***ネタばれしてます***
かなりおすすめします。
できればすべての人に見てほしいくらい。
リチャード・ジェンキンスは、いわずとしれた名脇役。
主演作はなくても、顔は誰でも知っているのではないでしょうか?
その彼がオスカーノミネートされたときは「主演?」とびっくりしましたが、これはもう素晴らしい出来です。
彼といい、「レスラー」のミッキー・ロークといい素晴らしかったんだけど、そうおもうと当時の受賞が「ミルク」のショーン・ペンって納得いかない(笑)
この映画は、脚本、配役ともに見事です。
何もかもに無気力なウォルター。妻を失ってから、完全にやる気を失っている。
そこで、タレクと出会う(この出会いが強烈)。
彼は、素晴らしく好青年。
ほんと、すごい。こんな人いたら間違いなく恋に落ちるよ、私。
二人の間には友情が芽生える。
タレクには恋人がいてザイナブっていうんだけど、彼女はウォルターには心を開かない感じ。
それは、やはり不法滞在だから人と深くは関わらないっていう理由だと思う。
納得です。
ウォルターはタレクと仲良くなってジャンベを教わる。
そして、その魅力にもハマる。
このあたりが「shall we dance?」に共通するものを感じました。
最初はおぼつかないんだけど、いつも練習しててとっても楽しそう。
私も映画観ながら、自然にリズムを刻んでて。アフリカンドラムっていつも気になってるんだよね。
習いに行きたいです。
タレクが、地下鉄で誤解から逮捕されてしまう。
不法滞在だったので拘束されてしまうんだけど、タレクの場合、小さなころにアメリカに母親と移民としてわたってきて、手続きが完璧でなかったために不法滞在になってしまった。
だから、アメリカでふつうに学校にも通っていて問題なかったんだよね。
そのあたり移民局がからむので、よくわかります。
母親がミシガンからタレクを心配してたずねてくる。
お母さん、若い(笑)
若くて美人で聡明。
この母親だったらタレクがあんなに好青年なのも納得。
学校も休職して、母親モーナに協力して、タレクを釈放するために奔走するウォルター。
無気力だった彼が、感情をむきだしにするシーンもあり。
モーナともいい感じに。
ウォルターは、移民弁護士もやとう。
この弁護士も、ルーツは移民。
親戚も強制送還されたことがあるというが、モーナの 「where are you from?(どこの出身?)」の質問には迷いもなく「Queens(クィーンズ)」と答える。
このシーンはかなり印象的。
どこがルーツであろうと、アメリカで生まれて育った人は、出身はアメリカである。
私はアメリカに住んでいた時はいつもこの質問があり、「フロリダ」と答えていたが「オリジナルはどこなの?」と聞かれたときだけ「日本」と答える。
移民問題はアメリカでは9.11以降かなり厳しいものであり、私自身も、受かった面接をアメリカ国民でないという理由で取り消されたこともある。
理不尽なことがしばしばある。
それがアメリカだと思っている。自由な国というが、移民には全然自由ではない。
拘留されている、タレク。
ここでも、全く予期せぬ出来事が起こる。
いい感じだったモーナとウォルターも決断をしなくてはいけないときがくる。
こんなに愛し合っている人達が引き離されて、しかも悪いことは何もしてない。
悪い事をしてても、お金持ちはなにとがめられないアメリカは、理不尽という言葉だけでは表わされないほど、摩訶不思議だ。
この映画はおとぎ話ではなく、アメリカの現実をきちんと伝えていると思います。
原題の「 THE VISITOR(訪問者) 」はいろんな意味に解釈できる。
移民自体も VISTOR
タレクとザイナブ、モーナがウォルターの家のVISITOR
刑務所の面会をするウォルターも VISTOR
そしてシリアに帰る二人も。
最後の最後まで、強いメッセージ性があり、音楽も素晴らしいです。
是非、どうぞ。
KEE
<ストーリー>
妻に先立たれて以来、心を閉ざして生きてきた大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)。出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンの別宅で見知らぬ若いカップルに遭遇。彼らはシリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)だと名乗るが……。
<キャスト>
リチャード・ジェンキンス
ヒアム・アッバス
ハーズ・スレイマン
ダナイ・グリラ
マリアン・セルデス
リチャード・カインド
マイケル・カンプスティ
他
☆DVDでどうぞ