hoccorie(えほんや ホッコリエ)大人にこそ、絵本を。ギャラリーのような丁寧な空間で、絵本からのメッセージを受けとめる。

 

えほんやホッコリエには、大人たちが多く訪れる。絵本好きの男性おひとり様が人目を気にせず絵本を堪能し、会社帰りのOLも図書館のように通ってリフレッシュ。出会いだからと旅先では荷物になるにも関わらず、絵本を買い求めていく旅行客の姿もある。この光景は、店主の石田夢子さんの思いどおり。石田さんは、大人にこそ、絵本と出会ってほしいという。

 

 

絵本は、どうしても子どものもの。大人はそれを横から見せてもらうというイメージですが、私たち大人にとっての絵本の魅力とは何でしょうか?

 

なにげない言葉に応援されたり、笑顔になれたり、その時々の自分に合ったメッセージがもらえることですね。それに短い文と絵で語られているから、心にスッと入ってきやすい。分厚い本を読む時間はなかなかない人でも、絵本ならパッと読めますよね。なにかと忙しい大人にこそ、絵本はいいと思うんです。

 

 

大人だからこそ読みとれる絵本からのメッセージ。それを絵本屋さんとして届けたいとなったきっかけはどんなことですか?

 

私自身は子どもの頃、絵本が特別好きだったわけでもないんです。読むには読むけど、すごく好きとまではいかなかった。でも、大人になって、子どもが生まれて、子どもと一緒に絵本を探して読むうちに私の方が絵本に夢中になってしまって。絵本の言葉にホロっとなったことがあったんです。その頃は育児や仕事ですごく忙しい時期でしたが、そのホロッとなった時に初めて、自分がパンパンだったんだ…と気づけたんですね。

 

それで私だけじゃなく、他にもそういう大人はいるんじゃないかな、絵本で笑ったり、肩の力を抜いたりしてほしいなとなったのがはじまりです。絵本は、1冊1000円前後とお手頃ながら、いろんなものがギュッと詰めこまれた宝箱だと思うんです。こんな良いものを子どもだけのものにしておくのはもったいない!って。でも絵本って、お子さんがいる方や教育関係の方など、限られた大人以外は触れる機会が少ないですよね。もちろん書店に絵本コーナーはありますが、大人が自分のために行くことなんてあまりないですし。だから、大人が『あれ? なんだここ』ってフラッと気軽に入ってこられるような、何か感じて帰ってもらえるような絵本屋をやりたいなって。

 

 

 

並べられた絵本がどこか立体的に映り、それぞれに存在感があることに驚かされます。まるでギャラリーで絵画を観るように、絵本を眺められますね。

 

こだわっているのは、パッと見です。直感的に『これいい!』って目に飛びこんでくるのも大事ですから、まず表紙を見てもらえるようにメリハリをつけた並び方にしています。色味や絵のタッチで同じ系統の絵本が続くと埋もれちゃいそうで。1冊1冊が引き立つように、いつも棚を眺めてはちょこちょこ並べ替えてます。こうすることで、お客様がそれぞれ好みの絵本にパッと目がいくようになると思うんです。

 

あと、しかけ絵本などは手に取りやすい形で並べています。たとえば、このキノコのおうちが立ち上がるページのように、180度しっかりと開かないといけないものも多いんです。開いた時に隣の厚みが邪魔して半開きにならないようにとか。

 

他の絵本と一緒に棚に並べている絵本の中にも、ちょっとしたしかけのある絵本もあって、『このあかいえほんをひらいたら』これも、絵本の中にも絵本があって、それをどんどん開いていくしかけが面白い絵本なんですけど、こんなしかけがあるなんて外見からでは分からない。こういう絵本は実際に開いて見せることが多いです。

 

ここにある絵本はレアな絵本や高価な絵本ではなく、どこでも普通に売っている絵本がほとんどです。私自身が本屋さんに行くと「なんだ、この絵本ここにもあるんだ!見つけたの私だけだと思ったのにー」って思うこともあります(笑)。でも、ここでは営業的なこと…新刊メインで、売らなきゃいけない本を平積みにしてお客さんの目を引いて…というようなことは気にしなくていい。だから普通の本屋さんだと棚に埋もれてしまうようないい絵本を、出会いやすく並べたいですね。

 

 

見渡せば、昔から愛されている絵本もあれば沖縄の絵本、詩のように語りかけてくれるような大人向けの絵本などたくさん揃っていますね。どんなモノサシで絵本を集められているのでしょうか。

 

これはもう感覚で選んだとしか言えないんですけど、私が「これ、いいな!」と感じたものを500冊ほど置いてあります。

 

「いいな」と感じる理由はいろいろですが『きょうはマラカスの日』なんかは、絵もストーリーもとにかくお茶目で、穏やかな日常の幸せやさりげない友情がたっぷりこめられていて、見る人を笑顔にしてくれます。荒井良二さんの絵本も好きで、つい多く置いてしまうのですが、荒井さんの作品は言葉遊びも面白いし、忙しい大人にこそ心地よいメッセージが届くはず。たとえば、『ぼくがつぼくにちぼくようび』の、「晴れた空にむけてアーッと口を大きくあけると太陽のつぶつぶが口からコロンコロンと入ってきて、なんとなく心のバイキンがシュンとなって小さくなる気がしていいぞォ!!」なんて一文。楽しくなったり、うれしくなったり、そんなおまじないのような言葉が散りばめられています。

 

あとは、私自身が小さい頃に好きだった『長靴下のピッピ』みたいな定番も置いてます。あと、『やさしいあくま』これは小学校で読み聞かせをしたんですが、私、号泣で、読み聞かせの持ち時間を倍以上もオーバーしてしまったんですよ。

 

こんな感じに私の好きな本を集めていて、カテゴリやジャンルは特に意識していないんです。たまに、「あ、なんか今回は日本人作家の絵本に偏っちゃったな…」って時もあるんですけどね。

 

とにかくいい絵本と出会ってほしいので、数は少ないですが古本も置いています。これはもう古本でしか手に入らないけどオススメの絵本、それか少しでも安く提供したい絵本という2つの理由ですね。

 

 

 

この決して広いとはいえないスペースに、500冊も!この冊数には何か意味があるのですか?

 

私が内容をしっかりと把握して、お客様からの絵本選びの相談に乗るためには、この500という冊数が限界ですね。初めは300冊ぐらいだったのにどんどん増えてしまって。入れ替えはしますが、数はこれ以上増やさないつもりです。

 

実は、ここで最初に絵本屋を開きたいと言った時は、周りは反対ばかりだったんです。もちろん私のためを思って言ってくれてたんですけど、『本屋やるには規模が小さくない?』『扱う冊数が少なすぎるよ』とか。でも、ここで私がある程度セレクトして絞って置くことで、『大型書店だと、絵本が多すぎて選びきれない』という方にも、選びやすいと言ってもらえます。

 

 

お客さんから絵本選びの相談を受けることは多いのですか?

 

絵本選びをとことんお手伝いできるのも、こういうお店の形ならではのこと。一番多いのは、『甥っ子にプレゼントしたいんだけど…』とか『落ちこんでる友達に贈るのにいい絵本ってある?』とか、贈りもののご相談ですね。贈る相手のことを私は直接知らないし、好みもありますから、こういう時はピンときたものをあれこれ出してくるんですよ。「それなら、こういうのはどうですか?こんなのもあります」ってたくさん並べて、そこから選んでもらえるように。

 

最近多いのは、出産祝いに贈りたいというご相談です。赤ちゃんが女の子と分かっている時は、私は『ちいさなあなたへ』をオススメすることが多いんですが、本って人によって捉え方は違いますよね。私がこれを読んだ時は、幸せな瞬間瞬間を鮮明に感じたんですけど、お客様からは「自分の親のことを考えて、切なくなっちゃう…」と言われたことも。だからこそ、出産した方だけじゃなくお母さんから生まれてきた全ての人に読んでみてほしいんです。お母さんの想いが近くに感じられるはず。この絵本なら誰にでも絶対いい!という絵本なんてないですけど、それも面白さですし、なにより贈るために、相手のことを考えて絵本を選ぶ行為が喜ばれるはずです。

 

絵本って贈り物にぴったりだと思うんです。活字の本や分厚い本だと、相手に負担をかける心配もありますよね。「もらったから読まないと悪いけど、時間がなかなか…」とならないかなとか。でも絵本ならサラッと読めるし、気持ちもまっすぐに届きやすい。重たすぎず、さりげないメッセージをこめて贈れるものだと思うので。

 

 

贈りたい絵本をじっくり相談したり、あるいはひとりで自分用の絵本を探したり…居心地の良さが可能にする時間の流れがありますね。

 

2~3時間いらっしゃる方も、ざらにいます。実は、お隣のカフェ「プラヌラ」さんからドリンクをデリバリーできるようにもしてるんです。コーヒーでも飲みながらくつろいでほしいって。ただ今は、絵本が多くなってきてスペースの関係で利用しにくい感じになってしまったんですけど…。ゆったり読みこんでいってほしいですし、図書室のように、おうちのように使われるので全然良いんです。荷物をおろして、腰をおろして、じっくり楽しんでほしいです。

 

 

大人向けの絵本屋さんとしての想い。それが伝わって、お客さんはやっぱり大人の方が多いのでしょうか?

 

7割ぐらいは大人の方ですね。「絵本、実は大好きなんだけど、男ひとりじゃ本屋では読みづらかったから良かった」という男性の方や、会社帰りによく寄られて、「はー、このリフレッシュが私の不可欠、この時間が要る…」と言う方もいます。「この歳になって初めて絵本にハマった!」なんて方も多いんです。

 

壺屋なので旅行客の方も多いです。旅行客といえば、アジアからのお客様も多いのですが、日本の作家さんに詳しくて驚きますよ。「荒井良二さんって韓国でも有名で好きなんだけど、あっちは訳したのがあんまりないから…」と何冊も買っていかれた方とか、台湾の方で『かないくん』を見つけるなり、「あっ松本大洋がある!」って飛びついた方もいました。

 

初めから絵本を目指してきてくださる方もいますし、旅行客なのか、若い女子2人組がたまたま通りかかって、「何これ、可愛いんだけど!」「え、めっちゃ良いじゃん!」ってパパッと入ってきてくださることもありますね。絵本って飾るだけでも絵になるから、それも全然アリだと思うんです。他のお客様からも「おうちでも、こんな風に飾るのマネしよっと」と言われることもあります。この周辺にはお洒落なカフェやインテリア、雑貨のお店も多いのですが、絵本とも「可愛い!」「この表紙、おしゃれ!」みたいなところから出会ってもらえたら嬉しいです。

 

 

今後、どうなっていきたいかをお聞かせください

 

これからも、初めての方や常連さんをも飽きさせないような面白い絵本をひっぱってきたいですし、またそれと出会いやすい形で並べていきたいですね。外国に絵本を集めにいくのも面白そうです。それに、私がずっと好きな絵本作家さんを呼んで、ここでワークショップなんかできたら最高ですね。周りは「意外とすんなり来てくれるかもよ?」なんて簡単に言ってくれちゃうんですけど(笑)。近い将来必ず!って思ってます。

 


hoccorie えほんや ホッコリエ
那覇市壺屋1-7-20
open 10:00~19:00
close 日曜日
http://hoccorie.ti-da.net