ハッピーベリーおきなわ嘘も飾り気も要らない、本物のお菓子だけを

ハッピーベリー

 

ハッピーベリー

 

「ゴーヤと鶏のマフィンなら、ちゃんと、しっかりゴーヤと鶏が入ってなきゃって思うの。上っ面だけのものは大っ嫌いだから」

 

てづくりかしのみせ ハッピーベリーのオーナー、小磯悦子さんはきっぱりと言う。その「ゴーヤとやんばる鶏スモークのマフィン」をかじってみれば、その言葉通り、苦味も旨みもしっかり感じられるゴーヤがこれでもか!というぐらいにゴロゴロ。なんと、ワタも種も、そのままガブッといけるのだ。島ニンニクのほのかな香りが効いて、ゴーヤってこんなたくさん食べられるものだっけ?と驚く。マフィン1個で、おかずとごはんがしっかり摂れたような満足感がある。

 

ハッピーベリー

 

ショーケースに並ぶマフィンたちは、どれも個性的だ。まず姿からして大きく、頭でっかちのフォルム。そして、一見しただけでもう、野菜や果物がざくざく入っているのが分かる。島らっきょがそのままドン!と載っているものもあり、とっても豪快なのだ。

 

「毎年少しずつリニューアルするんだけど、どんどん過激になってきて(笑) でも、あれもこれも入れたい!って中身を考えると、このぐらいの大きさは必要だし、ちゃんと1個でおなかいっぱいになるのがいいなって」

 

「カシスとサワークリームのマフィン」もそう。最後の一口まで、しっかりとカシスの酸味とクリームを堪能できるのだ。

 

ハッピーベリー

 

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ハッピーベリー

 

どれも名に付いた素材をちゃんと、しっかり満喫できる、偽りなしのマフィンばかり。そして、ただ、中身がぎっしりつまっているだけではない。小磯さんの、嘘のない、本物へのこだわりはすべてに。

 

「マフィンの中に入ってるお惣菜も、できる限り手作りしてます。さっきのやんばる鶏のスモークも、ショウガとイタリアンパセリ、粒こしょうと一緒に6~70度のお湯で茹でたものを、30年前のオーク材でできたウィスキー樽のチップでスモークしてます。ウィスキーの香りがうつって良い香りがするし、30年前の樽だから、放射能のことからしても安心でしょ? あとは、『甘露梅とゆかりのクリームチーズマフィン』のゆかりも、シソの葉の束を買ってきて、白梅酢でアク抜きして、粉にするまで全部、自分たちでやります。自分の目で見て、作ったものなら信用できるから」

 

ハッピーベリーおきなわ

 

てづくりかしのてづくりは、想像よりもずっと細かなところからだった。その真摯な姿勢は、食材選びからもうかがい知れる。

 

「マフィンに使っている砂糖は、沖縄県産100%のサンゴ入り砂糖にしています。サンゴのカルシウムが入っていて、具合の悪い時は、これとこれは食べないようにするっていう、いわゆる食養生をしてる人でもサンゴ入り砂糖なら大丈夫ってぐらい、自然の優しい味わいがするんです。でも、フルーツを使うものにはどうしても合わないから、フルーツを使うものは北海道産の甜菜糖を使うんですよ」

 

ハッピーベリーおきなわ

 

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砂糖ひとつ選ぶのもおろそかにしないのは、ハッピーベリーのお菓子をきっかけに、食への関心を持ってほしいから。

 

「本当は、地元のものが一番いいの。今は、牛乳や果物は沖縄県産を中心に使ってます。他もなるべく沖縄に近い、九州産とかを中心に。あとは、信頼できる農家さんからしか仕入れません。ちゃんと顔を見てお話するために、この前は山口県まで出向いたり…。できる限り、無農薬で、虫が付いているようなものを選んだりね。震災以降は、放射能を気にする人も多いから、ショーケースの上に材料の産地を表示するようにしてます」

 

ハッピーベリーおきなわ

 

また、産地だけでなく、食材の旬も大切にすると言う。

 

「今なら沖縄のゴーヤが生命力に溢れてますよね。そろそろパイナップルも出る頃かな。お菓子で季節を感じてもらえるように、季節の野菜や果物を使ったものをたくさん作ろうって」

 

お菓子に関わるものすべてに妥協はしない。その徹底した姿勢はどこからくるのだろう?

 

「自分たちが食べるもの!という意識で、ちゃんと一個ずつ選んでいくのが大事だなぁって。ケーキとか焼肉とか、昔は分かりやすいごちそうがあったけれど、今はいっぱいありすぎて、どれも大事にできていないなぁという気がしていて。私はお菓子の学校を出ているわけではないけど、自分のおいしいはなんだろう、自分の好きはなんだろうって考えながら、今できる精一杯のことをやっているだけなんですよ」

 

ハッピーベリー

 

ハッピーベリーは、福島市矢吹に1号店がある。高速道路を使って、首都圏からも毎週やってくるお客さんがいるほど、人気の店だ。小磯さんは2011年の東日本大震災をきっかけに、沖縄に移住。初めはうるま市に2号店を出し、今は浦添市に移って、お店を営んでいる。

 

「福島もここも、気取らない店にしたいなぁ、お客さんがふらっと来て、みんなの顔見て帰るぐらいの店がいいなぁって思ってて。バイトの子にも、『どうしてそんなになまってるんですか?』って言われたことがあって、『きれいな言葉で話したら、みんな緊張しちゃうでしょ!』って言ってるんです(笑)」

 

そういえば、小磯さんの言葉には独特のなまりがある。福島にゆかりはないのに、なぜかそのなまりが親しみを感じさせる。お菓子づくりにはとことんこだわるが、小磯さんや店の雰囲気に気難しさは一切ない。マフィンの見た目と同じように、飾らず、気さく。

 

「お客さんとの距離がすごく近いんです。おしゃべり、楽しいですよ。夏に毎日来て、ソフトクリームを食べるからってことで、“ミスターソフト”って呼んでるお客さんもいるし、“ミスソフト”や”ビスコッティ夫人”もいる。『昨日のこれ美味しかったけど、今日は何にしようかな』なんて、1週間に2回ぐらい来る常連さんもいれば、お店は9時半からなんだけど、会社に持っていきたいからって、7時半ぐらいにドアを叩くお客さんもいて。おじさん、おじいさんのお客さんも多いかな。70歳ぐらいのおじいさんが3人並んでるなんて時もありました」

 

ハッピーベリー

 

ハッピーベリー

 

ハッピーベリー

 

また、お客さんがお店を育ててくれるとも言う。

 

「お客さんから食べたいものをリクエストされることも多いんです。ゴーヤのマフィンも、あるお客さんから、『季節の野菜のマフィンをたくさん作ってきたんだから、沖縄といえばゴーヤだし、ゴーヤのもぜひ食べたい!』って言われて。あと、『お店に来て、スタッフとおしゃべりしたいけど、夏はどうしても食欲が落ちるんだ・・・』と言うお客さんのために、フルーツ入りのゼリーもメニューに加えました。あと、私たちは宣伝の仕方があまりよく分からないんだけど、お客さんの方から、マルシェのチラシを持ってきてくれて、『こんなのがあるから、出してみたら?』なんて言ってくれることもあるんです。しかもその方、実際にマルシェに行って、『スタッフの子たち、頑張ってたよ!』とか『1回目より2回目の方がリラックスしてたかな』とまで教えてくれて・・・」

 

お客さんたちについて話す時の、小磯さんのまなざしは温かい。
ハッピーベリーは、その名の通り、1本のブルーベリーの木から始まった。

 

「私は教育学部を出てて、不登校の子どもたちの居場所を作りたいと思ってたんです。それで、山にそういう場所を作ろう、何からしようかなぁっと思った時に、まず、ブルーベリーの木だ!と思って、畑に200本ぐらい植えたんです。ブルーベリーなら、食べられるし、花も可愛いし、農薬も使わないし、紅葉もするしって。それで、できたブルーベリーをジャムにしたら、思ったより売れたんです。それがはじまりですね。子どもたちの施設を作るには、お金がすごくかかるんです。だから、まずは自分たちでちゃんと生活して、そこからの夢だねって。甘い物を手作りするのも好きだったので、お菓子屋にしました。今の夢は、スタッフのみんなに、仕事は楽しい!仲間達と働くと楽しい!って感じてもらえる日々を作ることですね」

 

ハッピーベリーおきなわ

 

小磯さんが、かたわらにいるスタッフを見やる。

 

「このチカちゃんは、福島の店からいるから、もう9年ぐらいになるね。こんなおねえさんになるとは思わなかったなぁって。最初はシャイで控えめだったんだけど、すっごく成長して今はマネージャーもするようになって、他の子から憧れのまなざしで見られることもあって……。他にも、最初は失敗して、いろいろあって『私、だめかもしれない』って思いこんでた子が、どんどん自信つけて成長していくのがすごくうれしいなぁって。やっぱり私は、怒らざるをえない時もあって、鬼監督なんて呼ばれてるけど、スタッフにはもっともっと自分のことを好きになってほしいんです。だから、もう毎日愛の言葉をかけてる」

 

そう言いながら、小磯さんの目には涙がうっすら。それを見て、チカちゃんこと、大槻知香子さんも照れくさそうに微笑む。対象こそ、子どもたちではないが、誰かの居場所を作りたいという夢は、少し形を変えて叶っているのかも。

 

ハッピーベリー

 

ハッピーベリー

マロンのさくさくタルト。無糖の生クリームと発酵バターを使い、ベリーの酸味でもって、マロンの魅力を最後までちゃんと伝える

 

「社員旅行で、みんなでワンボックスカー1台に乗り合わせて、スイーツを食べにいくんです。研究を兼ねてね。東京や秋田、神戸…8時間かけて行った時もあったなぁ。1日5~6軒回って、1軒で10~20個は買います。私と主人が初めの一口を食べて、後はみんなで回していって。もう糖分が頭の毛穴から出てきそうなぐらい…頭おかしくなるんじゃないかってぐらい食べますね。やっぱりウチのお菓子の方がおいしい!ってなるけど、興味あることって、やっぱりこれしかないから」

 

スタッフみんな揃っての食べ歩き、お客さんたちとの楽しいやりとり。小磯さんが伝えたいと願う、仲間たちとの楽しい日々とは、こんな光景ではないだろうか。

 

「私たちが奥の厨房で作業してる姿が、お客さんからも見えるような店の作りにしてるんです。お客さんを見ずに作るのと、このお客さんが食べてくれるんだ!と思いながら作るのでは全然違いますから」

 

お客さん、スタッフ・・・周りの人々へのひたむきな想い。ただ、おいしいお菓子をと願うだけではない。”誰かのために”が付けば、すべてはぐんと力を増す。お菓子の向こうにいる誰か。その誰かの顔が、ちゃんと、しっかり思い浮かぶからこそ、小磯さんは嘘のない本物のお菓子を作り続けていくのだ。

 

文 石黒 万祐子

 


てづくりかしのみせ ハッピーベリー おきなわ
浦添市仲間1丁目2-8(浦添美術館近く)
098-943-9814
open 9:30 ~ 18:30
定休日 毎週火曜日、第2水曜日
blog http://yabukiya.exblog.jp

 

いなかのてづくりかしのみせ ハッピーベリー
福島県西白河郡矢吹町弥栄63-2 1F
0248-44-5538
open 9:30 ~ 19:00
定休日 毎週火曜日