ハートモチーフをあしらった燕尾シャツと
県産紅茶染で染め上げたティーデニムパンツが
二人のウェディング衣裳。
新郎の足許はサンダル、新婦はスニーカー。
友人お手製のブーケはなんと鳥かごの中に!
入場してきた二人を見て、
「可愛い〜!」
「すごい!素敵!」
の歓声があちこちから。
装飾的なヘッドドレスはLove Baile(ラブバイレ)のオリジナル。
シンプルで個性的な衣裳によく合い、
艶やかな黒髪と大きな瞳が印象的な新婦の美しさを際立たせている。
全てがオリジナル、個人の要望に合わせた完全なるオートクチュールウェディング。
今回は特に、彼等自身がプランを手がけた建物で、
さらに、自身のブランドで衣装もデザインし、
創作的なブーケやウェルカムボードもクリエーターである仲間達の手作り…
こんな結婚式が今まであっただろうか?
今回結婚式を挙げたのは、AKARAアートディレクターの名嘉太一・恵利子夫妻。
6年前に入籍は済ませていたが、
様々な都合により、これまで式を挙げられなかった。
「ずっと挙げたいなとは思っていたんですが、
スタッフや友人から『AKARAで挙げたらいいさ〜』と。
ちょうどAKARAでのウェディングプランも提案したいと思っていましたし、
夏希さんとの出会いもあって。」
沖縄らしさを追求し、個人の要望に沿ったオリジナルの挙式を提案する「Love Baile(ラブバイレ)」の代表、ウェディングデザイナーの新垣夏希さんとの出会いにより、
AKARAとのコラボレーション・ウェディングが実現した。
AKARA内「名嘉睦稔美術館」にて
「琉装で写真を撮りたいとずっと思っていたのですが
AKARAでそれができるかな?と懸念していました。
でも今回、夏希さんが素晴らしいスタッフを揃えてくださって。」
夏希さんのご主人・新垣俊道さんが沖縄県立芸術大学で助教を務めていることもあり、日頃から琉装を着慣れているプロが、髪結い、着付け、衣装コーディネイトのスタッフとして参加している。
左:最高のショットの為に労苦を惜しまない。多くの人気アーティストや女優の写真集なども手がける有名カメラマンだ。
右:髪や衣装を整えるのは、美容師ではなく実演家の金城真次さん。琉球舞踊、組踊、沖縄芝居と幅広く活躍する売れっ子だ。
スタッフだけでなく、アイテムも全て「本物」にこだわっている。
紅型の衣装はレンタルではなく、Love Baile で買いそろえたもの。
房指輪(ふさゆびわ)は球王朝時代から続く「金細工(くがにぜーく)師」の家系の七代目、又吉健次郎さんの作品だ。
「本物を身につけることで伝わってくるエネルギーがあると思うので、
小さなアイテムにもしっかりこだわっています。」
入籍時に購入した結婚指輪も又吉さんによるもの
実際に琉装を身につけて撮影にのぞんだお二人は
「着てみると気持ちが引き締まって、普段の猫背がぴしっと伸びました。
男性は真っ黒で、女性の美しさを上手く引き立てられたんじゃないかな。」
と太一さん。
「普通の着物よりも着た感じがとてもラクなので驚きました。
やはり凛とした気持ちになりますね。
結い上げた髪を通る沖縄の風が、
普段の洋服を着ている時とは違うなと感じました。
髪の中を風が通って心地よく、風土に合ったスタイルなんだなと。
昔の人と想いを共有したような気持ちになって、
『自分もうちなーんちゅになった…』
と、感慨深かったです。」
とは恵利子さん。
琉球舞踊に精通しているスタッフたちによる着付けは、
一般的な美容室での着付けとは違うという。
「身体に沿って着付けるので、着ているご本人もラクなんです。
髪も、入髪(いりがん)という1mほどの人髪を付けてから結いあげるので、
ウィッグとは違う本物感が出ます。」
この日は、
琉装を着用してのプロカメラマンによる撮影、
AKARA内のカフェ「JANOSZ(ジャノス)」での人前式、
集合写真撮影、ウェディングパーティーとフルラインナップだったが、
「2人だけで来て食事して終わり、でも良いんです。
衣装を着て撮影だけでも良いし、
琉装じゃなくてドレスでも良い。
すべてご本人達のご要望に応えます。
いらないものは、いらない。
やりたいことだけやるというのが、Love Baile の方針です。」
美浜のデポアイランド内という立地から、
「よし、やるぞ!」と気負うことなく、気軽に相談できそうな雰囲気も良い。
「撮影して頂いた写真を見ると、
一般的な会場とはまた違う、味のある仕上がりで満足です。」
流線的な赤瓦の屋根が特徴的なAKARA。
目の覚めるような白壁に、
海の青と瓦の赤がよく映える。
一風変わった独特な建物だが、どこで撮影しても琉装を着た二人がびしっとハマる。
特に、建物内を通る道が印象的だ。
「AKARAに通る2つの道は、
いずれも沖縄に吹く風の方向に通しました。
沖縄が古くから交易で栄えたのは、
夏には夏至南風(かーちーべー)と呼ばれる南西方向からの風と
冬には北東からの新北風(みーにし)という季節風に助けられたからです。
AKARAでは紅型のルーツである中国の藍染め(藍印花布:あいいんかふ)の服も提案しているのですが、
中国製だからという理由で敬遠されることもあって。
文化とは本来、風のように流れ、巡りいくものだと思うんです。
その土地だけで育まれるものではないと。
ですから、『〜製』というような考えに捕われるのは勿体ないという想いがあり、
そういうことを風が教えてくれるんじゃないかなと、
この2つの道を通しました。」
こだわりの詰まったAKARAはまた、
落ち着いた洗練されたスタイルを備えているため、
幅広い年齢層のお客様の要望に応えられるだろう。
「銀婚式や金婚式、還暦のお祝いなどにもピッタリだと思います。
フラダンスの発表会? あ、そういうのも良いですね!」
AKARAとしては、結婚式意外のどんな催しにも対応し、
Love BaileはAKARA以外の場所でのウェディングにも対応する。
両者の関係性もまた、フレキシブルだ。
Love Baile の夏希さんは独立前、
ウェディングとは全く関連性のない職業に就いていた。
「異業種から独立したので、業界の常識を全く知らないんです。
だからこそできることがあるし、斬新なアイディアにも臆せずトライできる。
ウェディングだから、という固定概念にとらわれたくないという想いがあります。
例えば、今日のお二人の衣裳も、普通の結婚式ではまず見ないスタイルですよね。
でもそれがお二人のカラーであり個性、それを活かさない手はありません。
2人と周りが幸せなら、その結婚式は成功なんです。」
当日を迎えるまでのコミュニケーションを、何よりも重視している。
「当日初めて会って、
『撮影します』『はい、終了』『帰りま〜す』
というのは、なんか違うな、と。
打ち合わせを綿密に行い、お二人がやりたいことを引き出し、
ウェディングの方向性を見定めて、しっかり作り込むというのが私の仕事です。
頻繁に顔を合わせて信頼関係を育み、
『この人になら任せられる』
と安心して当日を迎えて頂きたいのです。
ですから、当日になれば私がやることは殆どありません。
信頼のおける最高のプロフェッショナルである、カメラマンが撮影してくれて、
介添えのアシスタントが衣装を直し、私の仕事といえばスムーズに進行するよう、
場の空気を常に読みながら見守ることくらいでしょうか。」
新郎の父、名嘉睦稔の版画が会場を彩る。
ウェルカムボードは新郎の母の琉歌を交えた両親のコラボ!
独立するきっかけとなったのは、自身の結婚式だった。
「結婚式って、メイクもあり、ドレスもあり、写真もあり、
料理もあり、会場にはお花もありで、
夢のような楽しい要素が満載なのに、
どうしてこんなに面白くないんだろう?
もっとクリエイティブにできるはずだけどな~と思ったのがきっかけです。
プランナーさんはプランニングが仕事なので、
提案はしないんですね、プロデューサーではない。
段取りをしっかり組んで、当日をそつなく終わらせることが仕事。
だから、式が終わればその後一生会うこともないという関係です。
ウェディングを産業として成立させるなら、
点ではなく線にならないと意味がないと思うんです。
式が終わった後もずっと続いていくような、
長いおつきあいをしていきたい。
そして、お客様と会場との間をつなぐ架け橋にもなりたいんです。」
自分が望む結婚式のスタイルって、なんだろう?
親戚も友人もみんな呼んで、わいわい楽しい大規模スタイル?
新郎新婦に両親、大切な親友だけを呼んでの親密な小規模スタイル?
パーティーも指輪交換も要らない、記念撮影して食事をする、2人だけのささやかなお祝い?
ウェディングにはきっと、王道も間違いもない。
しきたりや「普通は・・・」という概念をとっぱらった、
Love BaileとAKARAのコラボレーション・ウェディングを見ると、
結婚式は面倒くさいなものなんかではなく、
本人達が一番楽しんで良いセレモニーなのだということに気付かされる。
夫婦として太一さんと6年連れ添った恵利子さんの、
「今日一日は、これから先も2人共に歩んで行くための糧になりました。」
という言葉と、
新婦としての幸せに満ちた笑顔が、全てを物語っていた。
写真・文 中井 雅代
AKARA(アカラ)
北谷町美浜9-20(デポアイランド内)
098-926-2764
HP:http://www.akara.asia
ブログ:http://akaragallery.ti-da.net
JANOSZ(ジャノス)
北谷町字美浜9-20 AKARA 3F
open:11:30~23:00
098-989-5267
info:http://r.gnavi.co.jp/f539100
Love Baile(ラブバイレ)
098-988-9142
mail:info@lovebaile-wedding.com
HP:http://www.lovebaile-wedding.com
*2人のウエディング衣装について*
1999年に発足したHabuBoxのハイコンセプトライン
『LEQUIOSIAN:レキオシアン』。
デザインディレクターに「こちんだatelier(名嘉太一、ナカエリコ)」、
テキスタイルデザイナーにボクネンを迎えて、
新たに生まれ変った “オヤコラボプロダクツ” です。
発足時から取り組んでいた藍印花布や、
様々なファブリックに繰り広げられるボクネンテキスタイルと、
熟考されたパターンメイキングで
幻想の海遊民 “琉球民族:レキオシアン” を表現します。
今年の夏から HabuBox(ハブボックス)ネットショップで販売開始予定。
(LEQUIOSIANの着こなし色々はコチラ)