» 小野哲平 + 早川ユミ「早川ユミという仕事」

 

写真・文 田原あゆみ

 

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高知県香美市谷相に住む布作家の早川ユミさん。
彼女ほど様々なことに取り組む人は珍しい。

 

掃除・洗濯・縫い物・炊事・畑仕事に養蜂家・エッセイストで、冷えとり健康推進者・そして手の仕事推進運動家でもある。今までに何人もの若いお弟子さんたちに、布の仕事だけではなく、彼女の生活そのものも教え指導してきたパワフルな女性。

 

私たちが出会った当初、夫の小野哲平さんが私の前で何度もユミさんに「もうユミは何でもかんでもやりすぎなんだって言っているでしょ!」とか「それは違うよ、大事なことをやるだけでいいんでしょ」と、文句言いたげな目で畳み掛けるので、穏やかなユミさんにこんな風に言うのはなんでだろう。私はそのことがとても気になっていた。
ちなみに二人はとても仲がいい。その辺は誤解しなくていいのですよ。

 

 

穏やかそうなユミさんに哲平さんがそういうのは何故なのかしら?

 

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くるくると巻いた髪の毛が色々な方向にぴょんぴょん跳ねて、それを無造作に束ねて琥珀の小さなかんざし一つ。自然の中で畑仕事をしながら暮らしているのに、ユミさんは決して乙女心を忘れない。
それはとても可愛いところ。

 

そうそう、ユミさんは大体にこにこしている。
可愛い声でとても楽しそうに話す。こちらが話している時には、うんうん、とうなづきながら目をくるくる動かして次に言うことが口元に集まっているのがわかる。ちょっとだけ唇を尖らせて喋りたそうにしている。
大地に暮らすこと、その土との付き合い方、野菜たちのこと、身体のことや人体の神秘、自然の力や、民族の持つそれぞれの文化や背景。旅に出たらその土地の人々の宗教観や、くらしの中で信じられていること、それを背景に生まれた織りや柄、染色やプリントに感心しそれをたくさん買っては日本へ運ぶ。
そうして運んできたものを組み合わせて、ジャケット・ベスト・スカートにモンペ・風呂敷をちくちくちくちく。布の持つ思い出や、その国や地方で出会った人々の顔や会話を思い出しながら。

 

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もちろんミシンも使うけれど、手を使ってちくちくする時間は手を運ぶことに身体は集中して、頭の中には様々な記憶が静かに静かに再生される。丹田が温かくなり、見た目は静の時間だけれど何かが目覚め解放されるような喜びも感じるのだろう。

 

「ユミはね、布に触っていないと死んじゃうんだよ」by哲平

 

なるほどなるほど。

 

 

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ユミさんの工房スペースの布コーナーは前回にも増して布が積み上げられ、あるところは決壊しなだれが起こっていた。ふふふ、ユミさんらしいなと思う。

 

きっと膨大な布の中から「どこだったっけ?」「あれ?あの布はどこにしまったんたっけ?」をつぶやきながら、探し回って、これだ!という布を見つけたら、スカートのこの部分にちくちく。今度は「ん?ここには象徴的なお守りになるような布を入れたい」と、思ったら、またごそごそ。
そうした形跡が残っているこの場所は、散らかっているという言葉なんかじゃなくて、布が待っていると形容したい。それぞれの布が、思い出も一緒に「ここにいるよ~」と微笑んでユミさんの手が伸びるのを待っているのだ。

 

 

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ちくちく工房にいるとき以外のユミさんは、なんだか小さな哺乳類があっちへ行ったり、こっちへ行ったりしながらいろんなことを成し遂げているような働きぶり。ビーバーが木を歯で削ってはダム作りに勤しみ、餌を求め、子育てをして・・・とにかくよく働くのだ。

 

 

朝ゆっくりと起きると、台所でえいやっと朝食作り。早いしいつでも美味しいユミさん朝食は素材を活かした素朴な味わい。
台所でのことを思い出すと、本当にえいやっ!と掛け声が聞こえてくるような感じなのですよ。
決して急いでいる感じではないし、急かしたり、大きな音を立てるわけではないのだけれど、何故だか素早い。気がつくと多人数分の朝ごはんが並んでいるのです。

 

小野家の不思議。

 

台所に集まってきた家族や、お客もいつのまにかユミさんの助手になっている点も魔法の一つ。
そうそう、ユミさんはハーブを片手に持った可愛い魔女みたいなのですよ。
ユミ魔女の魔法。

 

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私はその姿を写真に収めながら観察。
夫・長男・次男・数人のお弟子さん・来客も多い。
何年もの間ユミさんは大家族の三食を賄いながら畑仕事や布仕事をしてきたのだ。しかも本が8冊も出ている。
一体いつ書いているのかしら?

 

これもきっと魔法に違いない。

 

みなさんには申し訳ないのですが、夕飯もそれはもう楽しく美味しくて。写真だけですがどうぞ。

 

 

 

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哲平さんの器に盛り付けられたおおらかな料理。
ユミさんの家庭料理はその人柄があふれていて食べる人を元気にします。

 

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谷相に何度か行くうちに彼女の並外れた好奇心と行動力がじわじわと私に見えてきた。
畑から必要な材料を集めて朝ごはん。

 

みんなの仕事が終わってわらわらと台所へ集まってくると、さて、夕ご飯。きっとユミさんも仕事をしていたに違いないのだけれど、お客をもてなすこともユミさんのやりがいのある仕事の一つ。だって、小野家の広報部長でもあるのですもの。

 

 

朝の時間に戻します。ある日の朝ごはんの後は畑へ。イノシシの被害に頭を悩ませ、ニホンミツバチの巣箱をチェック。新刊にサイン入れをしてギャラリーの人に手渡す。

 

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サインはとても丁寧に絵も入れて描き描き。
高知県の老舗ギャラリーショップ海花 布土器を経営する島津みちさんと楽しそうにおしゃべりをしながら。

 

 

 

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「種まきノート」
「種まきびとのものつくり」
「種まきびとの台所」
「旅する種まきびと」
「種まきびとの絵日記はるなつあきふゆ」
「からだのーと」
「ちいさなくらしのたねレシピ」
「野生のおくりもの」

 

 

 

それにしてもユミさんの本、私が知る限り8冊の本はどれも、大地に根ざして暮らすことの大切さと楽しさがその根幹となっているようだ。

 

タイトルを見てもわかるように、なんだか私たち女性の秘めた力を呼び起こそうとしているようなそんな感じがしませんか?ユミ魔女の狙いはそういうところにあるのではないかしら?と、私は思っているのです。

 

早川ユミさんの本たちはこちらから
http://www.une-une.com/yumihayakawa_books.html
早川ユミホームページ
http://www.une-une.com/yumihayakawa_index.html

 

 

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谷相の家と工房と畑をあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
ユミさんの日常は精力的の一言に尽きる。
しかし、台所の景色と同じように、決して慌ただしいということではなくて、えいやっと色々なことが出来上がって行くという感じなのだ。
それも、いつものユミさんの服を着ているのだから、日常の仕事着がこんな風に楽しくて可愛く見えるのは彼女の人柄が出ているのだろう。

 

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ユミさんの服は土の上に暮らす人の仕事服。そう感じる。

 

掃除も炊事も畑仕事も可愛く軽快にこなす早川ユミの仕事服。
そして、そのゆるい感じが、「疲れたらいいのよ、お昼寝しましょう」と、言っているユミさんの様子も目に見えるように思えてしまう。

 

 

「ほら、決して頑張るのではなくて、興味が湧いたこと、好きなことをしていたら私たちは自分の力を取り戻せるの。だから、自然と仲良くしながら、自分の体もいたわっていたら、日常の雑務をも楽しめるようになれるのよ。そうよ、私たち女性は結構たくましいんですもの」

 

 

そう話すユミさんの顔がくっきりと浮かんでくるような世界観。

 

 

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この写真はユミさんが作るお洋服用に陶器で作って焼いたもの。
この辺からははあ・・・・とさ、すがの私にもわかってきた。
哲平さんが言っていた、
「もうユミは何でもかんでもやりすぎなんだって言っているでしょ!」
の意味がわかってきたのでした。

 

哲平さんの窯入れの時にユミさんが自分で作った土のボタンと素朴な佇まいの神様や動物を持ってきて、窯に入れるのだそうだ。そうすると俄然窯入れにも力が入って、まるで自分だけの窯入れのように精力的に参加するそう。
哲平さんは大好きな土の仕事は自分の聖域。
ユミさんの聖域は谷相の敷地全て。

 

そして興味のあることやりたいこと、やっていることの範疇が広いことで自分の聖域が脅かされていると感じているに違いない。ユミパワーにたじたじ。

 

知り合った頃には見えなかったユミさんのパワーは絶大なのでした。
そういえば、先日一緒に食卓を囲んだ小野家長男の象平(しょうへい)さんも、「ユミはずるい。結局なんでも自分の思う通りに持っていくんやもん」と言っていた。

 

 

ふふふ、と優しく笑って、激しい討論の最中は微笑みながらうなづいて、頭の中では今度やることしたいこと、書きたいことをこねている。
なんて平和で効力のある統治。
高知県谷相にある小野家は早川ユミ魔女の王国なのでした。

 

私が伝えたいことは、なんだかユミさんと似ているのかもしれない。

 

女性が健康で、好きなことをしていて、自分の中の自然な力に目覚めたら、それはこの世を明るく幸せにする大きな力に繋がっているということ。
布作家という肩書きだけには収まらない。
ユミさんは、「早川ユミ」という天職を生きているようなたくましい女性の一人だ。

 

 

そんなユミさんの作品たちがShoka:にやってきます。
旦那様との二人展。

 

私と、哲平さんとユミさんのトークイベントや、ユミさんのちくちくワークショップもありますよ。私もとっても楽しみにしています。

 

10月6日~15日は時間を作ってShoka:へGo!

 

小野哲平 + 早川ユミ企画展
「土がある 布がある」
 2017年10月6日(金)~10月15日(日) 12:30~18:00(会期中無休)

 

 

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◉小野哲平 + 早川ユミお話会◉
「ものつくりの根源」
哲平さんは本質的なところに挑んでくるところがある。なので時に私は彼と火花を散らして語り合う。それをユミさんがしょうがないわね、ふふふと、寄り添っているように見せて、じつは自分のことを考えているのだった。そんな三人で本気トークいたします。

 

 

 

 
日時:2017年10月7日(土)17:30~19:00(開場17:00)
場所:Shoka: 沖縄市比屋根6-13-6
参加費:無料
申し込み:event@shoka-wind.com まで

 

 
 

 

 

 
※参加者全員 のお名前・連絡先・車の台数をご記入の上お申し込みく ださい。
尚お話に集中していただきたいため、参加者の 年齢は13歳以上とさせていただきます。

 

 

 

 
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◉早川ユミチクチクワークショップ◉ 
ちくちくワークショップ 「 つくるわたしへ 」
「ちいさなくらしのたねレシピ」出版記念

 

 
日時:2017年10月7日(土)10:00~12:30(開場9:30)
場所:Shoka: 沖縄市比屋根6-13-6
制作:たねまきエプロン(たねポケットつき) 持ち物 糸切りばさみ
会費:3800円(エプロンはお持ち帰りいただけます)
申し込み:event@shoka-wind.comまで※参加者全員 のお名前・連絡先・車の台数をご記入の上お申し込みく ださい。

 

 

 

高知県谷相の人里と自然のちょうど境界線に住んでいる早川ユミさんはいつも少しだけ微笑んで、何か話したそうに口をつんと尖らせている。布作家という肩書きだけれど、エッセイスト、畑人、日本ミツバチの養蜂家でもあるのです。自分の興味のあることにえいやっと飛び込んでどれも楽しげにこなしている。ソフトで可愛らしいボイスで話す、勇猛果敢な探検家。アジアを旅して大好きな布を集めては、一つ一つ手作りの服や雑貨を作っている。そんなユミさんの作る服たちはくらしの中の仕事着。女性のお肚の中の太陽が目覚めるような元気な衣服。今回の企画展にはお洋服の他に彼女が書いた本や、夫である小野哲平氏の旅茶碗を包む布、ちくちくもんぺ種まきエプロンも並びます。彼女の元気がたくさんの人に届きますように。ワークショップも楽しいですよ。

 

 

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オーナー田原あゆみによるエッセイ
「大人読本」がはじまりました
otonadokuhon09

 

 

 
 

 

 

http://otonadokuhon.jp

 

 

常日頃から人生そのものが旅のようだと感じています。 なのでカテゴリーは大きく分けて「日々」の旅と、ホームを離れる「旅」。 その中に、人との出会いや別れ、選ぶこと手放すこと、仕事、動物や自然との触 れ合いの中で感じること、暮らしの中の愉しみをエッセイ仕立てで発信してゆきます。
ユーモアと笑いを信条に、自称小心者の冒険家の旅を楽しんでいただけたら嬉しいです。始まったばかりのサイトなのでこれからいろいろ変化して行くとは思い ますが、皆さまの生活の潤いになることを願っています。

 

 

 

 

 

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暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com

 

沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~18:00