» Flower artist Souka(フラワーアーティスト ソウカ)/花屋での修業経験ゼロ。直感だけを頼りに、今ここをハーブ、ヤソウ、ハナで表現

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自分の好きなように作る、お花のワークショップがある。そんな噂を聞きつけて参加したのが、Soukaの屋号で活動するフラワーアーティスト磯﨑由香さんのワークショップ。この日は、リース作りだ。

 

まずは、ユーカリの枝を手の熱で柔らかくしながら、丸い輪っかになるよう曲げて、芯作り。普通リースは、針金や蔓などで作られた土台を芯にして、その芯を隠すように植物などを巻きつける。けれど由香さんの場合は、植物の茎自体を土台にし、その土台も装飾の一部にしてしまう、なんとも大胆な方法。これ、なんと由香さんが思いついた。

 

そうこうしているうちに、由香さんは次の手順のデモンストレーションへ。

 

「土台ができたら、お花や松ぼっくり、南天の実に余ったユーカリなんかを、全体のバランスを見ながら、固定していくだけです」

 

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由香さんは、作り方を説明しながら手際よく手を動かす。けれど、その説明は最小限。参加者の作品を見て、「もっと小さく作った方がいいですよ」「これを加えた方がバランスがいいですよ」なんてことは言わない。もちろん、わからないことは質問すれば丁寧に教えてくれる。けれど、基本的には口も手も出さない。由香さんの見本は、作り方を実際に見せるためだけのもの。参加者は、その見本と同じように作らなくたっていい。

 

そんな感じだから、どの参加者も、人を真似るというより自身の作品作りに集中する。手に持ち腕を伸ばして全体を眺めては、形を整え、どこにどんな植物をいれようか、松ぼっくりはどこに何個、どんな向きでつけようかと、ああでもないこうでもないと自分の感性と相談する。

 

出来上がった作品は、どれも2つとして同じものはなかった。参加者の数だけの個性豊かな作品が誕生した。そもそも輪っかの大きさがまるで違うし、太さだって、ふんわりとした太めのものから、シュッとした細めのものまで。同じ材料を使っているにも関わらず、賑やかでゴージャスなものから、シックで大人っぽいものまで、纏う雰囲気も様々。「ちょっと不格好かもしれない。けれど、すごく可愛らしいし、何より愛おしい」。参加者の誰もが「自分のが一番!」と、お気に入りになる。

 

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由香さんがワークショップでの説明を最小限にするのは、それぞれの個性を大切にしたいから。

 

「最初からすぐに手を出してしまったり、最後に直しちゃったりしたら、結局その人が作ったのを全部直しちゃうことになるじゃない。それって、その生徒さんの個性を全否定することになるし、先生の作品になっちゃうんだよね。それが嫌で。その人がその日作ったものは、その人のその日のベストなわけだから、別にみんなが同じように作らなくていいわけでさ。型通りに教えるっていうことも絶対イヤ。講師になりたての頃は、作り方の手順みたいなプリントをペラで作ってたこともあったんだけど、それもいらないやって。『こうしたいのに、どうすればいいのかわからない』って時は、そういう希望を言ってもらって、『こうすればいいんじゃないですか』っていうアドバイスはするし、1箇所2箇所とか手直しすることもありますよ。でもやっぱり一番大事にしているのは、その生徒さんの個性と、こうしたいっていう希望を、潰さないってことかな」

 

由香さん自身も、自分が見本で作ったものが一番いい出来とは思っていないそう。参加者が個性を存分に発揮した結果、はっとするような作品が生まれることも。

 

「沖縄は自分で物作りをされている方が多いし、センスのいい生徒さんが多いんだよね。素直に『すごいな』と思うし、『ヤバイ』と思う時もありますよ。そういう時は、『だいたい私より、皆さんの方が上手に作れるんですよ』とか言っちゃう(笑)」

 

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リースだけでなく、由香さんは随時、季節に応じた植物のワークショップを開催している。そのどれもがアイディアに富んだもの。例えば、ランプシェードに月桃を使って、灯ると月桃の香りが漂う“香るランプシェード”を提案したり、人気カフェとコラボして、月桃やバナナやクバで葉皿を編み、ランチのテーブルを植物でコーディネートしたり…。また由香さんへの注文もひっきりなしで、ブライダルブーケはもちろん、雑誌の表紙を飾るブーケ作りや、店舗や商業施設の装花、または県産品を扱うセレクトショップとコラボしての商品開発など、その内容は実に様々。人気の理由は、やはり由香さんの感性に期待してのこと。

 

由香さんの作品作りは、ちょっと風変わり。どの作品を作る時も、自身のインスピレーションに従っているだけだという。

 

「自分の体を使って、誰かが作ってくれている感じなんだよね(笑)。私自身は、何も考えてなくて、手が勝手に動いている感じ。リースとか作ってる時も、『あ、ここは巻くんだね』とか(笑)」

 

商業施設の装花など大きな作品を作る時でも、イラストなどの完成図を描かない。

 

「どんな風にしようかなって、だいたいのイメージは前もって頭の中で考えます。でも、いざ会場で作る時は、“無”というか何も考えてない。頭の中のイメージを、ただ出してるだけ。困るのはさ、事前の打ち合わせで、『どういう風にできるんですか、イラストを描いてください』って言われること。イラスト描けないからさ。自分のイメージに近い画像を探して、『こういうイメージです。でもこれと同じにはならないですけど』って送ってる(笑)。あと当日も、『ここをこうしてって指示してくれたら、手伝いますよ』って言ってくださるんだけど、私自身、そこをどうするか具体的には決めてないわけよ。そこを作る時にしか決まらない。だからなかなかお願いできなくて」

 

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なんとも大物の風格が漂うが、由香さんがお花の仕事を始めたのは、たったの4年前。まだ新人といってもいいほどの短かい期間にもかかわらず、昨年(2017年)末には店舗も構えた。がむしゃらに努力してきたのかと思いきや、由香さんには一切の気負いがない。

 

「こうしようとか、自分の意志で決めているようで決めてないし、考えているようで考えてない。絶対こうするとか、いついつまでにこうしようとか、何一つ決めてないんだよね。気負わなくても、時期が来たら自動的にそうなるんだなって。出会った人の『やってみたらいいんじゃない』みたいな何気ない一言が耳に残っていて、『あ、そうか。やればいいんだ』って。日常のふとした瞬間の声を拾って、私の体がやってるみたいな感じ。動かされている感じがするんだよね」

 

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店舗は、リスニングボディセラピストの城間亮さんとの共同経営。スペースの時間貸しもしている。

 

由香さんはかつて東京で、事務の仕事をしながら日本フラワーデザイナー協会の1級資格を取得した。仲の良かった同僚からの「サイトを立ち上げて発信しちゃえば?」の一言で、「扉がパーンと開いた感覚」を得て、「今考えると、ありえないくらい未熟なレベル」の自分の作品を、ネット上で発表し始めた。

 

思い切った滑り出し。だが、思い通りにいかないことも。ほぼ同時に、ブライダル専門の生花を扱う会社へ転職しようと就職活動も開始したが、どの会社からも断られた。その頃東日本大震災が発生し、沖縄へ移住。その沖縄でも花屋を中心に就職を試みたが、やはり全滅したのだそう。

 

「東京でも沖縄でも、『どこの花屋で修業したか』って毎回おんなじこと聞かれて。どこの花屋での経験もないし、『私、東京でも沖縄でも、生花店で勤められないんだな』と思って。そうなんだ、じゃあもういいかと思って。全然落ち込まないよ。ショックっていうんじゃなくて、そうなんだって気づいたって感じかな(笑)」

 

沖縄で花屋に就けなかった期間も、その間に経験したことは、今の由香さんに生きている。由香さんは移住してすぐ、島野菜レストラン“浮島ガーデン”主催の援農に参加した。そこで心に残ったのは、バナナの葉に並べられた手作りのおむすび。都会から来た由香さんにとって、バナナの葉をお皿代わりにすることが「なんともたまらんかった」そうで、植物でテーブルをコーディネートすることに繋がった。また、南城市ハーブフェスティバル開催の仕事に就いたのだが、そこでもかけがいのない出会いが。Soukaの代名詞ともいえるオーガニックハーブを使った作品は、この出会いがあってこそ。

 

「農薬を使わずにハーブを栽培してる“岸本ハーブ”の岸本洋子さんと知り合ったんだよね。岸本さんのハーブ、触っているととても気持ちいいし、もちろん香りもすごくいい。ハーブのお花とか小さくて、束ねたら絶対かわいいと思って。『ちょっといいですか、こんなの作れます』って、作らせてもらったの。岸本さんも、『いいよ、どんどん作りなさい』って言ってくださって。それがきっかけで、ウエディングのブーケとか花かんむりに、レモングラスやゼラニウム、ローズマリーとかのハーブを使う作品ができたんだよね」

 

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由香さんは、自身のアイディアをすぐに形にして、その作品を積極的に提案をしてきた。すぐに行動に移すのは、ある日の事故がきっかけだった。

 

「ハーブフェスティバルの仕事の出張先で、夜、真っ暗い中、畑のあぜ道から数メートル落下して、尾てい骨と腰椎を複雑骨折、圧迫骨折したんだよね。お医者さんから『もうちょっとずれていたら、死んでたかもしれないよ』って言われたの。あの知らない土地のあぜ道で死んでたかもしれないって言われたらさ、それはもう、またもらった命というか、生き直してるというか。これからは本当にやりたいことをやろうと思うよね。お花屋さんに雇ってもらえないんだったら、自分でやればいいじゃないっていう気持ちになったんだよね。それまではそんな勇気なかったんだけど、今やらなかったらいつやるのって。あの骨折がなかったら、今の私はないよね」

 

この大怪我が、由香さんのターニングポイントになった。約半年間の療養後、由香さんはすぐにSoukaとして活動を始め、フラワーアーティストへの道を歩み始めた。由香さんが“アーティスト”と名乗るのは、自身の経歴からの意味もある。

 

「私は花屋で働いた経験がないから、“フローリスト”っていうのはちょっとおこがましいかなと思って。今まで修業せずに直感だけでやってきたから、“アーティスト”の方が、まだ(笑)」

 

本人はそう思っていないだろうが、花屋で修業できなかったことはかえってよかったと思える。なぜなら、出会いの機会を逸していたかもしれないし、何より、なんの囚われのない由香さんの、自由で真っさらな感性の作品は、生まれていなかったのかもしれないのだから。

 

写真・文/和氣えり(編集部)

 

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