Charles Nodier (シャルル ノディエ)新しい物にはない魅力を伝える、ホンモノの古さを求めて




棚の中で肩を寄せ合う瓶は、どれも時を経た独特の風合いをまとっている。
その瓶が使われていた時代、空気、人々の様子まで背中にしょっているような。
眺めていると、ふっと意識が瓶の向こう側に飛んでいきそうになる。


「小さい時からおもちゃで遊ばず、瓶で遊んでいましたね。
お人形に見立てたり、色をつけた水を入れたり。」
と、オーナーの呉屋さん。


「この子、危ないんですよ。私がいない時を見計らって、私の大事な香水の中身を捨ててその瓶で遊んだり。こっそり隠してあったのに!」
と、呉屋さんのお母さん。


小さい時から瓶好きとは、筋金入りだ。








呉屋さんは22歳という若さで、松山に「Trading Post (トレーディングポスト) 」というお店をオープンさせた。
商品は古着が中心で、時代に合っていたこともあり、お客さんに喜ばれた。
しかし、時が経つと常連さんたちがミセスになり、需要の方向性も変わってきて新しい服も買い付けるようになったが、そのうち、販売している洋服ではなくディスプレイに使っていた家具や雑貨に目をつけたお客さんから、「欲しい」「譲ってくれないか」と声をかけられるようになった。


それからアンティークを中心に扱うようになり、3年前に宜野湾に移転した。


「父が仕事で海外勤務になることが多かったので、横文字への憧れが強かったのかも。」
呉屋さんはアンティーク好きになったきっかけを、そう語る。


「中学生の頃から革のトランクを探しにバスで沖縄市まで行ったり、軍の払い下げのお店に行ったりしてました。」
その頃、夢中になって見ていたのが「大草原の小さな家」という西部開拓時代のアメリカを舞台にしたドラマ。


「すごく面白くてハマりました。その中に『トレーディングポスト』という名前の店が出てきて。開拓時代、 開拓民やネイティブ・アメリカンの人たちが物や情報を交換した店がそう呼ばれていたらしくて、そこから名前をつけたんです。」


店の名にふさわしく、お客さん同士が仲良くなってアンティークの情報や、ディスプレイのアイディアを交換しあったりする光景がよく繰り広げられていたという。
宜野湾への移転を機に、店名はフランスの散歩道からとった「シャルル・ノディエ」に変わったが、その光景は今も変わらない。











北米最大のアンティークショーが開催されるオレゴン州ポートランドに、年に3回買い付けに行く。


「できる限りヨーロッパのものを仕入れるようにしています。ポップやモダンなものではない、雰囲気のあるものが好きですね。」


夏に出店するブースは1800を超えるという大規模なアンティークショーで、多くの人に受け入れられる商品だけでなく、コレクターやマニア向けの商品も買い付ける。


「表に出ている商品は一般向け。マニア・コレクター向けの商品は、常連さんと個人的にお話し、即決されてすぐ取り置きになるので、店舗に出すことは殆どありません。一点物も多くて。」





左は昔の人が指に下げてメモ帳と使用していたものと、ペン、ピルケースのセット。
「イニシャルが入っているので、イニシャル物のコレクターの方が購入なさいました。」


「このお人形は目が閉じたり開いたりする『オープンアイ』、歯もきちんとあるんです。この子もすぐに買手が決まって、さらに2人ほどキャンセル待ちも。」


「バッグはハンドメイドで細工が細かい。ピルケースやイニシャル物のコレクターに人気。セットで4万円を超えますが、出したと同時に売れちゃいました。」


売れるものを仕入れられるのは、ご自身もコレクターだから。


「私もイニシャル物をコレクションしてましたが、だいぶお客様にお譲りしました。子どものころから収集癖がありましたね(笑)小学校の時は持ち物をすべて黄色にしたり。」





「私が心惹かれるのは、今にも朽ち果てそうなもの、既に朽ちたもの(笑)、さびたもの、小汚いもの。そういう時代や古さを感じる物が好きですね。あとは職人が作ったもの。例えばレースひとつとっても、編み目が細かければ細かいほど良いなと思うんです。」


一口に「さび」と言っても、沖縄のさびとヨーロッパのさびとではまったく違うという。
「沖縄のは潮風にあたってできる赤さび、ヨーロッパのアンティークについている錆は鉄が黒ずんだ感じで、触っても汚れたりしないんです。そして、そういうさびが醸し出す雰囲気って新しいものでは絶対出せないんですよね。年月を経て生まれた味だから。」


家具や雑貨など、アンティークはぼろぼろであるほど人気があるという。

「ちょっと綺麗目なものだと『さびが足りない』とか『はげが足りない』と皆さんおっしゃって(笑)。でも、人工的にこすったらアウト、自然にできたものでないとダメで、みなさんそれも見極められるんです。ペンキなんてもう、浮いちゃってるくらいの商品が人気ですね。」



「この古い木箱をほしがる人もものすごく多いんです。」


アンティーク好きな人々の間で、シャルル・ノディエは値段の安さでも知られている。


「安く仕入れられたものは、お店でも安くで出すようにしています。レアものを手軽な値段で探すのも楽しいので。
もちろんお売りする為に買いつけて来ているんですが、毎日出し惜しみしてます、葛藤ですよ(笑)」


お店を始めて20周年を迎えるが、ここまで続けて来た理由は何なのだろう?


「好きなものに囲まれた空間にいると、自分が心地良いんです。気持ちが楽しくなって。買い付けに行った時に、アメリカの好きなお店のディスプレイを見るとワクワクして、刺激されて、アイディアがどんどんわいて来ます。『自分のお店をこうしたい』とか『眠ってるアイテムもこうしたら活かせるな』という風に。そうやって得た気持ちやアイディアを店づくりで活かして、お客様に驚いてもらったり、楽しい気分になってもらえるのがすごく嬉しい。ディスプレイを変えると同じアイテムでも新しいものに見えるので、こだわってたびたび変えているんですが、『ここに来るとおうちの模様替えしたくなるのよね』と言われることもあります。」


お客さんから教えられることも多いという。


「よくアイディア交換してるんですが、びっくりするような発想を教わることも。水道の蛇口のような置き物を、壁に取り付けてハンガーかけにしちゃったり。」





根っからのアンティーク好きかと思いきや、意外な一面も。
「モダンな家具も好きですよ、北欧ものとかも。電話機はJacob Jensen(ヤコブ・イェンセン)のものを取り寄せたり。
あまりモダンで綺麗すぎると落ち着かないのですが、逆にアンティークだけの空間も生活に合わなかくて。だからミックスして楽しんでいます。」


去年、アメリカのとあるアンティークショーに足を運んだ時、主催者の家が会場の近所だったので遊びに行くと、そのスタイルに釘付けになった。
「アンティークが中心なんだけれど、すごくスタイリッシュなおうちで。例えばキッチンの全体的な雰囲気ははモダンなんだけど、米びつにしているガラス瓶の中にアンティークのスコップが入っていたり。モダンなものと上手にミックスされていて驚きました。
それまで、『自分が好きなのはなんだろう?カントリーとは違うし、可愛すぎるのも好きじゃないし、汚すぎるのも疲れるし・・・』と模索していたのですが、そのお宅でアンティークの活かし方に気付かされました。ちょっと方向性が見えてきた感じですね。」


アンティーク歴が長く、お客様からの信頼も厚い呉屋さんの口から「模索中」という言葉を聞き、なんだか肩の力がふっと抜けた気がした。


きっと、アンティークの道に終わりはないのだろう。
奥が深く、追求しても果ての見えない世界。


興味はあるものの、「難しいのでは?」「敷居が高そう・・・」と、二の足を踏んでいたが、飾らない、朗らかな呉屋さんから話を聞いていると、自分が心地良いと思えればそれでOKなのだと、単純明快な事実に気付かされる。
気負わず購入できる手頃な値段に、初心者は安心して門を叩けるし、
こだわりの品を探し求める上級者も満足の品ぞろえ。


「新しいものにはない、古い物の面白さを伝えたい。」


その心意気と卓越した審美眼に、多くの人が魅了されている。

写真・文 中井 雅代

 

Charles Nodier (シャルル ノディエ)
宜野湾市大山1-14-2
098-898-7572
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