» 二つの家族の一つの物語 vol1「温石とtadokorogaro」未草+温石+田所真理子「森へ」へ寄せて

写真・文 田原あゆみ

 

 

心が躍る出会いがある。

 

 

人の縁の繋がりは人脈と呼ばれているように、何かが流れて脈打っている。
ある時思いもよらなかったことがきっかけとなって、その脈打つ流れのどこかから泉が湧き出すこともある。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

*今回の田原の旅日記は、旅が結びつけた縁で11月6日から始まる企画展「森へ」に至るまでのストーリーを一部二部に分けて書いています*

 

 

 

ある友人の一言がきっかけで、訪ねた長野県松本市にある「温石」。
そこは、イラストレーターの田所真理子さんが営むtadokorogaroと、料理人須藤剛氏の営む「温石」が一つの空間を作っている。
無邪気な笑顔と、先の読めない言動の面白さが魅力的な真理子さんと、静かだけれど一本筋の通った須藤氏の人柄とそのお料理に魅せられて、私はたちまち二人のことが大好きになった。
もう4年ほど前から、松本に立ち寄ったら温石へ行って食事のありがたさと素材の恵みへの感謝をし充電。真理子さんのまるで妖精のような心地よい無邪気さを浴びて邪気を落とす。そんな旅を何度かして二人との交友を少しずつ温めてきた。

 

 

奥さんの田所真理子さんはShoka:のトレードマークのタツノオトシゴのイラストを描いてくれた方。
田原あゆみエッセイ

 

「働き者で、ユーモアがあって、お茶目なメスのタツノオトシゴを描いてください」私のそんなオーダーを聞いてくれてこのタツノオトシゴを描いてくれた。

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

田所真理子さんの仕事場。

 

真理子さんはお母様が絵を教えていたこともあって、子供の頃は絵を描くのが大好きだったという。けれど絵をまた描くようになったのは23歳になってから。大学卒業後に花に関わる仕事がしたくて、小さなお花屋さんに勤めた。
そこで教室の案内や、DMの絵を描くようになってから絵を描く喜びに再び目覚めたのだという。
もう一度ちゃんと絵を習いたいと、選んだのがセツモード学園。2年間通ってひたすらデッサンをしたという。絵は教そわるものではなくて、描き続けることで自分の絵を模索する、そんなセツモード学園のスタイルが合わない人は、得るものがないと辞めていったそうだ。真理子さんはそこで、自分でやるということを学んだという。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

絵で生計は立てられないと感じていた真理子さんは、カフェでアルバイトをしながら絵を描き続けた。誰に見せるでもなく書きためていったという真理子さんは、本当に書くことが好きなのだ。

 

その頃に須藤氏と出会う。
イギリスのガーデニングや、西洋の森のイメージが好きだった真理子さんと、山と温泉と旅が好きな須藤さんは結婚して東京を離れて長野に住むところを探しに行った。
東京の家はたたんで長野に行ったというから、思い切りがいい。二人は山が見える町という条件で長野県の幾つかの場所を訪れてしっくりくるかどうかを感じてみたという。そんな時に訪れた松本市で小さな一軒家を見つけ、そこに居を構えた。

 

それは今から10年前のこと。

 

そこが現在の温石とtadokorogaroの一部になっている。

 

当時は現在のtadokorogaroの部分に、温石も彼らの生活空間も一緒になっていたというから驚いた。温石の予約が入ると生活空間を片付けて、料理屋に変身。そうなると自分たちのために厨房は使えなくなってしまうという不便さがあったので3年頑張ったけれど、その後引っ越しを考えた。その時に隣の家が空いたのでそこを須藤さんが修理して現在の温石の空間が出来上がったのだという。

 

田原あゆみエッセイ

 

 

真理子さんは身振り手振りを交えて、楽しそうにこの話をしてくれた。
彼女の純真さと、口から飛び出す溢れる意図しないユーモアは面白くて楽しくて時間を忘れてしまう。

 

この後、私は飛行機に乗り遅れてしまった・・・・。
人生初のがっくり体験。

 

けれど私は後悔していない。だってこうやってネタになっているし、楽しい時間を過ごしたのだから。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

真理子さんの親指は先がこんなに丸い。
絵を描きすぎてこうなったのかと思ったら、生まれつきなんだそう。
マッサージをするのにすごく良さそう、とかそんな話を笑いながらしているうちに、時間を忘れてしまうのだ。

 

そんな彼女自身の魅力は、彼女の描くイラストにも溢れている。
tadokorogaro

 

松本で暮らし始めた時に、ある友人にちゃんと自分の仕事を人に見せなさい、と言われ名刺を作ってイラストを描いていますと伝えるようにした。木工デザイナーの三谷龍二さんに会った時にも、名刺を渡しそのことを伝えた。
三谷さんは真理子さんのイラストに興味を持ったのだろう「これは誰が描いたの?」そう聞いてきたという。三谷さんの紹介で、暮らしの雑誌「日々」でイラストを受け持つことになった真理子さんの独特なタッチの絵の魅力は、日々の雰囲気とピッタリと合っていて多くのフアンに愛されている。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

日々に掲載されている真理子さんのイラストの一つ。

 

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

目が鋭くて、腹が据わっている須藤さんは一見近づきがたいような雰囲気がするのだけれど、物腰は柔らかくとてもゆっくりと穏やかに話す。
真理子さんに須藤さんのどんなところに惹かれたの?と聞いたら、出会った当時、「この人はちゃんと話を聞いてくれる人だな」と感じいう。それがとても良かったのだそうだ。
なるほど、と思った。というのは、私もそう感じていたから。須藤さんは心と体がちゃんとここにいて、話しかけるとちゃんと相手が何を言おうとしているのか体全体で耳を傾けてくれるのだ。

 

そんな須藤さんのあり方が、食材にも生かされているのだと私は思う。
向き合う野菜の味や姿を須藤さん全体で感じてみる。それからその素材を活かす調理法を模索する。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

須藤さんの料理を初めていただいた時の感動を今でも私は覚えている。

 

温石の柔らかい光の差し込む食卓で、湯気がふわーっと立っている漆器の椀。
蓋を開けた時、中に一匙分の炊きたてのお米が現れた時の驚きと、その香りの素晴らしさ。炊

 

きたてのお米の香りはしあわせの香りがする。
私は思わずもう一度手を合わせて、いただきます、といった。
一匙分のお米をゆっくりと味わって、ほおっと一息ついてまた手を合わせた。

 

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

真理子さんが脱線したり、ぼけたりする横で話の軌道修正をしたり、本題へ戻すのは須藤さんの役割。
凸凹だからこそ一つの形になるのが夫婦なのか。そう納得してしまう。
性格や性質は対照的な二人だけれど、大切にしているものがにているのだろう。温石とtadokorogaroが作る空間は一つに溶け合って呼吸をしている。

 

料理をいただく楽しみの他に、この空間にまた行きたい、そう感じさせる魅力がある。

 

そんな二人と、何か沖縄でやれたらいいねと話してから3年が経ってしまったある日、ある出会いが元になってあっという間に企画展の原案ができた。

 

 

 

続きは第2部にて

 

Shoka:のHPに10月30日夜に掲載予定です。

 

 

 

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次のShoka:の企画展

 

 

 

未草 + 温石 + 田所真理子企画展 「森へ」

 

11月6日(金)~15日(日) 会期中無休
田原あゆみエッセイ

 

長野の信州に拠点を置く二つの家族の暮らしは、本当においしいもの、本当に美しいと感じるもの、暮らしたい場所、住まい方、衣食住とそれが在るところのどれも大事にしています。彼らの暮らしの中から生まれた、彫刻や布もの、イラストの原画、tadokorogaroのオリジナル商品、そして一口ごとに手を合わせたくなるようなお料理を作る料理人須藤剛氏のお料理もShoka: にやってきます。いったいどんな空間になるのか今からとても楽しみです。

 

未草  小林寛 樹 小林庸子
イラストレーター 田所ギャラリー 田所真理子
温石  須藤剛

 

2015年11月6日(金)~11月15日(日)

 

 

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http//www.shoka-wind.com

 

12:30~19:00
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791