その先への、手紙。

文/写真 関根麻子

 

Shoka

 

 

 

ミーン、ミーヨン、ミーン。
リフレインな、蝉の声。

 

 

 

あと数日で8月。

 

夏本番の沖縄。

 

 

 

 

ちょうど2年前の8月。
私はShoka:のスタートをきった。

 

その数ヶ月前のこと。
当時営んでいたカフェがもう少しで立ち退きということになり、今後をどうしようかなと考えていたあの頃。

 

朝料理の仕込みをしていたら、Shoka:のオーナーであるあゆみさんが突然訪問。
「あさちゃんと一緒に仕事をやりたいの、考えといてね」
びっくり仰天、驚き三昧、それ以上にとても嬉しかったことを思い出す。

 

トマトソースを混ぜながら厨房にいたエプロン姿の私に、なぜかそんな声をかけてくれた。

 

 

偶然のような必然。
それはShoka:で仕事をするようになって、少しずつ実感していった。

 

Shoka

 

 

 

日々の暮らしの中には、
美しく豊かなものとことが散らばっている。

 

 

丁寧に暮らす豊かさ。
感謝を持ってしつらえ、それをもてなす心。
そんなことを今まで以上に学んできた2年間。

 

 

 

 

Shoka

 

 

 

雄大な自然、小さな野花。
新鮮な食材や美味しいご飯。
そのものにある背景がぱあーっと映し出されるような、
人の叡智や想いが凝縮された道具や器。

 

自分たちの暮らしのすぐとなりにはそれに寄り添う様に、美しいものたちがあふれている。

 

 

 

Shoka

 

 

 

忙しさにかまけてないで、ゆっくりと周りを見てみる。
趣味や好みは違えども、自分の本質的な部分にぐっとくる、そんなものやことたちに私達は囲まれているはずなのだから。

 

 

 

 

この2年間を少しだけ振り返って今回の記事は進めてゆこうと思います。

 

なぜShoka:に入ったかをまず思い出す。
もちろん、面白そう、楽しそうと直感したのが一番だが、入る前にかけられた言葉でとても記憶に残っているものがある。

 

「麻ちゃんはケチじゃなさそうだから」

 

この意味が、聞いた瞬間にはわからなかった。
もう少し詳しい説明を求めると
「ケチってお金のことだけじゃないの、限られた仕事だけでなく、いろんな可能性を出し惜しみしないでやりそうだから」
言った当人はえ?そんなこと言ったっけ?と、忘れてたのだが、私はこの言葉が入社に大きく繋がったと思っている。

 

 

けれども、最初のころの私はケチであった。それも大ケチだったと今になって思う。
自己防衛のためのケチ。

 

 

入社して少したったころ、東京のとあるブランドの受注会へ初めて行った時のこと。
何をしたらいいのかわからず、洋服を見て素敵だなと感動しつつも、説明を受けたらそれをメモするだけ、写真を撮ってと言われたものだけを撮るだけ。これでは全くの東京見物である。
しかしその時の私は何の目的でここに来てるのか理解せずに、指示待ち、全て受け身で、ただ行ったという事実しか残らなかった。
今は笑える話にはなったが、あの時は大ケチだったと思う。
大失敗の後は情けなさに落ち込んだが、何かを始めるとき、目的を理解しそれに必要な行動はなんなのかを考える様になった。
おかげで今は受注会に一人で出してもらえるようにもなった。

 

 

今まで出来なかったことが出来るようになるということ。
ひとつづつ、出来ることが増えてゆくこと。
それはとても幸せなことではなかろうか。
それを繰り返してゆくことで、自分自身を発見することが出来る。
どんなことが出来て、どんな才能があるのか。

 

発見するたびに私の中の宝物も増えてゆく。

 

 

 

身体中の熱量が上がり、気持ちが充実し、喜びへと変わる。
その喜びを得た先に広がるのは、むくむくと湧き出る想像力。

 

 

何を為すために、今何をするか。今は何が必要なのか。
自分の中の想像力をフルに働かせる。
これが仕事への責任感なんだなと今は実感する。

 

 

そして実のところ、この「ケチでないこと」の意味が本質的にわかったのは最近なのである。
今はケチじゃなくなっているはずだと思いたい。

 

 

 

 

 

Shoka

 

Shoka

 

Shoka

 

 

 

そして!
この2年間はShoka:で、たくさんの方々との出会いがあり、たくさんの笑顔とありがとうという言葉をいただいた。
ありがとうは、双方から生まれる喜びの気持ちを交換し合う言葉。
いまみなさんの顔をひとりひとり思い浮かべながら、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

田原が長年営んできたヨーガン レール時代からのお客様には、本当に可愛がってもらいました。
まだ馴れない頃「麻ちゃん、頑張ってね、楽しくなってたくさんいいことあるから」と言ってくれた人生の大先輩。
帰る時には今でも肩をポンポンとたたいてくれます。
自分もこんなふうに素敵に歳を重ねたいと感じてます。

 

 

「まだ学生で買えないのですが、これを着てみたい!いいですか」
試着室から出てきたその女の子はときめきが溢れ出して、頬を染めていました。
「社会人になったら、絶対買いにきます」
そんな表情を向けられたらこちらまで嬉しくなってしまいます。

 

 

好きなものを笑顔で一緒になって話す。
負の部分で共感しあうのではなく、喜びで共鳴しあう。
そんな大事なことをお客様からはたくさんたくさん学ばせてもらいました。

 

私のすばらしい財産です。

 

Shoka

 

 

 

 

そして今日は不思議なことがありました。
最近あの方はどうしているかなと田原と金城で話していた矢先!
その方がお菓子を持ってひょっこりいらしてくれました。まさしく以心伝心。

 

驚きと久々の再会でわいわいと。
早速皆でお菓子とお茶を囲み、ゆっくり時間。
その方は来月から海外で暮らすということで、寂しかったのもあるけれど皆で応援しながら素敵な毎日を送ってくれたらいいなと話しました。

 

未来に希望あれ!
遠い海の向こうで暮らせども、一期一会を大事につながりを。
また会いましょう、次に会う時は皆で楽しいお土産話を夜更けまでなどと、握手をしながら少しうるうる、最後は笑顔で別れました。

 

 

 

次のステージへ向かう。
それを応援する。

 

お客様とお店の人というボーダーを超えた出会いとおつきあい。

 

 

Shoka

 

 

Shoka:は喫茶店ではないけれど、お茶をいただく機会の多い場所です。

 

手が空くと、こうしてお客様と一杯のお茶を囲み豊かな時間を供にします。
昼の光が差し込むお茶の時間、夕日のお茶の時間、台湾茶、ハーブティーや珈琲をその時の気分で淹れる。

 

会話もゆかりのある作家さんのお話から、近況報告、時にはお腹を抱えて大笑いの話も。

 

 

いらした方々が喜んでくつろいで、笑顔でまた来るね、と言ってくださる。
私はこの時間がとても愛おしく、そしてShoka:らしいなと思っています。

 

 

 

 

他にも出会いはたくさん!

 

Shoka

ミナ ペルホネン sky flower

 

 

ミナ ペルホネンのテキスタイル。
デザイナーの手によって鉛筆やペンで書かれた図柄が、何人もの人の心と手を動かし、丁寧に丁寧に出来上がってゆく1枚のテキスタイル。そこからパターンが起こされ、ひとつの作品として服が出来上がる。何十人もの想いが込められた服。
出来上がった後に残るハギレは、バッグやクッション、バッジなどに生まれ変わる。ハギレも大切なひとつの作品の一部。
上の写真は機械刺繍だが、その機械をも一人の職人として参加しているような、物作りの姿勢に感銘を受けた。
その想いは作品を通して私達に伝わってくる。

 

 

もちろん、服だけではない。
毎朝使う珈琲カップ、お味噌汁をいただくお椀、機能美にあふれたほうき、などなどなど。
どんな人が作っているのかを知ると、その人のストーリーがものを通して伝わって来ることがある。

 

ひとつひとつに物語や想いが詰まっていることを知ると、ものの見方も変わって来る。
そう、今まで以上にものを大事にしようとも思った。

 

 

そしてShoka:に関わって、何より素敵だなと思ったのはひとつの目的に向かって、関わるすべての人達がそれぞれの才能と想像力をフルに発揮し、この想いを共有していること。
誰かがものを作り、それに共鳴した人が場を準備して紹介する。
その中にはたくさんの仕事があって、それを関わる人達で分担し合う。

 

会場作りには体力もいるし、自分の持っている感性に問いかけながら全体のバランスを取ったり、それぞれの作品が活かされるように配置を決めていくのに集中力とセンスがいる。
回数を重ねることで、私の中の感覚も磨かれていったような気がします。

 

 

作家さんに会い、その作品に触れ、それをみなさんに紹介するという一連のこと。

 

これは私にとって、とても大きな体験でした。

 

 

 

 

 

Shoka

 

 

 

 

きっとここまで読んで、気づいた方もいると思うのですが、私は7月一杯でShoka:の常勤を卒業することになりました。
Shoka:でのこうしたおもてなしの心を日々学び、いらした方々とあたたかな気持ちが通い合う交流をしてゆくうちに、以前から大好きなお料理を自分なりに追求したいという思いがむくむくと強くなってきたからです。

 

それも、Shoka:という場所で自分の本当にしたいことを追求し、自分の才能を周りの人達と分かち合いながら楽しんで生きている先輩達にたくさん触れてきたからだと思います。

 

常勤は卒業ですが、1ヶ月お休みをいただいてお料理と平行しながら、9月からは強力(?)ヘルパーとして週に数日はShoka:にはいますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

感覚をオープンにし、今現在の自分が本当にしたいことを自分の歩幅で楽しんでやっていきたいな、と思っています。

 

 

そして何よりも嬉しいのは、Shoka:のみんなが私の道を応援してくれてることです。
次のステージが見えてくる中、この応援がどんなに心強いかも今になってわかります。
この2年間で学んだ、感謝あふれるもてなしとつながりを大事に、変化を楽しみながら。

 

 

私も違う形で関わってゆきながら、これからのShoka:を心から応援していきたいな、そんなふうに思っています。

 

 

 

カレンドの記事の関根は最後ですが、田原と金城の記事はこれからも続きますのでお楽しみに。
私も一読者としてとてもワクワクして記事を楽しみにしています。

 

 

 

 

 

最後に。

 

初めましての方も。
何回か見ていただいている方も。
連載など書いたことのなかったこの私のつたない文章を
読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

 

Shoka:につながる、そして暮らしを楽しむ全ての方々に。

 

 

これからも続く、笑顔とありがとうという言葉に。

 

 

重ね重ね感謝を申し上げ、筆を置きたいと思います。

 

 

 

 

Shoka: 関根麻子

 

 

 

 

 

 

Shoka

 

暮らしを楽しむものとこと
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