somos(ソモス) 沖縄とキューバを融合させた、琉球コロニアル。定番でない新しい楽しみを創っていく宿

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そよそよと食堂を抜ける風が、なんとも気持ちいい。小高い丘の上に建つ旅宿、somos(ソモス)は、遠くに紺碧の海を眺む。ここに静かに腰掛けていると、自然の中に帰ったような安心感を感じる。熱帯植物の濃いグリーンに溶け込むアースカラーの食堂に客室棟。自然と調和していて、いかにも作ったという違和感がまるでない。

 

自然に溶けこむ優しさの理由の1つはきっと、建物に角がないから。壁も天井部分も、角張っていなくて、すべて丸みを帯びている。somosオーナー 伊藤秀樹さんは、角を取ることが一番やりたかったことだったと笑う。

 

「ずっと何十年も前からここにあるような雰囲気にしたかったんです。それにキューバの雰囲気を大事にしたくて。角を丸くするだけでキューバっぽいから、角を削るのは絶対しないとダメだと思ってた。サンダーっていう削る機械があるんですけど、それ持って、全部自分で削りました。丸く削った後に、モルタルで更に丸さを出して。職人さんに『やって下さい』って頼んだんだけど、やってくれなくて。せっかくピッチリ決まってるのに、誰もわざと壊すようなことしたくないですよね」

 

丸い角は、どこか懐かしいような雰囲気をも醸し出す。伊藤さんは、角だけでなく、直線もなくした。

 

「わざとトンカチでガンガン割ったりもして。ちょっとずれてるのとか、曲がってるのが好きなんです。ちょっとひねくれてるんかな(笑)。もちろんザツじゃなくて、キレイには作るんだけど、キッチリとは作らなかった。普通歪んでたら、やり直ししてもう一回まっすぐにしてってすると思うんだけど、僕らは曲がってるのもいいと思うし、欠けてるのも味だと思うから。でも、建具とかその歪みに合わせて作らないとダメだったから、一緒に建具とか作ってくれた友人は大変だったと思う(笑)」

 

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自然に溶け込むゲストハウス。目指したのは、大好きなキューバと沖縄の雰囲気を併せ持つ、言うなれば琉球コロニアルスタイルだ。

 

「キューバは、スペインの植民地時代のビンテージっぽい雰囲気が好きなんです。建物は天井が高くて、絶対にロッキングチェアが置いてある(笑)。沖縄っぽさは赤瓦かな。赤瓦を載せる場合、普通は台風の影響があるから屋根を低くするのかな。でも僕達はわざと天井を高くして」

 

伊藤さんの作りたいものは、専門家になかなか理解されず、基礎以外は全部自分たちの手で作り上げることにしたのだそう。

 

「最初は設計士さんに頼みましたよ。でも出てくるものが、僕達がこうしたいっていうのとなかなか合わなくて。それに僕達の予算だと、やりたいことの半分しかできないよって言われたんです。食堂をもっとコンパクトにして、客室も1つにって言われたんだけど、それは僕達のやりたいことではなかったから、だったら自分でやるしかないなと。ここ、ブロック積みなんですけど、基礎のブロック積みや強度の補強、電気関係だけやってもらって、後は自分たちでやることにしたんです。赤土を混ぜて床を作って、漆喰やペンキ塗って、内装のデザインして、建具やテーブルも作って。自分たちでやったお陰で、頼んでいたらできなかったことが、いっぱいできました。部屋の大きさをコンパクトにすることもなく、広々とした2部屋にできましたし」

 

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その客室は2部屋とも、ロフトが作れるほど天井が高く、ゆったりとした贅沢な作り。

 

「Sabado(サバド)という部屋と、Domingo(ドミンゴ)という部屋です。スペイン語で、土曜日、日曜日という意味なんです。サバドのほうは、キューバ人の妻がインテリアを担当して、僕はドミンゴの方を。微妙に趣味が違いますからね。僕も、やることいっぱいで大変だったから、1部屋は妻に好きなように作ってもらったんです」

 

サバドは、白い花の花びらの上にいるかのような柔らかい部屋、ドミンゴは、砂漠に生きる植物のような力強さのある部屋だ。いずれも落ち着いた雰囲気で、一日中部屋から出ずにのんびりと過ごすお客が多いというのもうなずける。ロッキングチェアや、ハンモックにゆられて、景色を眺めて過ごすのもいい。

 

「お客さんにいい景色を提供したくって、沖縄電力に電線を埋めてくださいって交渉したんです。低圧線は使ってなくて取ってくれたんですけど、高圧線はどうしても無理で」

 

それでも、その電線すらかっこよく見えるように、部屋の居心地の良さや、ホスピタリティをよくしようと切り替えた。

 

「ここではお客さんのプライベートを大事にして、なるべく入り込まない。でも食堂に来てくれたら、いつでも僕らはいるんで。それぞれがそれぞれのやり方で楽しんでくれたらいいと思うんです。僕も、旅行してる時、全然干渉されたくなかったし」

 

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そう、伊藤さんには長い間、旅を続けてきた経験がある。

 

「アメリカの大学行って、友人に『インドに皆既日食見に行かない?』って誘われて、大学休学して、インド行ったんです。それがバックパッカーを始めたきっかけ。それから、旅行が大好きになっちゃって、結局大学に戻らず、タイや中南米全体を回りました。南米はペルーやブラジル、カリブは、メキシコ、グワテマラ、コスタリカにジャマイカ…。知り合った人みんなから『キューバはいいよ』って勧められて、キューバにも行きました。そしたら古い建物はあるし、人とか音楽も楽しいし、キューバにはまっちゃって。キューバにいたかったから、またキューバの大学に入り直したりして。その後も、日本に帰ってきてお金を貯めては、また戻って。向こうで結婚してキューバに住んでたから、旅行してた時期と合わせたら、10年間くらい海外にいましたね。旅行をしてる時から、いつか宿をやりたいなと思ってたんです。自分の好きな場所を作って、旅行者に来てもらったら、色んな人に会えるし、自分も旅行好きだから楽しめる。楽しいことやりたいから」

 

最初は、自身がよく利用していたバックパッカー向けの安宿をやりたいと思っていた。けれど伊藤さんの人生の変化に伴い、やりたい宿の形も変わった。

 

「今こうして家族もできて、自分の生活が変わったから、バックパッカーの若者を相手にするより、ちょっと落ち着いた家族の人を迎えたいと思って。僕みたいに昔、バックパッカーやってたけど、家族ができて、ちょっとゆっくりした所に泊まりたいと思って来てくれたらいいなと思う」

 

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宿の形を変えたのは、旅をしていた昔の自分を振り返るのではなく、“今の”自分を楽しませたいからではないかと思う。施設がほぼ完成した今、宿というより、イベントをメインでやっていきたいと思っているのが、その証拠。

 

「今、毎日のメインの仕事っていったら掃除ですよね。毎日のことだから、やっぱりつまらなくなる時もあるんです。だったらイベントやったりして、お客さんにべったりというより、こっちから色んな提案をして、好きなことをしていくほうが楽しい。例えば、好きなミュージシャンをここに呼んでライブやったら最高だし、ワークショップだったら、僕達も参加できて楽しめるようなものがいいなと思うんです。前にローフードのワークショップやって、その時は妻のお母さんがちょうどキューバから来てたから、妻と一緒に参加して楽しんでた。今、うちで朝ごはんを作ってくれてるスタッフと一緒に、宿泊客だけじゃなく、皆が利用できるモーニングカフェをやってもいいなとか妄想してるんですよ」

 

somosには、こうしなくちゃいけないとか、こうでなきゃいけないなどのルールは何もない。somosを作り上げてくれる仲間と、さらにいい空間にしたいという。

 

「宿というカテゴリーにとらわれず、色んなジャンルの人とコラボしてみたいですね。せっかくここを作ったんだから、有効に使いたいし。ローカルの人とのコミュニケーションが取れる場所になったらいいかなと。もちろん、宿泊してる人もイベントに参加してくれたら嬉しいし、そのイベントを目当てに泊まりに来てくれる人がいたら、それも嬉しい」

 

伊藤さんは目を輝かせて毎日、好きなこと、楽しいことを追いかけている。

 

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すでに音楽ライブを何度か行ったというsomosの庭。その庭には、ひん曲がって買い手がつかなかったというトックリキワタの木がある。定番ものは何でもあまり好きではないという伊藤さんに見初められて、somosにやってきた。「沖縄だから、植物の成長が早くて、その成長を見てるだけで楽しいんです。ここにある植物も僕達も、全部が成長段階です」と伊藤さんは言う。

 

ぐんぐん成長していく曲がったトックリキワタのように、伊藤さんの変化とともに、そのカタチを楽しい方向へぐんぐんと向かっていくのが、somosという宿だ。

 

写真・文/田中えり(編集部)

 

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国頭郡今帰仁村兼次271-1
0980-56-1266
http://somos-okinawa.com