牛でだしをとって、国産の玉ねぎ、りんご、人参、大根、にんにくのすりおろしとブレンドしています。自家製マスタードも加えてます。化学調味料は一切使ってないですね」

 

佐藤さんは、まっとうにハンバーガーを作る。ごまかすようなことはしないのだ。

 

スペシャルバーガー

 

ととらべべハンバーガーの大本命、パティとベーコン、シャキシャキレタスに厚切りトマトが挟まったスペシャルバーガーは、圧倒されるド迫力。一番主張するのは、やはりベーコンとパティの肉の味。ベーコンからは、燻された肉の脂のスモーキーな香りが口いっぱいに広がる。粗挽き肉を使ったパティは、ステーキを噛んでいるような歯ごたえがしっかりあって、肉々しさがこの上ない。よくよく味わうと、パティからも、燻製のいい香りが漂う。

 

「パティにもベーコンを大きめにカットして入れてるんですよ。パティは9,6ミリ角の粗挽き肉を使っていて、そこに角切りベーコンと和牛の牛脂を入れてるんです。お肉は150グラムありますね」

 

スペシャルバーガーと人気の双璧をなす、もとぶ牛バーガーのパティは、和牛の美味しさを十分に味わえるよう、シンプルに。

 

もとぶ牛バーガー

 

「もとぶ牛バーガーのパティには、ベーコンは入れてません。味付けも塩だけで、肉自体の美味しさを存分に味わってほしいですね。もとぶ牛の霜降りの部分とスネの部分をブレンドして、やはり9,6ミリの粗いミンチにしています。一番美味しいのは、脂の乗ってる霜降り部分。でもそれだけだと歯ごたえがないので、すね肉を混ぜることで、肉々しさも出してます。見た目にインパクトがあるよう分厚く成形しているんですが、お客様を待たせないよう火を通しやすくもしています。成形の仕方に秘密があるんですよ。成形が大変なのと、もとぶ牛自体の供給がそんなに多くないのとで、毎日10食の限定メニューです」

 

 

 

スペシャルバーガーも、もとぶ牛バーガーも、バンズに肉の乗った部分と野菜の乗った部分、2つに分けて供される。お客自身が最後の仕上げをするためだ。

 

「うちはトッピングビュッフェをやってるんですよ。ゴーヤのピクルスと、茹で卵スライス、オニオンフライを、パティの上に、好きなだけトッピングしてほしくて。タバスコやワインビネガーなどの調味料も置いてますので、好きな味にしてください。ここで食べるのが2回め3回めの人も、楽しんでもらいたいんです。あ、でもパティにケチャップは禁止です。ケチャップをつけると、せっかくの肉の味がチープな感じになってしまうんで(笑)」

 

トッピングビュッフェは、実は、スタッフの作業効率化の過程で生まれたもの。

 

「スタッフが独立したり、突然いなくなったり(笑)、立て続けに減ってしまったんですよね。新たに雇うことも考えたんですけど、せっかくだから残ったスタッフだけでやっていける仕組みを考えようと。券売機を入れて、ドリンクもセルフにしたんです。ハンバーガーも、お客様に取りにきて頂くスタイルにして。その代わりに、トッピングビュッフェコーナーを作ったんです。取りにきたついでに、そばのテーブルでトッピングして頂いてます」

 

佐藤さんは、スタッフが減るというピンチを、お客に協力してもらう形で乗り越えた。ただ、協力してもらうだけでなく、新たな楽しみを付け加えることも忘れなかった。

 


 

佐藤さんは、変化を恐れない。むしろ楽しんでいる節さえある。それは、これまで歩んできた人生もしかりで、自ら変化の大波に飛び込んでいるように見えるのだ。

 

「僕、出身は北海道の興部町(おこっぺちょう)というところなんですよ。オホーツク海に面した、ものすごい寒いところです(笑)。そこで獣医師をやっていたんです。乳牛をメインにやってました。かみさんと、寒いところはもうやだね、暖かいところへ引っ越すかって、沖縄へ来たんです。名護の家畜保健衛生所で半年間臨時職員として働きました。引越し代を出してくれるって言うんで(笑)」

 

沖縄でもそのまま獣医として働くのかと思いきや…。

 

「今一番やりたいことが獣医じゃなかったら、獣医にこだわる必要ないのかなって。興部町っていう限られたところでは、それなりに活躍していたと思うんですけど、言い方悪いですけど、親に買ってもらった免許じゃないですか(笑)。勉強したのは僕なんですけど、大学6年間の学費は親が出してる。自分がどれくらい社会に通用するのか、自分に免許もなくてゼロになったとき、自分は何かできるのかなって。当時はそういう思いが強かったんです」

 

獣医という仕事に、少なからず虚しさも感じていた。

 

「獣医はなりたくてなった職業だし、仕事自体も楽しかったし、僕に合ってるのかなとも思ってました。乳牛って産業動物だから経済の効率を真っ先に考えるってわかってはいたんです。でも、牛を飼うっていうのはそうじゃないだろっていう思いがありましたね。何回も何回も子供を産ませては乳を絞るんですけど、おっぱいの出がよくなるように、濃い餌をあげるんです。牧草はあんまりエネルギーなくて、とうもろこしって人間も食べるくらいだから、エネルギーが高い。そういう穀類をいっぱいあげるんですよ。でも穀類をいっぱいあげるとすぐ病気になっちゃうんですよね。食べるもののバランスがすごく大事なんです。だけど、これだけの牛が病気になっても仕方がないってサバサバした感じで。規模が大きい酪農家だと500頭とか一気に買ってくる。そうすると牛1頭死ぬことの価値がとても小さいんですよね。一生懸命治療しても、どうせまたっていうのがありました。そういう不満がなかったわけではないです。そういうところから逃げてきたっていうのもありますね」

 

 

 

「牛を救う側から、食べる側になったってよく言われるんですけど(笑)、繋がってますよね。獣医師は食を確保するのが目的なんだし。沖縄に来たときは何も決めてなかったんです。名護で半年間働いてる間も、ハンバーガー屋をやろうって決まってなかったです。北海道にいたときから趣味で燻製をやってたので、ベーコンは作れる。これでパンも作れるようになって、この2つが美味しかったらバーガー屋でなんとかやっていけるんじゃないかって」

 

27歳で飛び込んだ飲食業界。それまで飲食店でアルバイトをした経験もなかったのだから、苦労がなかったはずはない。

 

「最初、パンは全然うまくできませんでしたね。パン職人のなんちゃらって本を買ってきて、本に書いてある通りやってもうまくいかなかったです。焼いてみたら、全然膨らんでなくて真っ黒焦げで、チョコレートみたいになってしまったり。でも趣味でパンを焼いてる人もいるくらいなんだから、練習すれば絶対できるようになるって信じてました。1ヶ月くらい練習してようやく納得できるものが作れましたね」

 

アボカドチーズバーガー

 

 

自分がどれだけできるのか、自分の挑戦のために始めたととらべべハンバーガーだが、始めてみて、1人の力の小ささに気がつく。

 

「自分1人じゃできない、結局、人に頼らないと何もやっていけないってことがわかったんですよ。人にいかに頼れるかってことが、その人の力なのかもしれないなって思いますね。仮に100人の人に頼れたら100倍の力になるけど、誰にも頼れなかったら、その人自身がどんなに優秀でも結局2倍3倍が関の山じゃないですか。かみさんやスタッフがいなかったら、ここまで店を続けてこれなかったですね」

 

この気づきがあって、お店で一番大事にしてるのは、味でもお客でもなく、スタッフと言い切る。

 

「お客さんが『美味しい』って笑顔になってくれるのが、もちろん一番励みになるのは間違いないです。でも自分の中で何が一番大事かって言ったら、スタッフですね。100人のお客様より、1人のスタッフのほうが、絶対大事です。僕達が気持よく働けているかってことを大切にしています。だって、辛くて影で必死になって作ってる料理なんて、食べたくないでしょう? 気持よく働けて初めて、心から笑顔で提供できますもんね」

 

 

佐藤さんの、変化を恐れずチャレンジする姿は、遊び心を伴って、“今月のバーガー”メニューに反映されている。“今月のバーガー”とは、月替りのお楽しみバーガーだ。

 

「去年の12月は、クリスマスジャークチキンバーガー。燻製が得意なんで、チキンをちょっと燻製にしたバーガーです。1月は、もちチーズ明太バーガーです。普通の切り餅をバーガーに挟みました(笑)。2月は、バレンタインチョコレートバーガーでした。パティをハート型にして、そんなに甘くないビターなチョコをソースに混ぜて。これ、全然出なかったんですけど(笑)、美味しかったんですよ。3月は、UFOバーガーです。ブロッコリーとミニトマトを側面に、温泉卵を真ん中に乗っけて、見た目をUFOっぽくしようと思っているんです」

 

誰も思いつかないような奇想天外のバーガー。佐藤さんは面白いことを常に考えている。3日に1度、女の子から電話がかかってきて、ニュースを聞けるサービスはどうだろう?とか、フマキラーのノズルに水鉄砲みたいなのを付けて、虫をポインターで捉えて銃みたいに殺虫剤が飛んだら面白いんじゃないかとか…。そんなことがしょっちゅう頭の中を駆け巡っているのだ。

 

「面白いことをしたいんですよね。なかなか形にならないんですけど、形になったら、それに吸い寄せられて、面白い人が集まってくるんじゃないかなって。そしたらもっと面白いことができるじゃないですか」

 

佐藤さんの名刺には、「すごいことになりそうだ」との文字。その文字には、自分への期待と励ましが滲む。ハンバーガーは、ごまかすことなく、丁寧にちゃんと作る。だけど、面白いことがしたくって、ユーモアたっぷりに楽しみながら、挑戦もしていく。

 

“ととらべべ”という、“父と子”という名のハンバーガー。幼い息子さんから“とと”と呼ばれている佐藤さんは、“べべ”である息子さんに、自分の生き様を見せているようにも思う。“ちゃんと作る。でも楽しく面白く”だ。

 

文/田中えり(編集部)

写真/青木舞子(編集部)

 

 

ととらべべハンバーガー
国頭郡本部町崎本部16
0980-47-5400
11:00〜15:00
close 木・金
http://totolabebehamburger.com