「海燕社の小さな映画会」 2022年6月/June 『糸満の女』『イザイホウ』

「海燕社の小さな映画会」 2022年6月/June
作品 『糸満の女』(1968年/27分)『イザイホウ』(1967年/49分)
※特別上映『映画監督・野村岳也』(2020年/12分)
日時 2022/6/19(日)
場所 沖縄県立博物館・美術館 講堂 (3F)
時間 12:30受付、13:00開場、13:30開始
料金 1,500円(完全予約制)
電話 098-850-8485(海燕社/カイエンシャ)

【糸満の女】この作品は1968年に製作されたが、一度テレビ放送されただけで長い間眠っていたものである。元はフィルムであるが、数十年の歳月に原版は傷み果て、今では傷ついたこの映像だけしか残ってはいない。
当時、私は製作スタッフとともに、男は海へ女は畑へ、あるいは男が魚を獲り、女がそれを売るといったようなシンプルな暮しをさがし求めていた。複雑化した現代社会では、そのような基本形態が殆ど見られなくなっていたからである。そんな古拙な社会には失われた祈りがあり、愛があった。ある意味でこの作品は糸満に対する私たちの思いを描いたものであり、したがってナレーションなども現実にそぐわない表現があるかも知れない。私は、海を仲立ちとした男と女の生が、墓という死の家へ収斂されてゆくそんな形を見ていたのである。ドキュメンタリーとしては独断と偏見が先行しているかもしれないが、その映像はまごうかたなく1968年の糸満の姿をあらわしている。(野村岳也)
【イザイホウ】沖縄県南城市の久高島は、昔から神の島として知られ、年間三十に及ぶ神事が、島の暮らしに組み込まれており、今でも島人によって厳粛に受け継がれている。 この久高島最大の神事が、十二年に一回午年に行われる「イザイホウ」である。
「イザイホウ」は、30歳から41歳の島で生まれ、島に生きる女が神になる神事で、四日間の本祭を中心に一ヵ月余の時をかけて行われるのである。島の女たちは、ノロを中心に神女組織を構成して島の男たちや島の暮らしを守ってきた。
これは、1966年の「イザイホウ」の記録作品である。
「イザイホウ」はその後1回行われ、1978年を最後に消滅した。多くの祭や神事が時代の波とともに形骸化し観光資源に変身したケースの多いなかで、「イザイホウ」は厳粛な神事の心を失わず、生きたまま消え去ったのである。
「イザイホウ」はまた、ドラマチックな構成を持ち、歌や踊りの原点ともいうべき内容を有し、学問上でも価値の高い稀有の神事であった。今は、この記録映像で、その魅力の一端を感じてもらうしかないのである。(野村岳也)

海燕社ウェブサイト http://www.kaiensha.jp/
6月会チラシ http://www.kaiensha.jp/theater%20&%20gallery/Flyer_theater_20220619.pdf
予約フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdbHQrXmmjUN5IX7tAygnONijLTArxBJjOVIQ-cYoIL7cqzxA/viewform?fbclid=IwAR0cgUSnqyaVniS2SBS1b7IdbQYDOczOwaOSnADgCJ_4otTRHoVORlBLbDU