「海燕社の小さな映画会」 2022年9月/September

作  品 『チセアカラ われらいえをつくる』(1974年/カラー/57分)
日  時 2022/9/17(土)
場  所 沖縄県立博物館・美術館 講堂 (3F)
時  間 17:30受付、18:00開場、18:30開始
料  金 1,500円(完全予約制)
電  話 098-850-8485(海燕社/カイエンシャ)

自主製作/北海道苫小牧市
1974年教育映画祭優秀賞
1974年東京都教育映画コンクール銀賞
1974年キネマ旬報文化映画ベストテン5位

972年の春、萱野茂さんら二風谷の人々によって行われた、アイヌの伝統的な家作りの記録である。家作りには二つの工法があった。一つは、地面に穴を掘り、柱を立て、その上に梁、桁、屋根と組み上げていく工法。もう一つは、屋根をまず地上で組み立て、それを人力で持ち上げて柱をかますチセ・プニ(家起こし)という工法。どちらも屋根の構造の基本をなしているのは、3本の材を結束した三脚状のケトゥンニである。ケトゥンニによる工法を、寄棟造りの原型とみる人もある。
 アイヌの家作りは、祈りに始まり祈りに終わる。はじめに敷地にポン(小さな)・ケトゥンニを立て、火をたき、イナウ(木を削って作る祭具)を立て、祈る。そこにいた虫や獣たちの霊を慰めるとともに、この土地を一時貸してくださいという意味をもつ火の神への祈りである。家が完成するとチセ・ノミ(家への祈り)。そこでは、屋根裏にヨモギで作った矢を射るチセ・チョッチャが行われ、材料となった木や草の悪霊を鎮める儀式をする。あるいはチセコロカムイ(家の守護神)を作り東側の柱の後ろに安置する。囲炉裏の消し炭を火の神からいただき、サンペヘ(心臓)としてつけたイナウである。
 アイヌの家作りには、アイヌの知恵や自然観をうかがうことができる。そして、それらと密接にかかわったアイヌ語の表現のおもしろさ。ケトゥンニはそのよい例で、「(自然あるいは神から)私・借りた・木」という意味だという。また、一対のケトゥンニをつなぐ構造材、チセマカニ。「家・開く・木」という意味で、屋根の横ゆれやひずみを防ぐ。他に、屋根の茅をしっかりとおさえるレウェサクマ(曲げる柴)、あるいは棟の雨漏りを防ぐための針を使わない葺き方、ヤイコケメイキ(自ら針を使う)、壁になる茅がすかないようにとめるイトゥリテセ(のばして編む)の方法など、次々と現れる。