Chewi-Choak Homecenter (チューイチョーク ホームセンター)/ コンセプトは、「キッチンからはじまる家づくり」。沖縄の住まいの選択肢を広げるホームセンター

チューイチョークHC

 

タルト専門店の “オハコルテ”や、食と住のコンセプトショップ “オハコルテベーカリー”を手がける、チューイチョーク株式会社が、今度はホームセンターを開いた。名前は、“チューイチョーク ホームセンター”。「キッチンからはじまる家づくり」をコンセプトにしたこれまでに無いタイプのホームセンターだ。

 

掲げたコンセプトのとおり、ひときわ目を引くのは重厚な雰囲気のシステムキッチン。前板が、ありがちな木目調のシートではなく、本物の木で作られている。使えば使うほど愛着が湧くに違いない。家具のようだと思ったら、なんと同じ木で、ダイニングテーブルやチェストまである。

 

その他にもキッチンにまつわるアイテムを中心に様々なものが。キッチンガーデンと呼ぶにふさわしいハーブや果物などの食べられる植物。庭のキッチンともいえるバーベキューの道具。もちろん食器や照明器具などの雑貨もある。それに、壁材やタイルなどの建築資材も。そのどれもが、機能性だけでなくデザイン性に優れたものばかり。一般的なホームセンターのイメージとは異なり、見て楽しめるディスプレイもインテリアショップのよう。

 

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ー なぜホームセンターという住まいのお店をつくったのですか?

 

豊田さん:僕は大学で家具を作ることをやっていたんです。卒業後に沖縄に来て、ずっとインテリアショップをやりたいと思っていて。けどインテリアショップはそれなりの広さの土地が必要だし、当時20代だった僕には難しくて。それで最初、家具屋さんじゃなくて、カフェを始めたんですよ。そこで自分たちが作った家具を置いてたりしていたんです。で、僕が「家具を作ってる」って言うと、内装の仕事が入るようになったんですね。内装ってデザインからするんですけど、その時にお客さんの要望があって、例えば「床はこんなおしゃれなのにしたい」って時に、材料を探すんですけど、まず県内ではないんですね。当時ネットもなかったのでどうしたかというと、雑誌とかを見てそのメーカーさんに連絡してカタログを送ってもらうっていうようなことをしていたんです。内装業をする上で何が大変だったかというと、どの床材にしようかって探して決めて、材料を集めるってことだったんですよ。カタログを見て大量に発注して、いざ送られてきたものを見たら、思っていたイメージと全然違ったり、触った感じが気に入らなかったり。それでまた買い直したりして。沖縄では目で見て実際に触れることができないので、不便だなって。材料調達のサプライヤーがいて、実際に作る人がいて、その両方がいないと成り立たないと思っていたんです。

 

だったら自分が素材を見つけて調達するっていうサプライヤーをして、それと自分がやりたいと思ってたインテリアショップを一緒にすればいいなと思って。自分は、内装屋を15年くらいしてきて、年間10軒15軒ってやってたので、トータル100から200軒くらいの内装をやってきたんです。だからこういう材料だったらこのお店だろうなっていう、材料を買うお店もわかってるし、その後に出てきた僕みたいな内装屋さんにその材料供給ができれば、より沖縄の店舗内装なり住宅の質があがるだろうなって思ったんですよ。

 

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ー 材料調達が難しい内装屋さんの、苦労や手間を手助けするショップなんですね。でも、サプライヤーという面からすれば、内装屋さんに材料を卸す問屋という形でもよかったと思うのですが、一般の人も来られるショップという形にしたのはどうしてですか?

 

豊田さん:今でもそうなんですけど、家や店舗を作りたいっていうお客さんが、駆け込み寺みたいに僕の所にやってくることが多いんです。「今、家を建ててるんだけど、雑誌とか見せて『こんなことやりたい』『あんなことやりたい』って言うんだけど、『それはできない』『やったことがないからダメ』とかって言われちゃったんだけど、本当なんですか?」って。どんなのをやりたいのか写真を見せてもらうと、全然できるじゃんって思うんですよ。だからお店にしたのは、まずお客さんにそういうものがある、こんな風にできるってことを知って欲しかったからなんです。で、理想の形としては、お客さんが設計事務所の人たちをここに連れてきて、「私、これを使いたいの」って言って。そこに僕達みたいな専門のスタッフがいて、「これってどうやって使うんですか?」って聞かれたら、「こうこうこうやって使うんですよ」って設計士に言えば、できないなんてことは言えなくなっちゃう。そういうことをやりたかったんです。

 

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ー 実際に家を持とう、建てようとしている人が、こういうのものがあって、こんな風にできるって知っていると、選択肢が増えて家づくりがより楽しくなりますね。でも、どうして“キッチンから”はじめることを提案されているのですか?

 

豊田さん:最近、僕たち家族はやっと小さいマンションを買ったので、自分達の気に入ったキッチンがあるんですけど、今までずっと賃貸に住んでいたんです。賃貸って結構キッチンがないがしろにされているんですよね。キッチンが気に入る賃貸物件ってないんですよ。妻がすごく料理をするんですけど、料理好きの人、いいキッチンが欲しい人が、経済的理由で賃貸しか借りられないってなると、家を買うまでずっと気に入らないキッチンで料理を作らないといけないわけですよね。そこにすごい違和感があるんです。そういった話を回りにいる人たちにすると、やっぱりキッチンに不満がある人が多いんですね。注文住宅はもちろん、賃貸住宅でも大家さんはまずキッチンから作っていってっていう住環境になったらすごくいいんじゃないかと思うんです。

 

そもそも日本の住宅の作り方って、昔のお勝手文化が抜けてないんですよね。台所ってちょっと離れにあるじゃないですか。台所はリビングとかからちょっと離れてて、隔離されていてもいいもんだっていう昔ながらの感覚が残っていて。そうなるとお料理する人は、誰ともしゃべらないで料理するじゃないですか。友人が言ってたんですけど、「うちに人を呼んでパーティをしたんだけど、キッチンが隔離されてるからゲストと話をすることができない。料理をテーブルに持っていった時にちょっと話して、また台所に戻って料理するって感じ」って。そういう風に不満に思ってる人が多いんじゃないかなと思っていて。旦那さんとか友人とか、人と喋りながら料理できたら、料理ってもっと楽しくなるんじゃないですか。料理が好きな人はもっと料理が好きになるし、苦手な人は紛れるんじゃないかな。だからキッチンは真ん中に置いて、といっても物理的な真ん中じゃなくて、いつもキッチンに人が集まってくるっていう真ん中がいいなって。そこにダイニングもあるしリビングもある、みたいな。

 

里絵子さん:食べるっていうのは生きていくための中心というか。キッチンを大事にすると、暮らしの真ん中が安定すると思うんですよ。今の家は、“ほぼキッチン”みたいな家なんです(笑)。元々3LDKだったんですけど、壁を取っ払って1LDKにして、その1つの部屋はとっても小さくて、ほぼほぼLDKなんです。主婦とかお母さんってずっとキッチンにいることが多いじゃないですか。家族がいるスペースと料理するスペースがなんの隔たりもないので、うちに来た友人は誰もが、すごくいいって言いますよ。特に奥様方は大絶賛なんです(笑)。

 

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ー キッチンを中心に家族が集まってくる家っていいですね。自然とお母さんのお手伝いや、家族間のコミュニケーションも増えそうです。キッチンの位置づけもそうですが、システムキッチン自体にもこだわっていらっしゃっいますね。前板が木材のシステムキッチンが目を惹きます。

 

豊田さん:あのシステムキッチンは、スウェーデンのASKO(アスコ)というメーカーのものなんです。今までは、おしゃれなキッチンが欲しいっていう人の行き場がなかったので、それは自分たちが用意すればいいかなと思ったんですね。実際にキッチンを選ぼうと思った時に、日本の有名メーカーさんのものから選ぶっていう選択肢しかないんですよ。そういうメーカーさんのは、サニタリー性というか、いかにキレイに保てるかっていうのを優先してると思うんですね。そういうメンテナンス性を優先するのか、デザイン性を優先するのか。このキッチンは、素材が木なので、それなりに気を使ってあげなきゃいけないんですけど、メンテナンス性を犠牲にしても、見た目のいいキッチンが欲しいなというお客さんに向けています。

 

里絵子さん:せっかくこだわって家を建てているのに、建築士の方に「じゃキッチンは、有名メーカーさんのショールームに行って、見てきてくださいね」って言われることが多いと思うんです。なんか勿体無いなって。建築士の方は主に建物を見てるので、キッチンは家の一部にしか過ぎないって感じで、現実的にシステムキッチンの提案まではなかなか難しいんですよね。

 

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ー 本物の木を使っているなんてオシャレですけど、あれをフルオーダーするとなると、心配になるのは費用ですよね。

 

豊田さん:もちろん建築士の方に1からデザインしてもらうとなると、高いですよね。だから大型メーカーさんのを買うか、建築士の方に1からデザインを頼むかしかなかった選択肢の、中間をやりたいなと思っていて。デザイン性を犠牲にしないで、フルオーダーじゃなくてセミオーダーができるというシステムです。セミオーダーなので、図面を変えたり、スペースに合わせてサイズの展開ができるんです。あと色も選べますよ。

 

ー 使い勝手も気になります。

 

豊田さん:お店にあるのはフルスペックなんですけど、これよりもうちょっと小さいのを自宅で第一号として作ったんです。実際に使ってみないと、使い勝手がわからないですからね。デザイン性の他に何が特徴かというと、ガスが日本の一般的なものとは違うんですよ。何年か前に法律が変わって、日本の住宅のガスは、安全装置付きじゃないといけなくなったんです。安全装置って安全ではあるんですけど、例えばとろ火でコトコト煮る料理とかしていると、1時間くらいすると火が自動的にシャットダウンするんです。気がついたら火が消えてて、冷めてるってことがあるんですよ。だから料理する人は嫌ったりするんです、無い方がいいって。でも日本製だと絶対付いてなきゃいけないもので。でも海外製で業務用っていう指定だと、安全装置がいらないんですね。何が業務用にあてはまるのかっていうと、ガスの1口だけでも6.0kWという超火力バーナーがあることなんです。それがあると必然的に業務用とみなされて、安全基準から外れるんですね。あの大きい口のガス、6.0Kwなんですよ。一般家庭用の倍くらいの火力なので、炒め物とかとても美味しくできますよ。僕達夫婦の個人的な憧れのキッチンで、沖縄にこれを入れたかったっていうのもありますね。こだわってキッチンを作ろうっていう流れができたらいいなとも思いますし。

 

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ー デザインだけでなく、機能も、料理好きの心をくすぐるキッチンですね。他にも様々なアイテムがありますが、どんな基準で選ばれているのですか?

 

豊田さん:1から10まで全部あるっていうと、お客さんも選択しにくいじゃないですか。だからセレクトしていくってことはやってるんですね。一定のクオリティとかデザイン性をクリアしていることが前提なんですけど、経年変化していくものっていうのは1つのテーマとしてあるんです。買った時が一番美しいっていうのは、だんだん古くなっていくだけじゃないですか。そういうものは選ばないようにしています。長く使えて、それでも古くならないものだったり、もしくは古いからこそよくなるもの、使っていればツヤとかが出てきて、よりよくなるものっていうようなものを、意識して選んでいます。

 

ー どんどん味わいが増すとなると使う頻度も倍増しそうで、素敵な価値観ですね。豊田さんご夫婦は、どんな風にセンスを磨いていらっしゃるのですか?

 

里絵子さん:「ここがこうだから、いいよね」みたいなことをお互い喋るのが好きなんです。どこへ行っても、「これ、かわいいよね。プリントが多いからかな」とか、「枠の色がいいいんじゃない」とか。いちいちなんでいいのかを口に出して言うんです。最近は6歳の息子も参加してくるんですよ(笑)。息子にも、「好きなものには必ず理由を見つけて」っていつも言っているんです。自分の判断基準が固まってすぐに判断できるようになれば、新しいものを好きか嫌いかってすぐに決められる。なので、これいいなと思ったら、なんでいいと思ったか考えなさいって。「これ美味しいね」って言ってきたら「なんで?」って。そしたら「トマトの味とクリームが合ってるんだと思う」とか言いますよ(笑)。

 

豊田さん:日々遊びですよね。インテリアショップに行ったり、地方とか海外に建物を見に行ったり、庭だったり、お寺さんを訪れたり。よその国で何か食べてみるとか。その興味が仕事に繋がってるっていうのはありますね。

 

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ー オハコルテベーカリーがオープンして間もない頃にインタビューをさせていただいた際、「町を作りたい」とおっしゃっていましたが(関連記事: oHacorté Bakery(オハコルテベーカリー)暮らし全部をDIY! 食と住のコンセプトカフェ)、その後その計画はいかがですか?

 

豊田さん:色々動いているところです。このお店も町づくりの一貫です。町の中には家があるし、家の中にはキッチンがあるし。その町の中に賃貸住宅も作りたいと思っているんです。僕達はずっと賃貸に住んでいて、これまで住み手に寄り添っているなと思った家がなかったんですよ。ひたすら探しまくって、しょうがないからここにするかみたいな、いつもそういう選び方だったんです。「この家好き」っていう家は1戸もなかったので、「好き」って言われるようなお家を作れたらいいなと思っています。他にも、シークワーサーを使ったシードルを開発中だったり、農業や酪農なんかも考えていて、色んなことが進行しています。色々とやりたがりではあるのかな。何もしないとつまんなくなっちゃうから。遊びたがりなんでしょうね(笑)。

 

写真・インタビュー/和氣えり(編集部)

 

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